開催報告:第4回国際比較労働政策セミナー(2020年11月9日開催)
デジタル時代における仕事の世界の変容 ―新しい働き方と労働政策の役割―
概要
近年のグローバル化により労働問題が共通化する中、労働政策の企画立案においても労働に関する国際比較研究の重要性が増しています。労働政策研究・研修機構(JILPT)は、主要国及びアジア諸国の研究者が参加し、各国に共通する政策課題について比較検討を行う「国際比較労働政策セミナー」を2017年3月から実施しています。
今年度は「デジタル時代における仕事の世界の変容―新しい働き方と労働政策の役割―」をテーマに第4回セミナーを2020年11月9日にオンライン形式で開催しました。
第四次産業革命と呼ばれるデジタル技術革新の急速な進展に伴い、インターネット・プラットフォームを介して仕事の委託を受けるクラウドワークなどの自営的就労が拡大し、雇用契約によらない仕事の機会が増加しています。自営型(非雇用型)テレワークやフリーランスなど、「雇用」と「自営」の中間的な働き方をする者は、労働者性が認められず、基本的に労働関係法令等の保護の対象とはなりません。こうした自営業者であって、労働者と類似した働き方に従事する者を労働政策上どのように保護していくかが重要な課題となっている。
今年度の国際比較労働政策セミナーは、デジタル化の進展と雇用・労働への影響、デジタル化に対応した労働法政策に関し、各国における現状と課題を比較検討し、今後の労働政策の方向性について議論しました。
- 開催日:
- 2020年11月9日(月曜)
- 開催方法:
- オンライン形式
- 主催:
- 労働政策研究・研修機構(JILPT)
プログラム
開会あいさつ
- 14時00分~14時10分
- 開会挨拶(樋口 美雄 JILPT理事長)
- 14時10分~14時15分
- セミナーの概要説明(天瀬 光二 JILPT副所長)
基調講演
- 14時15分~14時30分
- ステイン・ブロッケ OECD雇用・労働・社会問題局 シニア・エコノミスト
- 14時30分~14時45分
- ジュゼッペ・カッサーレ 国際労働法社会保障法学会(ISLSSL)事務局長
- 14時45分~15時00分
- 荒木 尚志 東京大学大学院 教授
セッション1:デジタル化の進展と雇用・労働への影響(座長:高橋 康二 JILPT副主任研究員)
- 15時00分~15時10分
- 報告①:アリソン・ペニントン(オーストラリア)
オーストラリア研究所 未来の仕事センター シニア・エコノミスト
「オーストラリアにおける技術、仕事及び労働の未来」 - 15時10分~15時20分
- 報告②:スーリヤ・プラカシュ・パティ(インド)
インド経営大学院コジコデ校 助教授
「インドにおけるプラットフォーム型配車サービスのタクシー運転手の非生産的な職務行動: 人権の観点から」 - 15時20分~15時30分
- 報告③:西村 純(日本)
JILPT副主任研究員
「クラウドワーカーの労働条件:仕事内容によって労働条件はどう異なるか」 - 15時30分~15時40分
- 報告④:ジュワン・ヤン(韓国)
韓国外国語大学校経営学部 助教授
「人口知能に基づく採用:雇用市場の反応に関する予備的研究」 - 15時40分~15時50分
- 報告⑤:シェリル・ルース・ソリアーノ(フィリピン)
デ・ラ・サール大学教養学部コミュニケーション科 教授
「フィリピンのデジタル労働:新たな形態、課題及び政策的示唆」 - 15時50分~16時00分
- 報告⑥:ルーベン・ンー(シンガポール)
シンガポール大学リー・クアンユー公共政策大学院 助教授
「ギグエコノミーにおける大卒フリーランス労働者の疎外化」 - 16時00分~16時10分
- 座長のコメント 高橋 康二 JILPT副主任研究員
- 16時10分~16時20分
- 休憩
セッション2:デジタル化に対応した労働法政策(座長:神吉 知郁子 東京大学大学院准 教授)
- 16時20分~16時30分
- 報告⑦:ティエン・ヤン(中国)
北京大学法科大学院 助教授
「中国における雇用法のデジタル化?」 - 16時30分~16時40分
- 報告⑧:ティエンユー・ワン(中国)
中国社会科学院法学研究所 准教授
「中国におけるインターネット・プラットフォーム労働:その台頭、論争及び政策動向」 - 16時40分~16時50分
- 報告⑨:イク・ファリーダ(インドネシア)
ファリーダ法律事務所 所長
「インドネシアにおける労働法の法的枠組みに関する最近の動向」 - 16時50分~17時00分
- 報告⑩:ソックァン・チェ(韓国)
国立ソウル大学校法学部 助教授
「より良い機会か、拡大した搾取工場か?―韓国におけるデジタル化時代の労働法と政策―」 - 17時00分~17時10分
- 報告⑪:ボーシャン・フー(台湾)
国立台北大学法学部 助教授
「台湾におけるデリバリー・プラットフォーム労働者の権利と利益に関する現代的課題と政府の対応:台湾労働部の2019年ガイダンス及び台北市の2019年条例」 - 17時10分~17時20分
- 座長のコメント 神吉 知郁子 東京大学大学院准教授
総括セッション
- 17時20分~18時00分
- 総括討論(座長:森戸 英幸 慶應義塾大学大学院 教授)
パネリスト:
ステイン・ブロッケ OECD雇用・労働・社会問題局 シニア・エコノミスト
ジュゼッペ・カッサーレ 国際労働法社会保障法学会(ISLSSL)事務局長
荒木尚志 東京大学大学院 教授 - 18時00分
- 閉会
令和3年3月31日掲載