求人は増えたものの、収入は低水準

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2001年5月

2000年の下半期から各部門で雇用が増加し、失業率の低下がどの指数にも表われるようになっているが、いまだ給料の回復までには到っていない。新規に創出された業務の給料が低いことも特徴である。

労働省の発表によると、2000年6~11月の間の正式採用労働者に最も特徴的なのは、多くが年齢39歳以下、中等科卒業以上の学歴、最低給料の3倍以下、という条件を呑んだ場合に就職できているということだ。最低給料の3倍は453レアル(約232ドル)である。この給料額は、サンパウロ州立データ処理財団がサンパウロ首都圏で調べた2000年の就労者の平均給料874レアルの約半分でしかない。

労働省の分析によると6~11月に採用された労働者の30%は中等科卒の学歴を有し、25%は最低給料の1~1,5倍の低い給料水準に同意している。

もっと注意を引くデータは、この調査を行った6カ月間にサンパウロ首都圏で453万1636人が解雇された半面、496万7793人が採用され、正味43万6157人の増加になったことである。こうした激しい労働力のローテーションは普通、給料が高くなった従業員を解雇し、安い給料の新しい労働力に変える手段に使われるが、最近では急速に変動していく職能の要求に対応するための労働力交替も増加している。

労働省では、給料の低下は認めながらも、長く続いた雇用減少期からやっと増加期に入った過渡期の現象として、失業の減少とともに次第に給料水準も回復していくだろうと、今後に期待している。

ブラジル地理統計資料院のデータにも、6大首都圏で、これまで採用時に学歴を問わなかった工業、建設、店員、一般サービスの一部にまで就労者の学歴水準を問題にする動きが起こっている。就労者全体に占める中等科卒以上の学歴の割合は90年に15,5%、94年に17,7%、99年に22,7%となっていたものが、2000年には24,3%に増加した。

中央労組CUTがサンパウロ首都圏のサント・アンドレ市に所有する職業紹介所には2000年中に1万1000人の求人申し込みがあったが、ほぼ半分はまだ希望する求人が充足できていない。その反面で、就職を希望する労働者はすでに10万5000人に達している。

求人申し込みが増加しながら、就職が非常に難しくなっている理由について労組は、企業の要求事項が次第に厳しくなっているにも関わらず、提供する給料は労働者にとって受入れ困難な低水準にあることを指摘している。大部分の求人は中等科卒以上の学歴と6カ月以上の経験を有し、給料以外は一切の手当を付けないで、なるべく年齢の若い人というのが、最も多い共通する要求条件である。

サンパウロ首都圏の工業地帯であるABC地帯では、CUTの職業紹介所に多数の技術者の求人申し込みを受けているが、2カ国語に堪能であることを要求しながら、給料は750レアル(1ドルは2000年に約1.90レアル)という求人もある。2カ国語を取得している秘書の給料は800~2.000レアル、1年以上の経験と中等科以上の学歴を有する旋盤工には800~1.600レアルが提供されている。

労組筋ではこうした事情について、90年代に入ってそれまでの閉鎖経済を急速に開放した結果だと見ている。企業は近代化投資を増加させることによって、設備や構造を短期間に近代化させたが、労働者は時代の要求の急変に調和させる訓練を行っておらず、したがって労働者の質と企業の要求との格差は大きくなっている。

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