開催報告(中国/Liu Yutong、要約):第1回海外委託調査員連絡会議・国別報告会
雇用流動化時代における労使の課題
(2003年11月19日)

報告者

リュウ・ユートン (Liu Yutong)
中国労働学会 国際部 主任 (Deputy Director, Institute for International Labour Studies of MOLSS)

要約

労働市場の状況

中国における雇用者数は7億3700万人であり、都市部が2億3900万人(33%)、農村部が4億9100万人(67%)となっている。
産業別の労働力構成は1992年から2002年までの10年間に大きく変わった。特に、第2次産業と第3次産業が増加した。ただし、第3次産業は依然として第1次産業の半分のレベルとなっている。

部門ごとの従業員の構成をみると、国、公的部門が少なくなり、逆に民間部門あるいは集団的な部門で働く人が増えている。
失業率は4.2%であるが、これは都市において登録された失業率だけである。問題は失業率ではなくて、農村における不完全雇用である。農村から都市に入ってくる移住労働者が増加している。

中国では、簡単にレイオフをせず、雇用を維持しようとするメンタリティーがあるが、それでもレイオフされた人の数はかなりの数に上っている。

労働者の教育的な背景、学歴をみると、従業員のうち大学卒の比率は非常に低い(6%)。ある国では過度な教育とオーバーエデュケーションということが言われているが、中国の場合はその反対で、技能の開発ということを重視している。高等教育の背景を持った人が非常に少ない状況である。

中国の労働市場の特徴的な点は、新しい労働市場の新規参入者が、毎年、大量に出てきているが、技能訓練が十分ではなく、従業員の9.1%だけが職業技能訓練を受けている状況にある。

中国の職業訓練施策

今後の対策について、スキル開発、技能開発に的を絞って説明する。今後の方針は、経済成長のための助成的、促進的な環境をつくることと労働政策をマクロ経済政策に統合するという方針である。これまで労働政策は孤立的であったが、経済全体、国全体のマクロ経済政策に取り込まれるようになってきた。マクロ経済の政策策定の中で、雇用の創出が呼ばれている。また、支援措置として、ミクロファイナンス、税制でのイニシアチブ、市場アクセス、情報アクセス、サービスなど様々な支援が行われ、起業家になろうとする人への支援を行っている。

我々のところの対策としては、非常に実際的な対策を行っている。

第1は労働力人口が大量に存在していることで、技能開発により労働市場への参入を促している。これは、既に3~4年行っている。

第2は中国職業資格改善制度である。

第3は職業訓練強化プログラムで、従業員として雇用される可能性を高めるという計画である。

第4は1000万人以上の従業員を3年間で訓練する計画を行っており、その財源はかなりの部分が政府から支出されている。具体的なトレーニングプログラムにビジネス・スタートアップ・サポートという制度がある。つまり、起業家を助けることにより、起業家自身の雇用を確保するだけでなく、ほかの人にも雇用を提供することができ、非常に広い範囲で波及効果がある。

第5は的を絞った訓練プログラムの実施である。大量に労働力人口が存在するが、使用者側からみると、才能を持った労働者が確保できない、ということを意味する。そこで我々は農村パイロットプログラムにより、農村と都市のデジタルデバイド、デジタルの格差をなくす努力をしている。第8次開発計画では広大な未開発の、内陸部の西部地域の開発が対象に入っている。