経済危機は労働の勢いを妨げず

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2003年3月

経済の深刻な停滞は、就業の勢いを抑制していない。ISTAT(国立統計局)によれば、2002年10月の就業者数が2193万2000人となったのに対し(前年同時期比23万4000人増)、求職者数は215万2000人にまで減少した(前年同時期比7万3000人減)。2002年7月と比べても、就業者数5万人増(0.2%増)、失業者数2万3000人減(1.1%減)である。ISAE(経済研究分析機関)は、労働市場の進展について、「生産性はかなり落ち込んでいるが、全体として予想を上回る好調ぶりである」と評価している。

経済の不安定な時期が続き、また、期間の定めがなくフルタイムの「伝統的な」被用者労働も増加しているが(8万人増)、今回の就業者増の真の主役は、非典型的な就業形態である(20万3000人増。率にして8.5%増)。一方で、10月のデータでは、被用者のみが増加し(28万3000人増、1.8%増)、自営業者は減少した(4万9000人減、0.8%減)。自営業者に関しては、2四半期連続の減少である。さらに、男女別でみれば、男性就業者(6万6000人増)よりも女性就業者(9万5000人増、1%増)の増加が著しい。これまで同様、今回の好結果は、第3次産業の好調に支えられている(14万2000人増。ただし、1998年4月の伸び率よりは低い)。一方、部門別にみれば、工業部門(7万1000人増)や建築部門(4万9000人増)で就業者が増加したのに対し、農業部門は不調であった。

失業率は、2001年10月の9.3%から今回の8.9%まで下がり、ドイツ(11月において10%)やフランス(10月に9%)を下回っている。若年者層での無職者(27.6%)が継続的に減少していることと、長期失業が緩和していることが影響したと考えられる。

南部でも労働市場の改善がみられた。確かに、南部の失業率は18%(前年同時期19%)であり、中部(前年同時期7.2%から6.5%へ減少)および北部(3.9%から4.1%へ増加)とは開きがある。しかし、南部における回復の兆しは、就業の増加から明らかであろう(9万9000人増)。北部(7万1000人増、0.6%増)および中部(6万3000人増、1.4%増)の州でも同様に、就業の増加がみられた。

2001年に比べて就業率が平均で1.5%(就業者数にして31万5000人増)上昇したことからもわかるように、経済成長の鈍化にもかかわらず、2002年の状況はかなり積極的に評価できる。失業率もまた、年間平均で9%(2001年9.5%)にまで減少した。

Roberto Maroni福祉大臣は、今回のデータは、経済危機や大企業の不調にもかかわらず、「政府の労働政策および闇労働対策の効果が現れてきた証拠であり、イタリアの企業活動に失速や停滞がないことを示している」と述べている。また、2003年についても楽観視しており、「労働市場改革のおかげで、就業状況だけでなくその他の指標も改善したところをみると、2003年は、改革の年というだけでなく、発展および就業の年となるであろう」とコメントした。一方で、「ここ数年の伸びは、現在急激に鈍化している」との評価もある(DS(イタリア共産党)の経済責任者Pierluigi Bersani)。

2002年10月における被用者の増加
修業形態 2001年10月比
1,000人
フルタイムかつ期間の定めなし +80 +0.6
パートタイムないし有期 +203 +8.5
パートタイムかつ期間の定めなし +109 +12.4
フルタイムかつ有期 +71 +6.7
パートタイムかつ有期 +23 +5.2
+283 +1.8

2002年12月24日付け il Sole 24 ore

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