ソフトウェア産業の人件費抑制

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2002年5月

インドのソフトウェア企業は、米国のIT不況の影響を受け、人件費の削減を実施している。また、政府は第10次5カ年計画で引き続きソフトウェア産業の発展を計画しているが、計画経済から市場経済への移行の下、グローバリゼーションの進行する中で目標達成は流動的である。そうした中、ITによって生まれた新規分野への人材開発と投資を模索する企業も出始めている。

ソフトウェア市場の概況

インドソフトウェアサービス会社協会(NASSCOM)によると、2001年度の第3四半期の、ソフトウェアの輸出は、910億ルピー(前年同期比25ポイント増加)であった。フィロズ・バンデレバラ会長は、2002年2月4日「増加率は、NASSCOMの予想を2ポイント上回った。ソフトウェア産業は、現在のIT不況から回復し始めており、2001年度の第1から第3四半期までに31ポイントの成長を達成した」、「2001年は、世界経済の後退に対する挑戦の年であった。景気後退によりインド国内でのソフトウェア技術に対する報酬は、抑制されつつある。海外での事業展開を強化し、企業の回復速度を速めなければならない。需給関係を十分調査した経営をしないと、企業は、成長力を維持できない」と述べている。

企業のソフトウェアサービス契約の受注において、海外の企業からのアウトソーシング事業契約は、ソフトウェア産業における急成長の分野であり、今後数年間は、IT産業の平均的経済成長率を超えると予想される。NASSCOMの調査によると、インド国内取引高は、1999年度の985億ルピーから2000年度は1590億ルピーに増加した。一方、海外での現地取引高は、同期595億ルピーから1095億ルピーに急成長している。2001年度、インド国内取引高は、1750億ルピーにとどまる見込みであるが、海外での現地取引高は、1800億ルピーに達すると予想されている。

経営者側、人件費の抑制に着手

市場関係者によると、主要ソフトウェア企業は、米国のIT不況に対処するため、賃金の引き下げに着手し始めた。このため、人件費の総額が、2001年同期比を下回る企業も出てきた。

インドのビジネスライン新聞社の調査によると、NIIT社の人件費は、2000年度第3四半期の2億6900万ルピーから2001年度第3四半期は、2億55百万ルピーに減少した。HCLインフォシステムズは、2億46百万ルピーから2億16百万ルピーに減少した。ポラーリーズソフトウェア社は、4億9百万ルピーから4億8百万ルピーに減少した。

人員が増加したにもかかわらず、人件費が減少しているところもある。この原因には、インド国内の事業が海外での現地事業を代行し始めたことによる。つまり、ドルで賃金が支払われる労働者よりルピーで賃金が支払われる労働者が増加し、その結果、賃金総額が減少した。

サタヤンコンピューターズのIT技術者は、前年同期の8397人から8311人に微減したが、人件費は、13億44百万ルピーから20億19百万ルピーに増加した。しかし、売上げに占める割合は、56.34%で、前年同期の60.00%を下回った。

IT技術者への報酬の変化

数年前のソフトウェア産業の高潮時には、ソフトウェアプログラマは、高収入や特別な地位を得られる職業として羨望された。プログラミングの技術力の向上が、労働者をより高額の待遇を提供する企業への転職を可能にした。IT技術者としてのレベルを上げることが、生活を富裕にするもっとも有力な手段だった。

経営者側は、ソフトウェア技術者の報酬を再検討しつつあり、今後グローバリゼーションの進む中で、どのように報酬計画を立て、優秀なソフトウェア技術者を養成、或いは、雇用し続けていけばいいのか模索している。

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