欧州委員会、労働市場改革に関する精力的な提案を採択

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2000年12月

欧州委員会は2000年9月6日、経済成長と雇用創出のさらなる後押しを求める新雇用包括提案に同意した。これは雇用に関するリスボン特別サミット以来初めてのものであり、欧州域内の全政府に対する新たなガイドラインと各加盟国に対する特別勧告から成る。

2000年度雇用ガイドライン

新しい雇用ガイドラインは、政策の展開、欧州労働市場の構造的改革の継続的必要性、リスボン・サミットで採択された包括的かつ競争的な知識経済という新たな戦略的目標などを考慮して、2000年度のそれに対し数カ所の実質的変更および新たな内容を加えた。

2001年度雇用ガイドラインは、リスボン・サミットで示された数値、つまり、2010年までに雇用率を70%に、さらに女性の雇用率を60%以上にすることを達成するための目標を設定するよう加盟国に要請する。また、それは、ライフ・サイクルを通じた教育と訓練を含む生涯学習戦略を開発するための方針を示すよう加盟国に求める。さらに、それは、雇用戦略の主要な部分を実行する際、より積極的であるようソーシャル・パートナーに要請する。

ガイドラインにおけるその他の新しい点は次のとおりである。

  • 労働者不足や技能ギャップに取り組むこと。
  • 貧困の罠を除去し、働く貧困者(working poor)や社会の進歩に取り残された者をつくり出さないようにすること。
  • 識字率を向上させること。
  • 教育方針の目標を引き上げること。
  • 高齢労働者に関する包括的かつ積極的な戦略を確立すること。
  • 人的資源への投資を増やすこと。
  • 教育と訓練への投資により知識社会を構築すること。
  • 性、人種もしくは民族の起源、宗教もしくは信条、障害、年齢または性的志向を理由とする差別と闘うこと。
  • 機会均等団体との協議を通じて機会均等政策を開発すること。
  • 育児に関する目標設定を考慮すること。

加盟国への勧告

欧州委員会は、ここ1年間の加盟国の取り組みを分析・評価し、次のような分野について勧告を行った。

  1. 若年者失業・長期失業に対する積極的かつ予防的政策:同分野で勧告を受けたのは、イギリス、フランス、ドイツ、イタリアなど7カ国である。
  2. 税制・社会保障制度の改善:同分野で勧告を受けたのは、ベルギー、フィンランド、スウェーデンなど5カ国である。
  3. 所得税の減税:同分野で勧告を受けたのは、フランス、ドイツ、オーストリア、フィンランド、スウェーデン、デンマークなど7カ国である。
  4. 技能・生涯学習:同分野で勧告を受けたのは、イギリス、フランス、ドイツなど10カ国である。
  5. 高齢労働者対策(税制・社会保障制、技能訓練および年齢差別禁止など):同分野で勧告を受けたのは、フランス、ドイツ、イタリア、オーストリア、デンマークの5カ国である。
  6. 男女機会均等:同分野で勧告を受けたのは、イギリス、ドイツ、イタリア、オーストリアなど11カ国である。
  7. 雇用創出の源になりうるサービス部門の促進(企業家精神の育成や税制の改革など):同分野の勧告を受けたのは、2カ国である。

参考

欧州委員会第5総局ニュースリリースほか

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