海外出稼ぎ労働者からの仕送り送金、80億ドル達成は微妙

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2003年3月

フィリピン中央銀行によると、海外に約500万人在住していると見られている海外出稼ぎ労働者からの2002年の仕送り送金は、約75億ドル(対前年比約24%増加)に達するのは確実になったが、政府の目標値の80億ドに達するのは微妙になってきた。ただし、政府内の予想は、一致しておらず、海外労働者福祉庁(OWWA)は、80億ドルに達するという強気の見通しを崩していない。

1.概況

2002年の送金状況を見てみると、第1四半期は、ドルに対するペソ安が続いたため、海外出稼ぎ労働者は送金を躊躇し、仕送り送金の出足に影響を与えた。その後、海外出稼ぎ労働者が増加したこと、また、家政婦などと比較し賃金の高い、看護婦、IT技術者、教師などの出稼ぎ労働者が増加したことが寄与し、2002年9月末で、53.65億ドル(前年比21.2%の増加)になった。

海外雇用庁(POEA)によると、伸び悩んだ要因として、同時多発テロやIT不況の影響で、米国からの送金が予想したようには伸びなかったことが影響している。また、新規の米国への出稼ぎ労働者の出国は、2002年1月から8月までで、3111人、前年比9.3%の減少だった。

2.海外出稼ぎ労働者を対象とした国債の発行

アロヨ政権は、2003年度の財政赤字額の2020億ペソを補うために、海外出稼ぎ労働者とその国内の家族を主な対象とした総額1億ドルの3年国債を売り出すことを決定した。このドル建て国債は、政府が、2003年度借り入れようと計画している23億ドルの一部を補う。ヨセ・イシドロ・カマチョ財務大臣によると、額面金額100ドルの国債は、2003年2月より、HSBC銀行、ファースト・メトロ投資会社、ランド・バンク・フィリピン銀行より発売される。国債の利率は、銀行の定期預金金利より高くなっており、政府は、この国債は、海外出稼ぎ労働者に、リスクが少なく、有利な投資機会を与えるだけでなく、政府に、割安な資金調達を可能にするものだと主張している。

政府は、この方法による国債販売を円滑に実施することにより海外の債権格付け会社が、フィリピンの国債の評価を上げてくれることを期待している。

3.海外出稼ぎ労働者向けの不動産の発売

民間の不動産会社数社は、2003年2月より10ヵ月間を用いて海外出稼ぎ労働者が居住する主要国を訪問し、総額50億ペソの新築住宅の販売に乗り出す。不動産関係者は、2月から、大阪・東京を手始めに、アジア、中東、北米などの海外出稼ぎ労働者の多い地域を訪問し、宣伝に努める。

関係者によると、今回発売される物件価格は、25万ペソから50万ペソの間で、海外出稼ぎ労働者の多くが購入可能な金額であると宣伝している。物件の70%はルソンとミンダナオ地方で開発され、残りの30%がビサヤス地方とマニラ首都圏で開発されている。

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