ビクトリア州、労使関係法制復活を検討
―労使関係特別委が最終報告書を提出

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2000年11月

ビクトリア州では、ケネット前政権が労使関係改革を断行した後に、労使関係に関する州の権限を連邦に委譲したために、同州内で働く労働者のうち連邦アワードの適用されない者は他州の労働者に比べ労働条件面で不利な立場に置かれてきた。そこで現労働党政権は、労使関係特別委員会を設置し、同州の労使関係制度のあり方を検討していた。2000年9月になって特別委員会が最終報告書を提出したことから、ビクトリア州政府は、今後この報告書をたたき台に、本格的に労使関係政策を練り上げることになる。

最終報告書の内容

労使関係特別委員会は、シドニー大学のマッカラム教授を委員長に、この4カ月間にわたり州内の労使の声を聞いてきた。さらに、同委員会には、関係当事者から200以上の意見書が提出された。委員会は、これらを詳細に検討したうえで、最終報告書を作成し、あわせて労使関係制度について提言を行っている。

現時点では、最終報告書の詳細は不明だが、いくつか重要な点についてまとめてみたい。まず、報告書は新たな州アワード制度とそれを管轄する州公正雇用審判所の創設を提案している。

そして、連邦アワードや認証協定等が適用されない同州内で働く労働者の労働条件を規制する公正雇用法の制定も要請されている。同法では、長期勤続休暇や育児休業、疾病休暇等の休暇に関連する事項と、フルタイム雇用や臨時雇用に関する定義が定められ、他方、賃金率や手当、労働時間、時間外手当などは新たに設置される審判所で取り扱われることになる。

さらに、報告書は、内職などに従事する職場外労働者(outworkers)や独立契約者に言及し、前者についてはその労働者性を、後者については審判所の利用を認めるよう求めている。

政労使の反応

まず、連邦政府やビクトリア州自由党は、報告書が同州政府の労組寄りの姿勢を表しているとして、これらの提案を強く非難している。使用者団体は、新たな労使関係制度は不必要であり、提言どおりの制度が実現すれば、労働コストの上昇により、小規模企業が打撃を受けるだけだとの見解を示した。他方、労組は、報告書の提言すべてが労組の希望どおりというわけでなく、労組もいくつかの重要な事項で譲歩しているとしたうえで、提言が実現すれば労働者にとっては大きな前進となると評価している。

ビクトリア州では、労使関係に関する州の権限が連邦に委譲されてから、連邦アワード等の適用を受けない労働者の多くが、国内で最も低い賃金を受けるようになったとの指摘もあり、今回の報告書は、特にこれらの労働者を対象に、公正な労働基準を確立することを目的としている。

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