続く雇用不安

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:1999年6月

サイアム・セメント・グループ企業で人員削減

サイアム・セメント・グループ(SCG)が、「1999年相互分離計画」を発表した。約3万6000人のグループ従業員のうち、15年以上勤続したものを対象に1999年2月1日から3月31日の間に早期退職をつのることが含まれている。

SCG の経営陣は、今後3~5年のマイナスもありうる低成長を予想して、活発なリストラを実施している。中核的事業以外は、グループ外へ、金融のリストラなど、さまざまなこころみがなされている。このような厳しい状況下で、専門的教育を受けた若年層は、比較的恵まれた就業機会を享受できるであろう。

問題ある銀行の給与・ボーナス

経営状態が不健全であるにもかかわらず、1998年にクルン・タイ銀行は4カ月のボーナスを支給していた。銀行経営者、納税者、報道関係者はこぞってこうしたまずい経営状態の銀行を生かしておくために、税金を注ぎ込まなければならなかったことに憤慨した。例年の賃上げが1カ月遅れになった時点で、経営側は従業員に1999年度の賃上げは見込めないだろうということを回覧した。しかしながら、月々の生活費手当を月額1200バーツから1500バーツに引き上げるための追加給付金300バーツを全員に支給した。

従業員組合は、従業員は利益を挙げたのに、その利益は不良債権に引き当てる支払準備金として別途処理されてしまったと主張して抗議した。この抗議の最中に、銀行側は長期勤続給付金と退職金を交換条件に退職を呼び掛ける「相互離職計画」を発表した。

従業員1万8000人のうちの6000人が余剰人員になるものと予測される。銀行側は離職者に支払う余裕は余りない。

タイ・ファーマーズ・バンク(TFB)の労働組合は、2月の第2週にストライキの是非をめぐって組合員の意見聴取用の書式を配布した。このリーフレットにおいても、賃金構成問題や従業員の手当・福利厚生費の減額を企図したり、額面400億バーツのTFBの増資引受伝票を巧みに発行したあとで従業員に対する取扱い手数料4億バーツの支払を履行しなかった問題を挙げて銀行側を批判した。

TFBは1999年度のボーナス支給原資の予算を組んでいない(連続赤字が予測されるために)。労働組合側はボーナスの支給は雇用条件だと考えていた。銀行側は、労働組合側の同意なく一方的に給付金を減額または停止することはできない。

TFBの労働組合は、1999年3月13日にチェンマイで年次総会を召集し、9月に労働組合が銀行側と新労働協約交渉の承認を求めるだろう。

ボーナス給付に関しては、バンコク銀行の経営側が1998年末に「利益がなければ配当もボーナスもない」という考え方に対する合意の取り付け交渉をしていた間に労働組合側を首尾よく説得することができた。離職に当って上限30カ月分の給料を支払われた旧従業員の多くは、それまでは年に2~3カ月分のボーナスが支給されていたのに、1998年には1カ月分しか支給されなかったとして、離職後に労働裁判所に提訴した。裁判所の判決は1999年の後半くらいまでに出される予定で、その成り行きに高い関心が寄せられている。

経済不安で抗議行動

ラジブリ・テキスタイル・デベロップメント社が雇用している600人の従業員のうちの200人余りは、裁判所の執行官が工場資産と設備を差し押さえているラジブリ工場の前で集会を開いた。工場の創業経営者の一族が係争中だった裁判の最終判決が出るまで6年もかかった。従業員は、この事業が売却されれば職を失うことになると心配している。

ボー・ラバー・インダストリー社(サムットサコン所在)の従業員50人がボーナスや賃上げに関する雇用契約の遵守不履行を理由に会社に対する苦情申し立てを提訴するために、午前11時半にラジャダムネオンの記念碑から労働省までの抗議行進を開始した。労働者側は同時に作業安全対策の改善を要求した。

現行の労働協約では、2月に30日から45日分のボーナスを支払うことになっている。会社側は流動性資金に問題があるとして2月19日に半分を支給し残額を4月19日に支払うようにしたいとした。労働者側はこれに同意せず、2回目の支払を3月4日にするよう要求した。経営側は資金がなかったので4月4日の支払を要請した。

同時に労働者側は、死亡事故1件と最近重傷事故を1件起こしている旧式で危険な複数の機械についても苦情を申し立てた。

同社は、バンコク・マス・トランジット公社向けに供給する「スーパーストン」という商標のバス・トラック用タイヤの製造を目的とし従業員300人を雇用して1967年に設立された会社である。

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