LO大会開催、初の女性委員長選出

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2000年12月

2000年9月3日から6日まで開かれた、4年に1度開催のスウェーデン労働組合総同盟(LO)大会において、ワンヤ・ルンドビーウェディン女史が新しい総同盟委員長に選出された。同女史は、220万の組合員を擁するブルーカラー労働者の組合連合であるLOの委員長に選ばれた初の女性というだけではない。公共部門労働者の組合である地方自治体労働者労組(SKAF)は、今では60万を超える組合員を抱え、最大のLO加盟組合となっているが、この組合出身の初めての委員長でもある。同女史は、およそ20年前に所属する労働組合の専従役員となるまで、補助看護婦として働いていた。

ルンドビーウェディン女史は、過去4年間、第一副委員長を務めていたが、今度彼女の下で副委員長となった3人にとってLOの幹部経験は初めてである。森林労働者組合出身のヘカン・マイアー氏は、LOの団体交渉部門をも率いる。金属労働者組合出身のウラ・リンドクウィスト女史は、同組合の第一書記を務めていた。そしてラルス・ヘカンソン氏は、現在農業労働者組合委員長である。

大会では、各種保険、労働安全衛生、組合資金を用いた経済的支配力の用い方、賃金政策などについて、向こう4年間の課題が話し合われた。

労働災害保険

大会で取り上げられた中で最も重要な現実的問題は労災保険であるが、これについては10年前に政府が改定を行い、労災にあった労働者およびその所属組合に対して、その病気ないし負傷が労働に関連があることを「疑いをさしはさむ余地なく」証明することを強いるものであった。その結果、腰痛のような健康上の問題、さらに最近ではストレスに関係する病気が、労働に関連するとはめったに認定されない。制度が変更される前は、病気や負傷の原因となりうることが予想される仕事に雇用されていれば、補償が支払われるのに十分であった。LO大会で来賓として演説した首相は、LOおよびこの問題について文書による動議を提出していた多くの組合員と加盟組合に対して、昔の非常に寛容な法に完全に復帰するとは約束しなかったが、政府の優先課題として当該法の改正を約束した。

失業保険

組合の第2の優先課題は、失業保険の改善である。給付水準の即刻引き上げが要求され、80%補償についての現在の1万6000クローネ(1クローネ=10.8円)という対象所得の上限は、少なくとも健康保険の場合の上限である2万2000クローネにまで引き上げられなければならず、産業労働者の低賃金水準に匹敵する1万6000クローネ以上を稼いでいる労働者は、全所得に相応する保険料と所得税とを支払わなければならないので、対象所得上限の引き上げがされるべきである、と主張。この問題に関する政治の動きが、あまりにも遅いことにうんざりした労働組合の中には、すでに補足的な民間の失業保険に加入したところもあるが、それは、政権についている社会民主党が支持を表明している一般福祉制度の下では必要とはされないはずのものである。首相は、改革を2002年までに行うと約束したが、その水準と上限については黙して語らなかった。

健康保険

大会は、LOが、待機日を撤廃し、補償水準を賃金の90%に引き上げることによる、健康および育児保険の改善を求めることを決議した。この補償水準は、1991年から94年の保守系政府時代に75%に引き下げられる以前の水準と同じである。

大会は、さらに、LOが政府に対し、原則として歯科保険を、健康保険と同じ給付水準に引き上げるよう促すことも決議した。現在多くの支部組合は、組合員の高い歯科費用を支援するため、民間の歯科保険に加入している。大会は、組合員と国民経済双方にとってもっとも安上がりの方法は、一般的福祉政策の理念に基づいて、主な歯科治療を保険の対象とする、総合的歯科保険を広く国民に行き渡らせることであると考えている。

労働環境

大会は、また、労働組合が労働環境改善に尽力する必要を強調した。労働安全監督官の数は、現在国全体で400人を下回っているが、相当数増やすべきである。また、不況と高失業率の時代に、その数が劇的に減少してしまった職場安全委員を採用することに、労働組合自体がさらに力を入れなければならない。

使用者は、職場のストレスを予防するよう督励されるが、これは、有能な独立した職業関連安全衛生サービスなくしては不可能である。

LOの指導部に対し、1人だけで働く労働者の職場が安全な職場に限定されるように、責任をもって実現に向け働きかけるよう要請があった。たとえば、スーパーやキオスクのような職場での単独労働者が、現金を出せと銃で脅かされたり、あるいは単独作業が負傷につながることのない環境にすべきである。

組合資金

LOおよびLO所属組合は、共同でおよそ150億クローネのストライキ資金を蓄えている。組合は、また、年金資金に対し、主な影響力を持ち、来年新たな年金制度が導入されると、さらに大きな影響力を持つようになるだろう。大会は、こうした資金の投資はこれまで、完全雇用その他の組合目標には役に立たなかったと考えている。それ故、倫理規定を含む資金運用政策を形成し、加盟組合に示すことを執行部に委ねた。大会期間中に、LOの投資ブローカーが、大会が最高の配当以外のものを求めているとの認識の下、民間病院に投資している金融会社の過半数株式を売却したとの報道があった。LOは、公式には私的利益のための医療に反対している。

執行部は、さらにカナダの連帯資金制度--それは、小企業が新たな雇用を創出するのを援助するべく、給与削減分を組合資金に入れることが労使で合意されている制度--がLOにとって手本とすべきよい考えであるかどうか調査するよう指示を受けた。

EMU(欧州経済通貨同盟)へのスウェーデン加盟の可能性

LO執行委員会は大会に対し、スウェーデンがEMUに加盟することに賛成し、LOは、この問題についての国民投票が行われる際には、組合員に賛成投票をするよう勧告すべきだとの提案を行った。だが大会は、否と答えた。組合員には、国民投票でどう投票すべきかを勧告しないということである。しかし、大会自体としては、EMUへの加盟に賛成を決めた。ただし、既存の給与決定制度が安定的なものであることと、当該貨幣システムが構造的失業をもたらすならば、代わりの雇用を確保するため構造的緩衝資金が積み上げられることが条件となっている。

賃金政策

大会は、また、伝統的連帯賃金政策を修正する賃金決定に関する報告を承認した。実質的に、当報告は、産業別組合が先導した1998年の賃金協定の結果をLOの政策とするものである。同報告は次のように言っている。「提案された変更の意図は、すべての従業員が、よりふさわしい仕事につくなどの作業能力の向上から利益を得ることを可能とする職場賃金決定制度を構築することにある」。

すなわち、賃金決定システムは、交渉における穏健な賃上げ要求の持続と、自分の職務と能力を向上させた労働者に対する個別的補填になる。このうち、前者の穏健な賃上げ要求は、当事者の仕事が労働市場で高い評価を受けていない場合でも、すなわち、契約期間中いかなる賃金ドリフトの利益を受けなくても、最低賃金労働者に、産業労働者と同一水準の賃金引き上げを保証するものである。また、賃金決定制度の後半部分は、従来、賃金ドリフトと言われてきたもので、時には全賃金上昇の半分程度にまで達することもあったが、全国支部協定外で実施され、インフレの要因となっていた。この部分について、1998年に始まった新しい賃金決定制度では、合意された資格による補填が協定に含まれ、集約されて賃金引き上げに関する欧州規範の一部となった。欧州規範とはすなわち、国際的インフレに生産性の向上を加えるもので、1998年の産業賃金協定では、3.5%になるとみなされていたが、2001年2月1日までに合意がなされる予定の新しい協定では多分やや高めになろう。

LO報告書は、賃金上昇額の合計が、周辺国よりも高くなる場合には、スウェーデンにとって、経済的、社会的悪影響をもたらす危険性を力説している。しかし、スウェーデンのインフレは、近隣諸国よりも低く、過去3年間の賃金上昇は、欧州規範の範囲内に十分収まっていること、また同時に、非常に低いインフレ水準が、労働者に過去30年間で前例のない実質所得の上昇をもたらしている。

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