スペインの失業保障制度

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2002年5月

スペインでは第二共和国時代(1931~1936)に公的失業保障を導入する法律が制定されたが、間もなく勃発したスペイン内戦(1936~1939)により、実行に移されることはついになかった。その後1961年に制定された雇用基本法により公的失業保障制度が設けられるが、これはあくまで賃金労働者が保障制度に対して支払った負担金の額及び支払い期間に応じ、失業手当の額と受給期間が決まってくるというものであった。80年代には法制が更に拡大され、補助的失業保証制度が加えられたが、これは個々人の賃金労働者としての経歴と必ずしも関連づけることなく、一定の失業手当が受けられる制度である。

国立雇用庁(INEM)は労働社会問題省に属する機関で、失業手当支給の管理運営に当たっている(社会保障制度の海上労働者特別制度に加入している労働者については、海上社会庁が失業手当の管理を行う)。INEMはまた、公的な職業紹介機関でもある。

賃金労働者は賃金(税込み)の1.6%を失業保障制度に対して支払わなければならず、一方雇用者側はその労働者の賃金の6.2%を支払うことが義務づけられている。スペインの失業保障システムは労働者個々人による資金積立て型でなく、保障制度に対して支払われた負担金全体をプールし、それを失業者に分配してゆくタイプである。つまり、賃金労働者はその時々の失業者の手当を支払っているということになる。以上をまとめていうと、スペインの失業保障制度には、補助的制度と負担金支払いに基づく制度の二つの側面がある。行政上は前者を「失業保険」、後者を「失業手当」と呼称を区別している。

失業保障制度でカバーされているのは、労働意欲があり、また労働できる状態にありながら、一時的あるいは恒久的に職を失った労働者、または労働時間の3分の1以上を失い、これにともなって賃金もその分減額された労働者である。

法的に失業状態であると認められるためには、一定の原因によって失業した場合でなければならない。これは集団解雇、法廷外もしくは法廷判断に基づく個別労働者の解雇、雇用者(個人)の死亡・定年退職・労働不能、労働者の通常の職業活動を行う上での全面的恒久労働不能、期間終了もしくは契約による一定の作業・サービスの終了による雇用契約の消滅、転居をともなう企業内のほかの職場への転勤もしくは労働条件の大幅な変更に際して労働者が任意に雇用契約の解消を求めた場合である。その他、外国に移民していたスペイン人労働者が、移民先での雇用契約が消滅しスペインに帰国した場合も失業者と認められ、また刑を終えて刑務所を出所する者や、条件付き出所者も失業者と認められる。つまり、失業保障にカバーされないのは、自らの意志で仕事をやめる賃金労働者だけということができる。

失業手当は、保障制度への最低限の負担金支払い期間を満たしていれば、これを受給することができる。

失業手当の内容は金銭的支給(過去180日間における社会保障制度への負担金支払いに基づいて額が決定される)のほか、INEMまたは海上社会庁により当該失業者の名義で社会保障制度への負担金が支払われる(雇用者側負担の100%及び労働者側負担の35%、年金、恒常的労働不能、死亡、一時的労働不能、家族手当、医療を含む)。なおこの場合、当該労働者が就労し社会保障制度への支払いを行っていた最後の180日間の平均を標準として算定する。

失業保険の条件、特徴、及び額

スペインには、労働者が失業する前の状況との関係がほとんどない失業保険プログラムが多数あり、失業保障制度の中で補助的な役割を果たしている。失業者がこれらのプログラムによる手当を受給するためには、所得が職業間最低賃金(SMI)75%×家族構成員数を越えないことが条件である。

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