MTUC、新年金制度の受け入れを拒否

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2000年12月

従業員積立基金(EPF)が導入した新年金制度の受け入れをめぐって内部対立が続いていたマレーシア労働組合会議(MTUC)は9月8日、執行委員会を開き、MTUCの統一見解として受け入れ拒否を決定した。これにより今後は、組合員に新年金制度に加入しないよう呼びかけ、すでに契約した組合員には、解約することをすすめていく。傘下150組合が出席する総評議会を10月7日に開き、承認を得る運びである。

EPFが7月に導入した新年金制度は、「従来型年金制度(SAKK)」と「投資型年金制度(SATK)」の2つ。対象者は16~70歳までの EPF加入者で、同基金への積立金を利用し、任意で、SAKKとSATKの一方あるいは両方を、それぞれ1ユニットを単位に、購入することができる(注1)

導入されて間もなく、MTUCのラジャセカラン書記長は、EPFが適切な説明とアドバイスを怠ったことや制度の運営を民間保険会社に委託していることなどを理由に、MTUCが詳細に調査し終えるまで、同制度への加入を手控えるよう900万人の EPF加入者に呼びかけた。

一方、新制度の導入を決定した EPF理事会には、MTUCのトップ、ランパック委員長が労働側代表の1人として参加していたにもかかわらず、同制度について MTUCの総会等で一度も論題にのぼらず、組合幹部の一部には委員長への不信感がつのっていた。ランパック委員長とラジャセカラン書記長というMTUCのトップ2人の意見が大きく食い違っていたことで、一時は内部分裂の可能性まで取りざたされていた。

こうした事態を深刻に受けとめ、委員長は9月8日に執行委員会を招集、全会一致で受け入れ拒否を決定した。閉会後の記者会見で委員長は、受け入れ拒否の理由について、「制度を運営しているのが EPF自身ではなく民間企業であるため、マレーシアの労働者にとって適切でも有益でもない」と述べた。

さらに、9月26日に開かれた最高幹部会では、ボイコット・キャンペーンを強化していく方針も決定されている。

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