児童労働、やや増加

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2003年3月

政府は、ILOの協力をえて実施した児童労働実態調査結果を発表した。その結果、5歳から17歳までの児童・生徒の24万9000人の内の400万人、16.2%が、何らかの労働に従事していることが明らかになった。これは、1995年の調査結果の16%よりやや上昇した。政府が、児童労働の減少を目指し、様々な対策を実施してきたにもかかわらず、相変わらず改善されていないことが判明した。

1.地域別就労状況

最も児童の就労率の高い南部タガログ地方で、46万1000人(11.5%)、中部ビサヤ地方が38万8000人(9.7%)、東部ビサヤ地方が34万9000人(8.7%)である。これらの地域では、1995年の比較し、大幅に児童の就労率が増加した。

2.雇用状況

児童労働者は、主に14歳以上の男子で、労働の特徴を挙げてみると、技術のいらない労働をしているのが、260万人(65%)、農林水産業に従事しているのが210万人(53.3%)、無報酬の就労をしている児童が240万人(58.8%)である。児童労働者の多くは、季節的な労働か、休暇期間に就労している。一方、4人に1人の児童労働者が、常勤の雇用形態で働いている。

労働時間は、1日、1時間から4時間である。児童労働者の約半分が、1週間に平均2日間就労する。都市の児童労働者は、1週間に平均3日就労する場合が多く、一方、地方の児童労働者は、平均1日就労する。

3.労働環境と精神的ストレス

労働環境を見てみると、240万人(59.4%)が、悪い労働条件下で就労し、彼らの70%が、劣悪な労働条件で就労している。肉体的な重労働をしている児童労働者の比率は、5.5%で、これは、前回の10%と比較すると大幅に減少した。

240万人(61%)の児童労働者は、就労において道具を使用し、ボロ(注1)や一般のナイフを使用している。この内、何らかの安全指導がなされているのは3分の1である。しかし、これらの児童の44.6%が、精神的にも、肉体的にもあまりストレスを感じないと答えている。多くの児童労働者は、労働が退屈だとは感じておらず、この傾向は、都市の方が高い。

ただし、調査によると、5人に1人が、彼らの仕事が、危険なものであると感じると答え、4人に1人が就労時に負傷した経験があると回答している。負傷経験は、農林水産業に従事する児童労働者の方が高く、10人の内7人までが、何らかの負傷を経験があると回答している。

4.学業への影響

児童労働者の内、10人に7人までが、学校に通学しているが、120万人(44.8%)が、学業に追いつけないなどの問題を感じていると回答し、5人に1人が中途退学をしている。児童労働者の内、92.3%が自由時間を楽しむこともあると答え、自由時間の多くは、友人と遊ぶ時間に当てている。

表 過去12カ月間に働いたことのある児童の状況
5歳から17歳
までの児童
5歳から9歳
までの児童
10歳から14歳
までの児童
15歳から17歳
までの児童
1995年 2001年 1995年 2001年 1995年 2001年 1995年 2001年
就労児童 3,577 4,018 215 246 1,600 1,934 1,762 1,837
非就労児童 18,804 20,833 8,468 9,421 7,222 8,273 3,115 3,139
22,382 24,851 8,682 9,667 8,822 10,272 4,877 4,976
性別
男子 11,523 12,830 4,476 4,995 4,508 5,277 2,539 2,558
就労児童 2,330 2,548 135 144 1,023 1,234 1,172 1,170
非就労児童 9,194 10,283 4,340 4,851 3,486 4,044 1,368 1,388
女子 10,858 12,021 4,207 4,673 4,314 4,930 2,338 2,418
就労児童 1,248 1,470 79 102 578 700 591 667
非就労児童 9,611 10,550 4,127 4,570 3,736 4,230 1,747 1,751

注:過去12カ月の期間は、1995年が1994年の7月1日から1995年の6月30日、2001年が、2000年10月1日から2001年9月30日。

出所:国家統計局の児童労働調査

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