シン蔵相、2001年度予算演説で労働争議法の改正案を発表

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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シン蔵相は2001年3月1日、国会での2001年度の予算演説の中で、1947年の労働争議法の改正案と1985年の経営悪化企業法の廃止を提案した。この改正案は、現行法では100人以上の企業に対し解雇、人員削減、閉鎖に関して政府の認可を得る事を義務づけているが、これを1000人以上に緩和し、また企業の非中核部門だけでなく、中核部門のアウトソーシングも可能にするというものである。

バジパイ首相も2001年3月8日、「労働政策の改革は非常に困難な仕事だが実行しなければならない」と述べ、政府の公営企業の株式保有を減少させると示唆した。

これに対し各労組は、一斉に反発。インド全国労組会議のタミルナード支部のP.K.G.メノン氏は、「労組の懸念は、予算案で現実のものとなった。労働争議法は、効力が減退され、労働者の福祉を促進するものでは無くなりつつある。予算は、公共部門の大幅な労働者の削減を目指し、加えて、他の雇用機会を創出する政策がない。これは、失業率の上昇をもたらすものである。また、政府は労働者が要求している教育等の基本的権利を確保する社会政策については、議案に盛りこんでいない。」と批判した。

鉄鋼労働者組合(SAIL)のP.パニールセルバン書記長は、「予算は労働者を憤慨させている。予算は、労組と労働者の交渉力の減退を狙ったものである。政府は、経済のグローバリゼーションによる経済界の要求に屈服した。政府は、36の公営企業の株式を売り出すことを決定したが、これは、企業に雇用されている労働者を減少させ、社会不安をもたらす」と述べた。

一方、経営者側は、近年労働法の改正により労使関係が短期間に激変し、国内の経営環境が改善され、産業の専門化と系列化を促進させる政策を要望しており、今回の政府方針を歓迎している。

インド経営者連盟(EFI)のシャラド・パテル会長は、「従業員が100人以上の企業は、経営が悪化しても、解雇は行政によって厳しく制限されているため困難だった。各労働委員会は、決して解雇や人員削減の許可を出すことはなく、経済活動は、政治的要因により決定された。これが最大の問題点だった。改正案は、これを完全には変革していないが、人員削減が労使関係に変化をもたらすことは予想できる。今後各労働委員会の決定は、解雇や人員削減の許可について柔軟なものになる」と述べた。

ILOインド事務所の企業経営に関する専門家のラジャン・メフロテラ氏は、「経営側は、予算方針を歓迎している。政府は労働委員会での承認後、労働争議法の改正に関する議論を公開した。ILOの調査では、企業が大きくなるほど、労働者の組織も大きくなり、一方、企業規模が小さくなるほど、団体交渉を実行するよう労働者を組織するのは困難になる。この政府方針により、経営者側は、一層企業をリストラするチャンスを得たことになる。また、アウトソーシングの許可は、子会社の設立と専門化を促進する」と述べた。

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