病気長期欠勤の増加

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2002年5月

繰り返し議論されてきた問題の1つに病気を理由とする長期欠勤がある。病気を装って仕事を休むのが以前よりずっと容易になってしまったせいだと現行制度を批判する人々は言い、現行制度を擁護する人々は職場の安全衛生対策が不十分なせいだと言う。しかしその理由はさておき、(報告された)病気を理由とする欠勤はこの数年間でかなり増加してきている。

長期欠勤が1997年に再び増加し始めて以来、1年以上にわたり病気であると報告された人数は7万5000人(97年)から12万人(2001年)に増加した。また、2001年における全ての病気欠勤は80万件になった。病気を理由に65才以前に引退する人の数も同様に多く、ほぼ40万人を数える。これは労働力人口の14%までもが病気のために労働不能ということになる。

長期欠勤の数字が最も高いのは地方自治体部門(平均より60%高い)で、最も低いのが民間部門である。政府のある調査は、傷病手当などの医療関連財源となる給与税の税率は8.8%ではもはや足りないと主張している。

今後、どうすべきかに関しては、結論が大きく割れる。以前、貯蓄銀行を経営し、知事になったこともあるJan Rydh氏は政府から任命され、この問題を調査してきた。同氏は、労使双方から反対されたことでかなり話題になった報告書を1月に提出し、病気欠勤の原因は主に労働環境であるとし、使用者が補償責任を負う病気欠勤日数を14日から60日に増やすことなど多くの面で使用者の責任を重くするよう求めている。

こうした考えに対し使用者は特に強く反対してきた。スウェーデン企業連盟(前スウェーデン経営者連盟SAF)は、1990年代前半に傷病手当が削減されると長期欠勤が以前の半分に急減した事実から判るように、病気長期欠勤の割合が非常に高い理由は主に仕事以外にあると強調している。

1998年の選挙の前に、政府が傷病手当を再び増額すると公約したため、長期欠勤は間もなく増加した。他の理由として、病気を訴える人全員を医師がほとんど日常的に認定し、病気の真の原因に関わりなく問題を労働環境のせいにする困った慣行が生まれてしまったこともある。その上、全国21の地域社会保険事務所があるので慣行は地域毎に大きく異なっている。

そうした理由から、使用者は長期欠勤を現実に即した水準に戻すための以下の変更を要求している。

・ 仕事が原因の病気とその他の要因によるものとを分ける。

・ 1週間以内に医師の証明書の提出を求め、医師(および保険事務所職員)には規則の遵守を求める。

・ 1998年以前の給付規則に戻ることによって各個人が自己の健康に責任を持つよう促がす。

・ 使用者の責任を職場に直接関係する要因に限定する。

・ 医療システムを改善して現在のような長い待ち時間をなくす。

・ 地方自治体は、長期欠勤率の低い、他の自治体、民間部門と共同で病気欠勤コストを負担するのではなく、地方自治体独自の病欠コストに対し全責任を負わせる

・ 小規模企業に対し、何らかの高額疾病コストからの保護策を導入する

使用者が責任を負う病気休暇期間を14日から60日に延長することについて労働組合もあまり賛成していないことはなかなか興味深い。使用者が採用の段階で現在よりも病気がちの人を選別するようになるだろうという危険性を組合側は感じているのである。

スウェーデン労働組合総同盟(LO)の福祉専門家Irene Wennemo女史も規制の強化を要求している。病気であると主張している人々の多くは働こうと思えば働ける可能性が十分ある。「人は常に100%健康であったり、100%病気であったりはしないものです」と彼女は述べている。

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