欧州委員会、1976年男女均等待遇指令の改正を提案

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2000年9月

欧州委員会は2000年6月7日、「雇用、職業訓練、昇進および労働条件へのアクセスについて男女均等待遇原則の実施に関する指令(76/207/EEC)」を改正する指令案を発表した。

まず、同指令案は、セクシュアル・ハラスメントを禁止されるべき職場における性差別とする。また、それは、過去約25年にわたる40件以上の欧州司法裁判所判決、欧州共同体設立条約の修正および最近提出された差別禁止指令案などを考慮して、一定の領域における規制を強化し、1976年指令を改正する。

セクシュアル・ハラスメント

セクシュアル・ハラスメントに関する同指令案の規定は、最も熱望されてきたものである一方、潜在的に最も議論を呼び起こすものでもある。欧州委員会は1997年に、この問題について欧州レベルのソーシャル・パートナーの意見を求めたが、両者はこの問題に関する欧州レベルでの協約を締結するための交渉の開始についてさえ合意に達することができなかった。その時、欧州委員会は、この分野における拘束力のある立法の提案の可能性を検討する準備に入るとの意向を示していた。その結果が今回の提案である。

同指令案によると、1976年指令に新たな第1条aが加えられ、セクシュアル・ハラスメントが性に基づく差別とみなされることを明らかにし、セクシュアル・ハラスメントを「人間の尊厳に影響を及ぼし、また(は)脅迫的、敵対的、攻撃的若しくは心を乱すような環境をつくり出す目的ないし影響をもって、性に関連する不快な行動がなされたとき」と定義する。

間接差別

同指令案は、1976年指令第2条に修正を加え、間接差別の定義が規定される。それは「適正かつ必要で、性に関連しない客観的な要因によって正当化される場合を除き、外見上中立的な規定、基準または慣行が一方の性別グループのより多くのメンバーを不利な立場に置く」という状態である。

指令の適用除外

1976年指令が施行されて以来、欧州司法裁判所は、適用除外に関する第2条(2)の解釈について3件の重要な判決を下してきた(同規定では、その性質またはその遂行される文脈の理由により、労働者の性別が決定的な要因となるような職業活動およびそのための職業訓練について、加盟国は同指令の適用除外とすることができる)。

これら3件とは、女性警官が挙銃を携帯せずその取扱いについて訓練されなかったことが問題となったJohnston事件(1986年)、英国海兵隊からの女性の排除が問題となったSirdar事件(1999年)、およびドイツ軍がほとんどすべての職から女性を排除したことが争われたKreil事件(2000年)である。

欧州委員会によれば、これらの事件から導き出されうる主な結論は、この問題について加盟国に与えられる裁量の程度が厳格な審査に服するということである。それは特定の職だけを対象としており、加盟国は定期的に適用除外の適法性を再評価しなければならない。このように、1976年指令第2条の改正は、上述の欧州司法裁判所の判例法を考慮し、真正の職業上の資格に関連する例外のみについて適用除外を認めることである。

ポジティブ・アクション

ポジティブ・アクションは、近年かなりの論争を呼び起こしている問題である。1976年指令第2条(4)では、「特に女性の機会に影響を与える現存の不平等を除去することにより男女の機会均等を推進する措置「を妨げないと規定されている。欧州司法裁判所は、3つの事件(Kalanke事件、Marschall事件および欧州委員会対フランス事件)判決でこの規定を解釈し、さらに、Badeck事件でその解釈を洗練化した。

欧州委員会は、これらの判例法から以下のような結論が導き出されると考えている。ポジティブ・アクション措置を採用する可能性は、均等待遇の原則に対する例外とみなされている。この例外は、差別的に見えるけれども、不平等の実例を除去し、または減らすための措置を考慮に入れるよう設けられている。女性の十分いない部門における雇用または昇進へのアクセスについて女性を自動的に優先することは正当化されえない。しかし、それが自動的ではなく、また同等の資格を有する男性に対し彼らが客観的に評価されることを保証する場合、このような優先は許されるのである。欧州委員会は、このような考え方を踏まえ、ポジティブ・アクションに関する提案を行っている。

その他、指令案は、既存の保護の強化と均等待遇を推進し遵守させるための新たな措置の創設を講じている。

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