第55回全国サンプル統計結果の分布

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2001年10月

国家サンプル統計局(NSSO)の実施した第55回全国サンプル調査の結果分析から、中学生以上の学力を有する者の失業率が高いこと、郡部の第1次産業の雇用が減少し、雇用増加率が伸び悩んでいることが明らかになった。

(1)意外と高い中学生以上の学力を有する者の失業率

統計結果によると、失業者のうち、市部の63%、郡部の57%が中学生以上の学力を有している。また、失業者の中で、このレベルの学力を有する者は、男性より女性の方が多い。

市部と郡部を男女別に分析してみると、市部では失業者における中学生以上の学力を有する者の割合を、1993年度に実施した第50回全国サンプル統計結果と比較すると、男性で58.6%から59.0%に、女性は、72.5%から74.0%に増加した。

一方、郡部では、男性は、60.4%から55.2%に減少し、女性は57.6%から62.7%に上昇した。

中学生以上の学力を有する者が、失業者の中で増加した理由の1つに、インドの小学校と中学校の教育の内容が現在のインドの労働市場における必要な人材のニーズと必ずしも一致していないことがある。このため、今後、中学生以上の学力を有する失業者に、就職に有用な職業技術的な教育を実施する機関を増設する必要があると見られている。

15歳以上の失業者に占める中学生以上の学力を有する者の割合

地方 都市
男子 女子 男性 女性
1993年度 604 576 586 725
1999年度 552 627 590 740

出所:NSSO「第55回サンプル統計調査結果」

(2)郡部の雇用増加率伸び悩む

郡部の1993年度から1999年度までの年平均雇用増加率は、0.58%である。これは、1950年代に統計を開始して以来の低率である。また、郡部の失業率は市部に比較し高く、正規雇用の機会は相変わらず少ない。

郡部では、男性の9%、女性の3%が正規雇用である。これは、市部(男性で42%、女性で33%)と比較するとあまりに低い。非正規雇用は、1987度年から1993年度にかけて減少傾向にあったが1999年度には増加した。

郡部での、自営は男性で55%、女性で57%である。被雇用者のうち男性で36%、女性で40%が臨時雇用である。この7年間に自営が減少し、臨時雇用が増加した。

郡部の雇用率の増加率が鈍化した原因の1つは、第1次産業での労働者が減少していることである。郡部の農業部門の雇用が減少し、非農業部門の雇用が増加することは、経済成長上喜ばしいことであるが、非農業部門の経済発展が遅いため、結果として男女の就労増加率は低下した。これは以前からある程度予想されていたことであったが、今回の調査結果で明確になった。また、第1次産業の労働者の減少した理由の1つに、15歳から19歳の労働者の中に教育を受ける人口が増加し、この年齢層の労働者数の減少をもたらしたことがある。

郡部の産業別雇用状況を見てみると、男性労働者の71%、女性労働者の85%が第1次産業で働いている。男性の13%、女性の9%が第2次産業で働いている。第3次産業の従事者は、男性は、1983年から1999年度の間に、12%から16%に増加したが、女性は5%から6%である。第3次産業での男女の雇用の比率が非常に低く、今後の第3次産業での雇用の増加が期待される。

参考までに、市部の第3次産業の雇用状況を見てみると、男女共に第3次産業の労働者が大幅に増加し、1983年から1999年度の間に、男性は、55%から61%に、女性は、38%から53%に急増した。 

郡部で、男性の就労率の高い州は南部に多く、アンドラ・プラデシュ州(1000人当り605人)、カルナータカ州(595人)、タミルナード州(594人)で、就労率の特に低い州は、北部のハリヤナ州(475人)、ウッタル・プラデシュ州(481人)、東部のビハール州(492人)である。

一方、郡部の女性の就労率の高い州は、南部のアンドラ・プラデシュ州(478人)、北部のヒマーチャル・プラデシュ州(471人)である。

地方と都市の年平均雇用増加率

  1983年から1987年度 1987年度から1993年度 1993年度から1999年度
地方 1.36 2.03 0.58
都市 2.77 3.39 2.55

出所:NSSO「第55回サンプル統計調査結果」

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