ACUTがアワード最低賃金引き上げを請求

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2003年2月

オーストラリア労働組合評議会(ACTU)は、2002年11月に労使関係委員会に対しアワード賃金引き上げを求める請求を行った。こうした請求は毎年提起されており、一般的には「生活賃金ケース」と呼ばれている。

ACTUの請求内容

ACTUは連邦アワードの適用を受ける労働者について週あたり24.6豪ドルの賃金引き上げを求めており、これが認められれば連邦最低賃金は週456豪ドルとなる(4.2%の伸び)。影響を受ける労働者はおよそ170万人に及ぶと予想されている。

オーストラリアでは、アワード制度に基づき多くの労働者の労働条件が連邦労使関係委員会(AIRC)を通じて決定されている。ACTUは毎年低賃金労働者について賃上げ請求を提起しており、これに対し使用者団体は賃上げ請求が経済に与える影響を常に問題にしてきた。そして、連邦政府は使用者団体よりの見解を示し、野党労働党は労働組合よりの主張を展開するのが常である。

ところが今年はコステロ財務省長官が低インフレと生産性の向上を前提にすれば、4.2%程度の賃上げもインフレを誘発しないと発言し、さらにアボット雇用職場関係省長官がACTUの請求に関し何のコメントもしなかったことから、例年とは異なる状況となっている。

CEOの報酬が問題に

他方、賃金をめぐっては企業倒産が増加する中で、CEO(最高経営責任者)の報酬があまりにも高すぎるのではないかとの批判が展開されるようになっている。アボット長官などの政府関係者は、CEOが従業員や出資者に対し不誠実であると主張している。

上位企業のCEOの平均報酬伸び率は2000年には約22%、2001年にはおよそ13.4%を記録したが、これは昨年の企業業績の悪化と対照的な数値である。そのような中で倒産した企業の幹部が高額の報酬を得ていたことが明るみになり、国民の怒りをかうこととなった。連邦政府は、国民の批判をかわすために法案を作成し議会に提出したが、早くもその有効性が疑問視されている。法案は、企業が倒産した場合に経営幹部に支払われた報酬を回収することを目的としているが、こうした介入的手法や海外の投資家への影響、その内容から政府が有効な手段をとれないであろうとの見方が根強く示されている。

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