賃金の動向

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2003年2月

スペインにおける賃金労働者のほぼ3分の1が事実上自由解雇によって人員調整の対象にされる可能性があるにもかかわらず、賃金はこれまでも、また現在も独自の動きを示しており、しかも景気循環の局面とは無関係か、あるいはその影響を反映するにも時間がかかる。2001年は景気後退の兆候が疑う余地がないことが初めて明らかになった年であるが、この2001年を通じて農業以外の部門の平均賃金は3.5%上昇している。これはそれ以前の数年間と比べても大きな上昇率であるが、それでもインフレ率には達しておらず、90年代末から続いている賃金の購買力低下傾向を更に強める結果となっている。

表3 部門別・企業規模別に見た平均賃金と賃金上昇(2001年)
  賃金水準
(平均=100)
賃金上昇
(2001年)
平均 100.00 3.47
小企業 83.40 4.83
中企業 108.23 2.66
大企業 130.70 0.91
工業 112.34 3.65
建設業 90.00 3.85
サービス業 97.53 3.57
アンダルシア 90.74 3.03
アラゴン 98.34 4.32
アストゥリアス 97.86 3.04
バレアレス 89.19 3.92
カナリアス 83.07 0.64
カンタブリア 92.03 2.56
カスティーリャ・ラ・マンチャ 84.84 2.19
カスティーリャ・イ・レオン 93.37 3.63
カタルーニャ 105.91 4.04
バレンシア 90.19 4.93
エストゥレマドゥラ 81.88 3.70
ガリシア 87.33 4.16
マドリード 119.85 3.13
ルムシア 80.22 2.25
ナバラ 109.06 3.19
バスク 116.04 2.81
ラ・リオハ 92.44 2.30

出所:国内統計庁「労働費用指数」

2001年を通じて賃金が最も上昇したのは、地方別、部門別、企業の規模別に見て、いずれももともと賃金水準が低かった所である。例えば大企業における賃金上昇率が1%を超えていないのに対し、小規模企業ではこれを大きく上回っている。平均賃金がきわめて低い建設部門でも、同様に高い賃金上昇率を示している。地方別では、平均賃金と賃金上昇の関係がそれほど明瞭ではないものの、やはり全般的にはより賃金の低い地方において高い賃金上昇率が見られる。賃金水準が歴史的に高く、かつ平均を上回る伸びを示したのはカタルーニャ州だけである。

経済水準がより低い部門あるいは地方における賃金上昇が大きいのは、景気後退が賃金にほとんど影響していないことのもう一つの証でもある。つまりこれは賃金格差の縮小という景気拡大局面特有の現象なのである。従がって、不況期に対応するための保守的戦略の結果、より豊かでない地方での投資を引き上げ、不況の影響をより強く受ける小企業において賃金上昇がストップする現象は、今のところまだ現れていないといえる。

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