開催報告(中国/Han Bin、要約):第1回海外委託調査員連絡会議・国別報告会
雇用流動化時代における労使の課題
(2003年11月19日)

報告者

韓 斌(Han Bin)
中国企業連合会・中国企業家協会 項目主任 (Project Director, China Enterprise Confederation)

要約

雇用状況の特徴、課題

雇用状況は、

  1. 雇用構造の欠陥と並行して見られる労働力の需給のアンバランス、
  2. 農村の余剰労働力の非農業部門への流出に伴う都市の雇用圧力の増加、
  3. 労働市場への新規参入者と多数の失業者、

と特徴づけられており、今後とも厳しい状況が予想される。また、現在、失業者の多くは高齢であり、単純作業の技能しかなく、失業期間も長いため、その再雇用が焦点となっており、非常に解決の難しい問題である。

労働市場の状況

労働市場への新規参入者総数はピークに達しており、その上、失業者の再雇用があるため、年間求人数は2200~2300万人必要となる。一方、GDPの伸び率を約7%と仮定すると、年間雇用創出は700~800万人となり、1400~1500万件の雇用が不足することになる。このように、労働力の供給が需要を上回っていることが、現下の厳しい労働市場の要因となっている。

労働力需給の構造に目を向けると、一時解雇された多数の従業員がおり、彼らの多くは再雇用の困難に直面している。一方、中国のWTO加盟後の最初の数年間に、一部の地域及び部門において、労働者の技能が求人側の必要条件を満たせない状態にあり、労働力需給のアンバランスが顕在化している。

地理的には、農村地方に1億5000万人の余剰労働力があり、今後、農村経済の再構築に伴い、農村の労働力は非農業部門に流れていくものと考えられる。都市の失業者にとって再雇用は既に非常に困難であることに加え、農村の余剰労働力が都市部に流出すれば、都市の失業者の再雇用は一層困難になると見込まれる。

失業保険受給者は、1998年末の58万人から2003年6月末には441万人に増加しており、企業から一時解雇された従業員を加えると、新規参入者と多数の失業者によって生じる労働力供給の圧力は高まるばかりである。

2003年初頭以降、サービス部門及びその他の労働集約的企業は人員削減を行っており、これが中国の雇用情勢をさらに悪化させている。2003年上期末までに、都市部の登録失業者総数は795万人となった。これは前年よりも62万人、昨年末よりも25万人の増加である。都市部の登録失業率は4.2%であり、これは前年の0.4%増、昨年末よりも0.2%増である。

積極的雇用政策

中国当局は、雇用圧力を軽減し、一時解雇された労働者及び失業者の再雇用を促進するために、2002年9月に全国雇用会議を開催し、雇用が人々の生活に欠かせないものであるという認識を高めるとともに、積極的雇用政策を策定した。その結果、長期雇用促進戦略及び対策が立てられ、雇用は中国における豊かな社会の確立を評価する一つの指標として使用されている。

また、2003年8月、経済情勢とSARSの影響に直面した中国政府は、全国再雇用シンポジウムを開催し、次の5つの戦略を提起した。

  1. 雇用及び再雇用を最優先する。
  2. 経済競争力を高め、多くの雇用を提供できる産業及び企業を奨励する。
  3. 引き続き国営企業改革を進め、余剰労働力を減らすためにさまざまな措置を講じる。
  4. 職業訓練を強化し、起業能力及び労働力の雇用可能性を高める。
  5. 更なるイニシアティブの採用を通じて、国際的労働力交換を開拓することにより、豊富な労働力資源を有利に活用する。

高齢化の影響

高齢化の問題は、出生率の低下と平均寿命が延びたことによるものである。一人っ子政策が、人口動態に対して非常に大きな影響を与えてきた。しかし、中国において大きな課題としてのしかかってくるのは2030年ごろであり、高齢者の割合は2000年には10%だったものが、2010年には11.3%まで増え、2050年には36.9%にまで上昇するといわれている。このように、中国における高齢化はゆっくりと進んでいくため、各国から適切なる方策等について学習をするだけの時間もあると考えている。