失業率8.2%へ上昇

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2000年6月

ブラジル地理統計資料院は2000年1月の失業率7.6%が、2月は8.2%へ上昇したと発表した。1999年2月は7.5%であった。1984年5月の8.3%に次ぎ、1998年5月の8.2%と同率となっている。しかし資料院では、就労者数が2月に0.5%増加しており、失業率の上昇は、経済回復兆候を見て就職のチャンスが増加したと感じた失業者が職探しに出たために起こったものである。資料院は、失業していても調査した週に職探し行動を取っていないと、失業者に計算しない。

資料院によると、2月に職探しをした者は6大首都圏で1.1%に当たる18万7000人増加し、これが労働力人口の増加として加算された。労働力人口は1~2月に71万1200人、1999年2月比で4.1%増加した。公式失業者数は6大首都圏で2月に約140万人となっており、サンパウロ首都圏だけで70万5000人の失業者を出している。一方、サンパウロ州政府のデータ処理財団と労組のDIEESEの共同研究によると、2月のサンパウロ首都圏の労働力人口は889万7000人、失業率は17.7%、失業者数は157万5000人であった。1999年2月は18.7%、161万5000人の失業者数、労働力人口863万9000人だった。また、1999年2月の再就職までの平均失業期間は37週であったが、2000年2月は48週となり、1月の54週よりは短いが、再就職の困難さを示している。

DIEESEによると、サンパウロ首都圏の就業者の平均収入は、1月比で2.2%低下して848レアルに、給与生活者は2.7%低下して850レアルになった。給与生活者は1月にも平均実質給与が2.3%低下している。2月までの過去12カ月間に民間のサービス部門の就業者は平均給与が11.3%、工業は9.9%、商業は7.9%低下、民間の就業者の平均収入は9.9%低下した。

15人の求人に3000人応募

雇用チャンスが少ない郊外のベッドタウンでは、求人広告に群集が押しかけ予測しない事態を発生させるリスクがあるために、極秘のうちに雇用すると言われているが、3月にサンパウロ市の州立産院が15人の看護婦助手を募集したところ、受付開始時間の12時間前から男女3000人が押しかけて興奮が高まったために、軍警20人、突撃隊30人が出動して、整理に当たる事態が発生した。公立病院のために公募が義務となっており、看護助手としての資格を要求しているが、単に「求人するらしい」という噂さだけが広がって、受付時間に正門を開けると同時に、資格のない失業者まで申し込み用紙を入手しようと群集がなだれこんで、整理がつかなくなった。看護助手は給料498.84レアル(当日の為替レートで約280ドル)で募集した。

サンパウロ州看護審議会の発表によると、1998~1999年だけで公立、私立の看護学校は3万人を養成したが、職場は縮小して、同審議会の職業紹介所には、1999年上半期まで500人が就職を申し込んでいたが、2000年3月には5000人に増加しており、審議会では、産院で起こったような混乱は別に驚くことではないと評価している。

失業原因は雇用・人材不足から

ブラジル企業の求人内容は、労働者が時代の要求に順応して技能を習得する速度をはるかに上回っており、失業率増加と同時に、企業は必要な訓練を受けた労働力が確保できないという矛盾した労働市場が出現している。1995年1月に4.4%だった公式失業率は、2000年1月に7.6%に増加しているにもかかわらず、公立、民間ともに職業紹介所は、企業から依頼された労働力確保に苦労しており、多国籍企業や改革が激しい銀行などで、専門職が空席のままになっていることは普通となっている。

大学卒業者の多くが就職できないでいるなかで、企業は未経験でも専門教育を受けた労働力を必要としている。求職者が持っている条件と求人側の要求は噛み合わなくなっており、ブラジルの労働力養成システムの欠陥と時代の要求に応じる最低教育水準も持たない大量の労働力が、この矛盾の原因として指摘されている。訓練はされていなくても安価な労働力提供が外資を誘致する有力な魅力であり、これが国際競争力の基本であると信じて教育投資を放置していた行政が、経済開放とともに欠陥として表面化し、ようやく民間部門に自覚症状として認められてきたが、政府部門にこれを是正しようとする意欲的動きはまだ見られない。

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