労使関係委員会、労働者の残業拒否権を認める

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2002年10月

オーストラリア労使関係委員会(AIRC)は、「合理的な労働時間規制」を求めるオーストラリア労働組合評議会(ACTU)などの労組からの申請を審理し終えて7月23日にこの問題に関する判断を示した。

労使関係委員会の決定

ACTUはAIRCに対し、1.合理的な労働時間、2.合理的な時間外労働、3.長時間労働に対する代償としての有給休日の付与、に関する基準を設定するよう求めていた。今回の決定においてAIRCは、2.を除く、それ以外の申請を認めなかった。

2.の合理的な時間外労働に関するAIRCの決定の概要は、以下の通り。

  • 使用者は、労働者に対し規定の割増賃金率を以て合理的な時間外労働を行うよう求めることができる。
  • 労働者は、当該時間外労働が不合理な結果をもたらす場合にはそれを拒否することができる。
  • 時間外労働が不合理であるかどうかは、労働者の健康・安全への危険、家族的責任を含む労働者の個人的事情、事業所や企業の必要性、時間外労働に関する使用者の通知等を考慮して決定する。

これらの規定はアワードに挿入されることが予定されており、AIRCは標準労働時間を特定し、かつ時間外労働に関する規定を有するアワードにのみこれらの規定を設けることができるとしている。

決定の背景と当事者の反応

AIRCは今回の決定を行うにあたり、関係当事者から提出された資料等を検討している。そして労働時間の現状について、過去20年間にフルタイム労働者の平均労働時間が増加傾向にあることを認めた。具体的にはフルタイム労働者の週平均労働時間は1982年に38.2時間であったのが、2001年には41.3時間となっている。年平均労働時間数を見ても、オーストラリアはOECD諸国の中で最も長時間労働である国々の一角を成している。また近年ではサービス残業も目立つようになっている。

AIRCは、アワードの中に一定の条件下での労働者の残業拒否権を明確に定めることでこうした問題の解決を図ろうとしたのである。

ACTUは、今回の決定を初めて労働者の残業拒否権を認めたきわめて重要なものであると評価している。新たな規制には反対してきた連邦政府も今回の決定がバランスのとれた公正なものであるとの見解を示している。これに対し、使用者団体の中には一定の評価を示した団体もあるものの、残業拒否権の明確化に懸念を示す者も見られた。

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