連邦政府、自動車産業支援策を公表

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2003年3月

連邦政府は、2002年12月にかねてから期待されていた自動車産業の展開に関わる政策の詳細を公表した。連邦政府は当初、政府の労使関係改革案の実行を条件に自動車産業を支援する意向を示していた。しかし、自動車産業の使用者サイドは労使紛争の多発を恐れこれに反対したため、最終的には連邦政府も使用者側の懸念を受け入れ今回の政策を策定した。

政策の背景

今回の政策を策定するにあたって連邦政府は、オーストラリア生産性委員会(APC)の報告書に大きく依拠している。APCの報告書は、1980年代に始まった自動車産業支援策に沿った提言を行っている。バトン・プランと呼ばれるこの政策は、関税引き下げと様々な産業支援策を通じて自動車製造業者を3社にまで減らすことを提言していた。1990年代後半には、自動車製造業者は4社(フォード、GM、トヨタ、三菱)にまで減り、現時点では三菱自動車の帰趨が注目されている。加えて世界的に見ても自動車産業を取り巻く環境が厳しいため、高い労組組織率と高い賃金を誇るオーストラリアの自動車産業の将来は政府の支援なくしては暗いと考えられている。

現在の自動車産業政策は、関税保護措置として採られている関税率を現行の15%から2005年1月までに10%にまで引き下げることを提案している。APCの報告書はその後の政策を明らかにしている。つまり、APCは自動車産業も他の製造業者と同様の立場におかれるべきであるとして、2010年には関税率を5%にまで引き下げることを提言した。ここで問題となったのは、自動車産業には多くの労働者が働いており、関税引き下げにより失業者が発生すれば政府の立場が危うくなる可能性があることであった。

支援策の内容

そこで政府は、関税引き下げ措置に加え自動車産業支援策を設けることでAPCの提言に若干手を加えている。政策の主な内容は次の通りである。すなわち、関税率は2005年1月以降10%に、そして2010年1月以降5%に引き下げられる。これに対応し、過度的な支援策として自動車競争投資計画(ACIS)を設ける。ACISでは、まず予算上の支援として10年間に約42億豪ドルが計上され、このうちの20億豪ドルは2006年から2010年を、10億豪ドルは2011年から2015年を対象として配分される。さらに政府は自動車製造業者に対する研究開発基金を設け、自動車産業の技術革新を促進する。そのための予算として1億5000万豪ドルを計上する。生産性委員会は、政策変更が必要かどうかを検討する報告書を2008年に提出する。これ以外の支援策(国産車の政府による購入や輸入中古車への関税策)は現行通り維持する。

今回の支援策は、自動車製造業者に10年間にわたる確実性を提供する目的を持っており、使用者側の意向を十分に考慮した内容と評価できる。ただ労組の反発は必至で、オーストラリア製造業労働者組合は、次回の企業別交渉において6%の賃上げと雇用保障の強化を求めるとしている。

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