賃金引き上げの状況

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:1999年7月

2地方委員会で未解決

1999年4月の時点で、二つの地方三者賃金生産性委員会(地方委員会RTWPB)において賃金引き上げが労働側から提訴されている。一つはリージョン11(ダバオ市)で1998年8月10日、一律50ペソの賃上げが、もう一つはリージョン6(イロイロ市)で、現存する生計費手当(COLA・Cost of Living Allowance)10ペソを統合して20ペソの賃上げが訴えられている。両地方委員会は、それぞれ地域の経済状況などを勘案して訴えを検討したのち、公聴会を開くこととなる。

前回、この地域で賃金命令が実施されたのは、リージョン11では1998年1月1日(最低賃金労働者にのみCOLA10ペソ)、リージョン6では1998年2月21日(最低賃金労働者のみ10ペソの賃上げ)であった。

賃上げ要求

新聞報道によれば、6労働団体が、石油・電力料金の値上げが、交通料金、生活費の高騰を招くと危惧し賃金引き上げを要求している。KMU(五月一日運動)とILOPは日額100ペソの引き上げを訴えている。その他、PDMP、Bukuluran、KMK、PUMPは、労働者とその家族の生活必需品の値上げに見合った賃金引き上げを要求している。

一方、フィリピン経営者連盟(ECOP)会長は、現時点ではいかなる賃金引き上げにも反対である。国は賃金引き上げより雇用の確保に力を注ぐべきで、賃上げは経済回復の障害になるとしている。

賃金命令の最終ラウンド

賃金命令の最終ラウンドである1997年第4四半期から1998年第2四半期はエルニーニョ現象や金融危機の悪影響を受けた。この間、地方委員会で公布された賃金命令では、基本賃金とCOLAともある程度の増額がみられる。

引き上げ額は、1日あたり賃金については5~25ペソ、COLAについては4~51ペソの幅がある。命令施行日から実際に実施されるまでの期間について見ると、リージョン12、13、ムスリム・ミンダナオ自治区(ARMM)を除いて、12カ月以上となっている。

名目賃金と実質賃金

一番高い最賃はマニラ首都圏(NCR)の日額198ペソ(非農業、農業同額)であるが、1999年3月の実質賃金は、前月より4%下がった139.99ペソであった。NCR以外の地域では、非農業の最高名目賃金は日額135~188ペソであるが、実質賃金は98.2~125.9ペソで、前月比3.4~7.2%の落ち込みである。

1999年5月1日までに、リージョン4では全国トップの名目賃金、200ペソとなるであろう。この額は、広域首都圏(EMA・Extended Metropolitan Area)に分類されている21の自治体のみに適用される。EMAには2万2923の事業所があり、就業者の99.7%は非農業である。そのうち2万2863の事業所(91%)は従業員10人以下で、残り2077事業所は従業員10人以上の規模である。EMA以外の最低賃金は日額132~195ペソである。一方、NCRには、10万4498の非農業事業所があり、ここでは、日額198ペソが支払われているようだ。

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