厳しさを増す雇用情勢と失業対策の多様

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2001年5月

非自発的失業者・高学歴失業者・長期失業者の増加傾向

統計庁が2月20日に発表した「2月の雇用動向」によると、失業者数は1月より8万7000人が増え、106万9000人に達し、失業率は4.8%(季節調整失業率4.1%)から5.0%(4.2%)に上昇した。失業者数は2000年10月に76万人にまで減り続けた後、11月に79万7000人、12月には89万3000人、2001年1月には98万2000人へと、急増している。このような失業者急増の背景について、政府は「景気低迷と構造調整による失業者数は1月の4万人台から2月には1万1000人に減り、例年のように冬季の季節的要因による失業者の割合が高くなっている点」を強調している。

しかし、最近の雇用情勢にはいくつか憂慮すべき点が散見される。まず、2000年下半期以降構造調整が本格化するにつれ、会社都合による退職など非自発的失業者の割合は2000年6月の38.8%から2001年2月には再び46.2%へと上昇に転じている(1998年5月の74.6%をピークに下落傾向が続いていた)。

第2に、大卒以上の高学歴失業者数は2000年8月の16万9000人から2001年1月には19万3000人、2月には23万2000人へと増え続けている。特に景気低迷や構造調整の進展に伴う新規採用規模の削減や定期採用から通年採用への採用方法の変更、大学の専門分野における需給のミスマッチなどにより、大卒者の就業率の下落傾向が続いているのである(19997年の61.8%から2000年に56.0%、2001年には53.4%(推定値)へ)。

第3に、求職期間1年以上の長期失業者数は2万8000人(1月より7000人増)に上り、全失業者に占める比重は1997年の11.5%から2000年には15.7%、2001年2月には16.1%へと上昇し続けている。また求職活動を断念し、労働市場から離脱する中高年失業者が増えていることもあって、非労働力人口は1509万2000人(1月より2万6000人増)に達し、その比率は1997年の62.2%から2000年に60.7%、2001年2月には58.5%へと下がり続けている。

求人企業と求職者のミスマッチと政府の対策

その一方、労働力需給のミスマッチが依然として大きな壁になっており、求職者の意識改革とともに、に政府の積極的な労働市場政策が以前にも増して強く求められている。まず、中央雇用情報院が労働部の雇用安定情報網である「ワークネット」のデータを分析したところによると、求人数は12万人余りに上っているのに対して、就職斡旋にこぎ着けたのは4万9000人で、残りの約6割近くは求職者との条件の食い違いで採用できずにいる。

求人企業と求職者のミスマッチは、賃金水準、地域、年齢などで多くみられる。例えば、賃金水準では、営業・企画・事務職の場合、求人企業は月平均93万8000ウォンを提示したのに対し、求職者は143万2000ウォンを要求し、その差は49万4000ウォンに達した。また地域別には、求人企業は首都圏に集中しているのに対し、求職者の多くは地方に住んでいる。年齢別には求人企業は20-30代の若年層を求めているのに対して、求職者の場合40代が多い。労働部は失業対策の一環として「人手不足の3K業種や中小企業に再就職する失業者に対して早期再就職手当(失業給付の全額)を支給することで」対応することにしている。しかし、いまのところ、このような求人企業と求職者のミスマッチを埋めているのは不法就労外国人労働者のようである。法務部によると、不法就労外国人労働者は1998年に経済危機の影響で9万9500人に急減したが、99年に急速な景気回復とともに13万5300人へと増加に転じ、2000年には18万8900人(36%増)に急増している。

第2に、景気の先行きに不透明感が増していることもあって、新卒の採用規模を大幅に削減する企業や、採用計画を先送りする企業などがかなり多くなっている。反面、新卒者数は増加傾向にあるため、新卒者の就職難は厳しさを増している。2000年度大卒者約49万人のうち16万人が就職できずにいると推定されている。

いまのところ新卒者の就職難解消に一定の成果をあげているのは政府助成のインターン社員制度のようである。2001年1月に確定された政府助成インターン社員1万8600人の就業状況をみると、その70.9%が従業員5-49人の中小企業、14.9%が100人以上でそれぞれ働いている。業種別には製造業に43.3%、教育サービス業に12.9%、金融保険業に12.5%、卸・小売業に9.4%がそれぞれ採用された。職種別には事務管理職が20.5%、情報技術職が17.5%、経理職が12%、単純技能職が11.5%などの順となっている。学歴別には大卒者以上が69.7%、高卒者が30.3%を占めている。そしてインターン社員の正社員への正式採用状況をみると、2000年にインターン社員として入社した4万3638人のうち、3万6405人(83.4%)が正社員として採用されている。

このような政府助成インターン社員制度は最初緊急避難措置として導入されたが、次第に人手不足に悩む中小企業と就職難に直面する新卒者を繋ぎ合わせる場として機能する側面が注目されるようになった。政府は若年層向け失業対策を補強するために、このような政府助成インターン社員の枠を1万9000人から2万9000人に拡大し、再就職訓練の対象(情報技術分野に特化)を5万人から6万人に増やすほか、長期失業中(6カ月以上)の若年層を対象にした採用奨励金助成規模を1万人から3万人に増やすことにしている。

政府は、構造調整の影響をまともに受けている中高年層失業者向けの失業対策にも力を入れている。まず、雇用保険法施行令を改正し、構造調整に伴う退職予定者を対象に再就職訓練や就職斡旋プログラムを実施する企業に対して経費の2分の1から3分の2を助成する。第2に、中高年失業者が雇用効果の大きい技術集約的中小企業を創業する場合、1000社まで合計5000億ウォン規模の信用保証と金融支援を行い、「生計型創業信用保証制度」(失業者が生計を目的に創業する際に受けられる1億ウォンまでの融資に対して信用保証基金が信用保証を行う制度)の適用期限を2002年6月まで延長する。第3に、職業訓練カード制度(雇用保険受給者が民間機関で職業訓練を受けた場合、訓練費用を助成する制度)を全国的に拡大実施する。

その他に、政府は民間の職業訓練及び就業斡旋機能を強化するために、アメリカのマンパワー社をモデルにした「総合人材開発会社」の導入に向けて法的基盤づくりに取り組むことにしている。現在民間の人材管理事業は派遣労働者保護法による人材派遣事業、職業安定法による職業紹介事業、職業訓練促進法による職業訓練事業などのようにそれぞれの法体系に基づいて細分化され、主に中小零細企業によって担われている。政府は構造調整に伴う失業者の再就職支援には民間の職業訓練及び就業斡旋事業を軸に労働市場の流動化を促進するための仕組みが必要であるとみて、民間の関連事業の統合化と大型化を誘導するための法的基盤づくりや税制金融面での支援に乗り出すことにしたようである。

一方、全般的に雇用情勢が厳しい中でも、ベンチャー企業が雇用創出の新たな場として順調に成長していることが明らかになった。財政経済部の「2000年度の中小ベンチャー企業創業動向」によると、2000年1月から11月までベンチャー企業として指定されたのは9331社(月平均400社)に上った。1998年に2042社、99年には4934社(月平均241社)にとどまっていた。これに伴い雇用者数も1998年末の7万1000人から99年末に17万3000人(1社当り35人)、2000年11月末には34万6000人(1社当り37.1人)へと急増した。 

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