欧州委員会、労働者の個人情報保護に関する第2次協議を開始

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2003年2月

欧州委員会は、2002年10月に労働者の個人情報保護に関しソーシャル・パートナーとの第2次協議に入った。委員会は2001年の第1次協議において、医療情報や薬物・遺伝子検査情報などのセンシティブ情報、そして労働者の電子メールやインターネット利用状況の監視といった職場におけるデータ保護をめぐる様々な問題を指摘した。これに対しソーシャル・パートナーや関係団体が各々の見解を提示し、委員会はこれらの見解や各種調査を考慮した上で第2次協議の提案を行ったのである。欧州委員会は、第2次協議においてソーシャル・パートナーに対し職場における個人情報の取り扱いに関わる原則やルールを設定するよう提案しており、今後ソーシャル・パートナーは委員会の提案に従うか独自に枠組み協定を締結するかを決定しなければならないことになる。

第2次協議の内容と背景

欧州委員会による第2次協議文書には、今回の提案の背景や協議の対象事項などが示されている。

現在2つの指令が個人情報の取り扱いに関し規制を行っているが、これらは職場における個人情報保護という点では不十分であるために、欧州委員会は欧州レベルの新たな枠組みが必要であると考えている。この結論に達した背景として、電子メールやテレワークに代表される科学技術の進展やグローバル化、同時多発テロ以降の安全確保をめぐる問題が挙げられている。

その上で欧州委員会は協議対象事項として、労働者の同意、医療データ、薬物・遺伝子検査、モニタリング・監視、加盟各国の立法と国際的規制等を掲げている。まず第1に、データの処理を正当化する手段として「労働者の同意」が適当であるのかが問題となっている。委員会は、労使間の力の不均衡を考慮して、データ処理(とりわけセンシティブ情報の処理)に関し「労働者の同意」だけでは保護措置として不十分であるとしている。

第2に医療データに関しては、加盟各国の規制が様々であることを踏まえ、欧州レベルでの規制が必要であるとしている。

第3に薬物・遺伝子検査について、委員会は使用者による薬物に関わる情報の収集や処理を制限するよう提案し、遺伝子検査に関しては加盟各国の規制が異なるために混乱が生じていると指摘している。

第4にモニタリング・監視についても欧州レベルでの統一的な規制がないので、欧州レベルの枠組みが必要であるという。

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