失業と職能訓練

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2003年2月

景気後退にもかかわらずスペイン経済は引き続き雇用を生み出しているが、失業者数は明らかに増加している。これは、雇用創出能力を上回って労働力人口が増えていることによる。2002年第2四半期には失業者数が200万人を超え、前年同期比で10%以上の増加、失業率は11.09%となっている。

失業、雇用ともに男性よりも女性で大きく増加しており、労働市場への新規参入者は女性の方が圧倒的に多いということになる。いずれにしても、スペインにおいては失業者にしめる女性の割合が多くなりつつあるのは明らかで、2002年第2四半期の女性失業者は前年同期よりも13%増えており、失業者全体にしめる女性の割合はすでに58.4%に達している。

失業の個々のケースについてその状況を分析すると、どの職業についても雇用を失う可能性が同様にあるというわけではない。失業者が失業する直前についていた職業と、その同じカテゴリーの提供する雇用との間にはなりの差がある。技能・熟練を有しない労働者は、10%以上という高い比率のローテーションに曝されている。一方、最終職業が企業経営であったという失業者はほとんどいない。

表1 職業カテゴリー別に見た失業する直前の職業の全雇用に占める割合(2001年)%
技能を有しない農業労働者 36.3
農業以外の経営体における技能を有しない労働者 18.2
技能を有しないサービス部門労働者 13.3
農業以外の経営体における技能を有する労働者 8.0
技能を有しない事務員・販売員 7.8
専門職・技術職の非自営労働者 4.9
農業以外の経営体における管理職および公行政の上級公務員 3.2
農業以外の経営体における現場監督 2.7
農業以外の協同組合員 2.3
専門職・技術職の自営労働者 1.8
職業軍人 1.8
賃金労働者を有しない農業以外の企業家 1.8
公行政部門のみで就業する専門職 1.4
賃金労働者を有する農業以外の企業家 1.0
賃金労働者を有しない農業部門の企業家 0.3
賃金労働者を有する農業部門の企業家 0.0
農業共同組合員 0.0
農業経営体の管理職 0.0

出所:国内統計庁「労働力調査」に基づき独自に作成

また、失業率は教育水準によって大きく異なり、時とともにその差が縮まる傾向はいっこうに見られない。文盲者の失業率は博士課程修了者の失業率の8倍である。高等教育を受けた者の失業率は8.4%で、初等教育のみを受けた者の失業率よりもやや高い。しかし同年齢で比べると、初等教育のみの者と高等教育を受けた者との差はより大きくなる。また初等教育水準だけの人口はすでに年齢が高く、もう何年も前に得た職業を現在も維持している者というケースがほとんどである。

表2 教育水準別に見た失業率(2001年) %
文盲 21.3
初等教育 10.8
中等教育 11.0
高等教育 8.4
博士課程終了 2.8
平均 10.5

出所:国内統計庁「労働力調査」

地方別に見ると、2001年第2四半期から2002年第2四半期にかけて失業者数が最も大きく増えたのは、ラ・リオハ州やナバラ州のような失業率が低い地方もあれば、逆にカンタブリア州、ムルシア州、エストレマドゥラ州などもともと失業率が平均を大きく上回っている地方もある。失業の増加が少なかったのはバスク州、ガリシア州、アンダルシア州などである。

過去2年半の動向を振り返ってみると、失業率の地方間でのばらつきが伝統的な傾向に反した動きを示していることがわかる。つまり、平均失業率と地方間格差は歴史的にみて逆の動き、すなわち一方が増えれば他方は縮小する動きを見せていたが、それがここへ来て両方ともほぼ継続的に下降しているのである。これはスペインにおける失業率の急速な低下が始まった94年以来、初めて見られる現象である。

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