政府が労使関係改革法案を提出

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2003年2月

自由・国民党連立政権は上院で過半数を維持していないために、労使関係改革法案の成立は困難を極めてきた。ところが、法案の成否を握っている民主党内部で混乱があり、何名かの議員が辞職したり、党を離れたりしたために、法案成立の可能性が今までになく高まってきた。さらに新しい指導部の下で民主党が政府の労使関係改革に好意的な姿勢を見せていることから、労働組合にとっては厳しい改革が実現するおそれも出てきた。

政府の労使関係改革案

政府が示した労使関係改革案のうち民主党が支持を表明しているのは、連邦職場関係法の不当解雇禁止規定を緩和し(解雇しやすくする)、州ごとに異なっている不当解雇禁止規定をそれと入れ替えるという法案である。オーストラリアでは、各州が独自の労使関係法を制定し、独自の労使関係制度を持っている。そのため連邦と州の管轄が不明確になったり、重複したりしている。特に不当解雇禁止規定については、各州ごとの規制にばらつきが見られる。民主党は、こうした規制の画一化に賛成している。ただ、この提案には憲法解釈上大きな難題があるため、最高裁まで争われる可能性もある。

これ以外に政府は、1.労働組合に対し労組の労働党加盟の是非について組合員による投票を義務づける法案、2.ストライキ実施にあたって秘密投票を義務づける法案、3.アワード簡素化をさらに進める法案などを提出している。1.の労働党加盟決定は、現時点では組合員ではなく労組幹部により行われており、組合員個人の意思を問うことになればかなりの者が加盟を認めないと予想される。これにより労組が労働党加盟を見合わせれば、労働党は財政面でかなりの痛手を受けることとなる。政府がこの法案を提出した背景にはこうした意図があったと思われる。従って、1.については非常に政治的な議論を引き起こすこととなろう。

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