プランテーション労働の問題と展望
―茶農園を中心として

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:1999年11月

概要

インドのような圧倒的な農業国ではプランテーション労働の重要性は、極めて明白である。第九次5カ年計画(1997~2002)の手引書では、「部門計画」の概要の中で、経済におけるプランテーション部門の位置に言及し、「農業並びに農業と関連した事業」に向 かって戦略を入念に練り上げる中で、次のように明言している。

「プランテーション部門は、派生的な経済活動以外に、直接的あるいは間接的に、約4200万人の雇用を提供している。重要な点は、生産力を増加し、樹木の更新を促進させ、非伝統的地域を急速に拡張し、包装と品質の保証を改良することにある」。

インドは、アッサム、西ベンガル、カルナタカ、タミールナド、カレラの主に港湾に近い地域で、茶、コーヒー、ゴムのプランテーションに恵まれている。

西ベンガルのダージリン紅茶は世界中にその最高の品質が認められ、茶農園はダージリン丘陵地帯に2万 ha、タライに1万4000ha、ドーアラスに約6万9000ha 広がっている。約325万人の労働者がこれらの茶農園で働き、その60%は女性である。労働者は、主に少数民族、特定のカースト、低い階級、ネパールからの出稼ぎ労働者である。茶プランテーションはこれらの地域の経済を支えており、北ベンガルだけで275以上の茶農園がある。

労働者のストライキ

茶の収穫の最盛期の1999年7月、ベンガルの労働者により無期限ストが行われ、茶生産に損害を与えた。7月10日、ガータック労働大臣、労働組合幹部、経営者(茶生産者及び茶協会)によりもたれた2回の三者間の話し合いは失敗に終わった。

プランテーション労働者連合(CCPW)とプランテーション労働者権利保護組合(DCPWR)によると、このような話し合いは最近の10年間で初めてで、全ての労働組合は政治的立場を越えて、共同して茶産業労働者としての行動を始めた。

彼らは、難局に際し意義ある解決を見つけ出すために、特別な政府委員会を持つことで労働者の要求を鎮静させるという労働大臣の提案を拒否した。

労働組合の要求

全ての農園での労働者の決められた比率に基礎をおいた追加的な雇用と賃金の法制化に焦点を当てた労働組合の要求は、次のようなことも含んでいる。

・茶産業による中央/地方の病院の設立

・飲料水と燃料の供給

・全ての労働者の3部屋の住居を割当てる

10日間続いたストは三者間の長期の話し合いの後、バス首相の要請で係争中の問題が解決した1999年7月21日終結し、解決の条件には次のような特徴が含まれていた。

農園の所有者は、ドアラス、テライ、ダージリン地域では、追加的に常勤労働者1万人を雇用する。

新規採用はプランテーションの面積、土地と労働者の比率、農園の財政的条件を基礎に様々な農園に配属され、この全過程は2カ月以内に完成する。

ストの参加者に対し虐待がない限りは、労働者にスト中の賃金は支払われない。しかし、雇用の継続は維持する。

農園での臨時と常勤の労働者の契約問題を調査するため、委員会が設置され、そこでの議論は、個々の茶農園の生産、生産性、財政能力を考慮した後、報告書として6カ月以内に具申される。

医療諮問委員会が経営者による集団病院設立の問題を再検討し、期限と実施計画を作成する。

政府は、様々な社会福祉の政策を実施するための監察機構を改善し、必要とあらば起訴に踏み出すだろう。

しかし、労働組合幹部は、解決方法に不満を持っていたが、茶産業と大部分は出来高賃金をベースに支払われている労働者の大きな関心の中で、その条件に同意したことをはっきりさせた。

茶産業への衝撃

インド茶協会は、1日当りストによる茶の損失を900万キログラムとした。既に、茶産業は、ベンガル農園の1999年5月は、1998年同期と比較し1100万キログラムの減収となっていた。今回の最盛期のストは減収と価格低下の2つの衝撃の下で茶産業の衰退を一層深刻にした。1999年5月までに総減収額は、約5100万キログラムという報告がなされており、輸出状況に加え国内価格の暴落の影響は深刻である。

このような事情で、南インドは、5月までに1000キログラム減収しており、アッサム茶も、同期3820万キログラムの減収が記録されている。

1998年の印露協定では、ロシアは、毎年少なくとも1億キログラム購入しなければならなかったが、ロシアの買付けが減り、茶の輸出は減少してきている。インドからの輸出は1999年1~5月期、1998年同期の6879万キログラムと比較し、17%減少し5717万キログラムになった。

アハジャ茶協会会長の指導の下、インドの代表団は、双務的な貿易を促進するため、最近モスクワに向かった。その代表団には、他のインド茶協会や南インド農園主協会(UPASI)も含まれる。モスクワが包装茶の輸入に高い関税をかけていることについて議論がもたれると思われる。

最近最も不穏なことは、茶相場の下落である。UPASI は1999年の1~5月期、茶のキログラム当りの単価は1998年同期と比較して79.15ルピー(1ルピー=2.43円)から59.39ルピーに下落していると指摘している。UPASI は茶価格を上げるために短期間はバーター制の輸出を考慮すべきだとインド政府に特に提案している。

プランテーション労働法

マンデラ全インドプランテーション労連(AITUC傘下)書記長は演説の中で、1951年のプランテーション労働法は適切に施行されないまま今日に至り、更に、下院によって可決された修正案は、何年もの間、所有者側からの圧力によって上院で引き延ばされてい ると指摘し、西ベンガルとアッサムのプランテーションの所有者は、労働者を搾取し、怠慢な経営をしながら、彼らの土地での巨大な利益を流用しているのは遺憾だと述べた。

クリエン連合書記長によると、プランテーション労働法は、茶、コーヒー、ゴム、チコンド等のプランテーションのみに適用されるが、多くの州政府は、他のプランテーションにも及ぶよう拡大適用してきた。例えばケララでは告示により、カルダモン、ココア、アブラヤシにまで拡張し、また、5ヘクタールの広さのまたは15人以上を雇用するプランテーションにまで適用される。さらに、ボーナス法や、退職金法を含む他の労働法等もまたプランテーションに適用される。

しかしながら、プランテーション労働法は、300~350万人が小さなプランテーションで雇用されているカルナカタでは適用されない。但し、タタ、ビラ、そして多国籍企業のような大企業により所有されている大規模プランテーションでは、組合が組織されている。

実地調査チーム

西ベンガルとアッサムの茶プランテーション労働者の悲惨な状態は、全インド労働組合会議(AITUC)、ヒンドゥー労働者連盟(HMS)、インド全国労働組合会議(INTUC)等の代表者からなる、2つの実地調査チームによる「現地調査」の課題となった。

彼らの調査結果は、次のような問題を明らかにしている。

  • 労働法、特に1951年のプランテーション労働法に対する著しい違反
  • 賃金、住宅、衛生、水道、医療施設、託児所、教育等に関しプランテーション労働法の下でなされる適切な取り決めの欠如
  • 茶労働者(西ベンガル)の労働組合組織率は100%だが、組合活動は弱く、このため、労働組合の団体交渉力が弱い
  • 100%の組合組織率と弱い組合活動という特異な状況
  • プランテーションに農業的性格として封建的労働関係が存在するため、労働者の階級意識と労働組合の敵対性の欠如

AITUCは、ベンガルのバス首相の関心を国のプランテーション労働者の哀れな状態に向かせ、労働者の問題の他に、茶プランテーションの保護と刷新のためにある方法と手段を提案している。茶の木の老化による生産量の減少を特に指摘している。一般に、平均樹齢は、ダージリン高原では75年と言われている。しかし、調査では、タライとドースの平原で、それぞれ45.05%と37.24%が50年だった。50年を超えた後は収穫量の減少が始まるため、木を新しく植え、更新することが肝要である。

また、調査団によって知らされた興味深い事実は、茶農園は、ダージリンの丘陵では減少しているが、平野部では拡大していることである。そのような傾向は、一般的地域発展と雇用への相反する影響のため憂慮されている。茶農園のために平野部の稲作地を獲得する動きは、一般農家に加え、稲作農家から敵視されている。

結語

国内のプランテーションで、特に茶とゴムに関して証言された労働者の情況は、非常に問題が多く、労働組合に対し特別に挑戦的に思われるが、いくらかの建設的な展開がある。例えばケララ州では、小規模プランテーションにおける労働者のための社会保障基金設立の法案が最近可決されたし、ワヤナド地域のカルペタでは、コーヒーの実地教育の農園の農業収入税を免除することも決定された。

アッサム州議会の法律施行委員会が、ブラマ議長の主導の下で、茶農園経営者による1951年のプランテーション労働法の遵守を確実にするために、厳しい刑罰条項を求めた要求は賞賛に足る。その委員会は1999年8月13日までに、勧告に対する事業報告を求めている。

アッサム茶労働者福祉委員会の提案は、茶労働者家庭の学童を財政的に支え、教育施設を提供するために、州政府が100%の資金を支出すべきだということである。また、同委員会は、州政府は、学童への教科書の無料配布と給付金の支給を促進し、寄宿舎建設の完全な資金を供給することも提案している。

法律によって設置された受託者委員会は、茶労働者の福祉のための保健、教育、上水道、住居のインフラ建設のための借款に対し集められた資金を有効利用する事が要求される。

しかし、最も感情を傷つけられるのは、労働組合の敵対意識から発生した内部抗争と経営陣によるプランテーションでの組合活動に対する干渉である。1999年6月13日モルノイ茶産地の近くで、アッサム地区労働組合(CITU傘下)の組合員マランディ等の殺害に抗議する大規模な集会が開かれた。この犠牲者は、1999年5月16日経営陣とINTUCによって雇われた犯人によって撃たれたと言われている。

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