開催報告(中国/白 立文):第1回海外委託調査員連絡会議・国別報告会
中国の就業情勢と組合の対応策について
(2003年11月19日)

報告者

白立文(Bai Liwen) / 中華全国総工会国際部

報告内容

1. 就業情勢が厳しい

国家統計局のデータによると、1999年、2000年、2001年、2002年の都市部の登録失業率はそれぞれ、3.1%、3.1%3.6%と4.0%であった。2003年3月末、全国の都市部の登録失業者数は775万人で、失業率は4.1%であり、史上最高を記録した。SARSの影響で、第二、第三四半期の失業率は4.2%に達し、失業者数は793万人に上った。

2003年末9月現在、全国における国有企業の下崗労働者数は310万人である。再就職センターに入った214万人の下崗労働者の中に213万人は労働協議を締結した。センターに入って協議を結んだ人は全部予定日通りに全額基本生活費を受給し、企業が社会保険費を代わりに納めた。現在、北京、天津、遼寧、上海、浙江、福建と広東など7つの省はすでに再就職サービスセンターを閉鎖し、すべての下崗労働者を失業者として扱うことを順調に実現した。これらの省では再就職サービスセンターに入った下崗労働者はすべてセンターを出た。

こうした方策の展開と同時に、長期的な失業グループを形成されるようになってきた。労働部の済南、南昌など十都市の1.5万人に及ぶ下崗失業者に対するアンケート調査によれば、下崗三年以上の比率が50.7%で、一年から三年までのが38.2%である。失業二年以上の比率が28.6%で、一年から二年までのが21.2%を占める。

一方、1998年―2001年までの下崗労働者の再就職率はそれぞれ50%、42%、35%と30%で、2002年になると、更に26.2%に下がった。

全体的には(残存している下崗労働者と失業者を合計すると)、現在都市部の実際の失業率はすでに8%以上になっている。

2.就業政策

  1. 経済成長の上昇をもって、就業へ牽引するマクロ経済政策が実施されている。こうした政策の目的は主に就業総量の拡大を呼びかけ、就業機会を作り上げることである。中国共産党第十六期全国代表大会の報告の中で、就業の増加をマクロ調整の四つの目標の一つとしているのはそのより良い表現である。

  2. 下崗失業者の再就職を重点的に促進することを目的とする支援政策である。こうした政策は主に経済と社会政策の調和をもって、創出した就業機会を就職困難グループの就業の解決に優先的に用いることが目的となっている。

    財政上では、主に社会保険とポスト手当で、企業により多くの下崗失業者の再就職を吸収させるように刺激を与えうる。
    税収面においては、企業が30%の下崗失業者を吸収すれば、免税を与えることになっている。これにより、税収の調整の役割をよりよく発揮することができ、下崗失業者を自主的に多く吸収し、免税政策を享受するように企業に呼びかけている。

    融資面においては、各省、市に相応な下崗失業者の融資保証基金を設置するよう求めている。必要とされる資金は主に同じクラスの政府の財政によって調達され、保証機構は現地の政府によって定められ、下崗失業者が自分の力で職業をつくることに小額融資を提供する。融資額は一般的に約2万元で、融資期限は最長2年間を超さないものとされている。下崗失業者が共同経営、或いは集団で就業した場合に対しては、人数と経営プロジェクトによって融資規模を拡大する。これをもって、下崗失業者の再就職過程での資金不足の困難を解決するようにしている。

    社会政策面においては、上海の“4050”プロジェクトの経験をとりいれ、労働能力と就業希望のある50歳以上の男性と40歳以上の女性、就業困難のある下崗失業者を再就職の主な援助対象とみなし、即時就業の援助など多種類の支援を提供する。政府によって投資・開発した公益部門に年齢の高い就業困難の対象を優先的に手配する。社区の開発した公益部門に元の国有企業の年齢の割合高い労働者(就業困難者を対象)の就業を手配する時には、再び再就職資金から社会保険の手当を与えることができる。

    「事例」再就職を促進する税収の優遇政策を要約すると、主につぎの三種類がある。一、下崗失業者が自分の力で就職し、或いは自主的に創業するよう呼びかけ、支援する税制上の優遇政策。二、下崗失業者を積極的に吸収する企業を励ます優遇税制。三、国有の大中型企業に主管部門と補助部門を分離して余剰人員を配置するよう呼びかけるための税の優遇政策。

    1. 下崗失業者が自分の力で就職し、或いは自主的に創業するよう呼びかけ、支援する税制上の優遇政策。

      下崗失業者が個人経営(国が制限した分野を除く)に従事する場合、3年間営業税を免除する。都市擁護建設税、教育費付加と個人所得税、および税務登録証の費用を免除する。それに2003年1月1日から、国は増加価値税、営業税の徴収水準についても大きく改善した。自分の力で職業を見つけた下崗失業者が3年間の税免除期限が過ぎても、規定した税徴収水準に達しない場合、個人経営の増加価値税、営業税を免除できるようになった。

    2. 下崗失業者を積極的に吸収する企業を励ます優遇税制。

      サービス業、卸売業、加工産業及び街道社区の加工分野の小型企業がより多くの下崗失業者を吸収した場合、それにみあった税の減免の優遇政策をこれらの企業に与える。

      具体的な規定では、2005年の末までに、新しくオープンしたサービス類の企業(国が制限した分野が除外)が採用した下崗失業者を企業従業員総数の30%以上に達した場合、3年間の営業税、都市擁護建設税、教育費付加、企業所得税を免税する優遇を与える。下崗失業者を採用した比率が30%未満の場合、採用した下崗失業者を企業の従業員総数に占める比率によって、企業の所得税を減免する優遇を与える。具体的には、1%毎に失業者の吸収が増加すれば、その1%につき、2%の企業所得税を減免することになる。新しくオープンした卸売りの業務のみを従事する商業卸売企業に対して、同じ規定した条件に基づき、営業税以外の政策の優遇(商業関係の企業が営業税を納めないため)を与えられる。

      現在のサービス企業及び卸売りにだけ従事する商業卸売企業が2005年の末までに、もしその新しく増やしたポストの中で採用した下崗失業者が企業の従業員総数の30%以上に達した場合、3年間に毎年30%の企業所得税の減免を享受する優遇政策がある。卸売業務を兼営する企業、及び労働服務企業の中の加工型企業及び、街道社区にある加工部門の小型企業は2005年の末までには、一人の下崗失業者の再就職を解決するごとに毎年一人当たり2000元づつの基準で企業の所得税を減免し、所得税がその年差し引くのに足りない場合、次の年に引き続き差し引くことができる。ただし、連続差し引くことは二年を超えてはならないこととされている。

    3. 国有の大中型企業に主管部門と補助部門を分離して余剰人員を配置するよう呼びかけるための税の優遇政策。

      以下の四つの条件に適する場合、3年間の企業所得税を免除する優遇措置である。一、元来の企業の付帯事業の資産、遊休資産或いは倒産企業の有効資産を利用する。二、独立清算し、所有権を明確にし、そして次第に所有権主体の多元化を実現させる。三、元の企業の余剰人員を企業の従業者総数の30%以上吸収する。四、配置した余剰人員と新しい労働契約を更新、或いは協定する。

  3. 労働力と就業の需要が合理的にマッチすることを目的とする労働市場政策である。それは主に、就業サービスと職業訓練を通じて労働市場の供給と需要間の合理的な配分を促進することが目的である。現在、各クラスの政府は公共部門の就業サービス制度の設立に力を入れており、就業サービスを改善させ、就業の訓練の度合いを上昇させるようにしている。

  4. 失業減少を目的とするマクロコントロール政策をもっている。それは主に、企業の人員減らしにルールを与え、大企業の余剰人員を再配置するよう誘導することで、社会的失業からの圧力を軽減しようとするものである。2002年に採択された国有大中型企業が基幹部門と補助部門との分離、補助部門の再編成などを通して余剰人員を配置するよう呼び掛けることに関連する方法は、こうした精神を表現していた。

  5. 下崗失業者の基本生活の保障を目的とする社会保障政策である。それは主に、下崗失業者を主とする就業困難グループの社会保障の充実で、例えば予定日通りに下崗労働者の生活費を支給すること、企業による失業、医療保険費の上納などが含まれる。

3.労働組合が就業を促進する原則的な主張と対策

  1. 労働組合が就業と社会保障制度の改革に参加する原則と主張は次の通りである。民主的な政策決定を堅持すべきである。それに加え、それは労働者の生産への積極性と創意性を引き出すのに有利でなければならない。経済効果の向上を中心にし、労働者全体が利益をえられるようにすることを堅持すべきである。労働者の基本生活を保障し、労働者の総合受用能力を越えてはならないことを堅持する。

  2. 労働者の就業権を有効に擁護する。労働組合は出発点から参加し、監督を強化すべきである。労働組合は就業促進と再就職に関する法律法規及び関連政策の制定に参加し、同じクラスの政府の再就職活動の指導機構に参加し、労働者大衆の意思と要求を積極的に反映し、出発点から労働者の労働就業権利を擁護すべきである。現在、法律があってもそれに頼らず、命令があっても実行しないという現象があるが、それに対して、労働組合は法律の実行度合いを拡大させ、そして提訴制度を設立するよう、労働部門に提案する。定期的に検査を行い、問題を見つけたら適時に解決し、下崗労働者の合法的な権益を保証することが目標となる。

  3. 労働組合は又、党と政府に協力して、就業を積極的に促進し、就ボストを安定させ、失業を減少させるべきである。就業権は法律が労働者に与えたもっとも基本的な権利である。労働組合は法律によって労働者の合法的な権益を擁護する。まず、労働者の就業権を擁護し、市場動向型の就業機構の設置と労働市場の育成を推し進める。労働組合は組合組織なりの優位を生かすだけではなく、企業側と協力して、多種類経営の展開、新しい経済成長部門を開拓して余剰労働者を再配置する。そして労働者の就業意識の転換を支援する。

  4. 各種類の“組織して就業”する方法を生かす。長期にわたって、中国の企業の従業員は公有制経済と計画体制の影響で、組織と団体への依存心があり、自分自身が独立して活動する能力が弱い。取り分け、中年、女性、弱体多病、技能のない、家庭の生活難の下崗失業労働者などは、企業、労働組合などの社会団体と街道社区に組織して就業ポストを作り上げることへの願望がとくに強い。各種類の生産によって自分を支援し、生活難の世帯を助ける労働就業の組織を大いに発展し、就業促進を主たる目的とし、経済効果を両立する新しい労働経済組織にさせることが必要である。それは労働者の相互協力の優位性と伝統を生かすほか、また労働者個人の自主創業の積極性を引き出すことができる。

  5. 下崗失業者がパート、臨時、季節、ワークシェアリングなど柔軟な多様な形式を通して再就職を実現するよう呼び掛ける政府の考えを支持する。同時に、下崗失業者がワークシェアリング方法で就業した場合、政府は、その特徴に応じて、労働関係の形式、賃金支給の方式と社会保険などの面での一連の方法を早く制定し、その合法的な権益を保証するよう、労働組合も強く主張している。

  6. 労働組合は労働者、取り分け下崗失業者に知識面の支持を提供し、職業の技能訓練サービスを展開する。訓練の時間面では、彼らの職業を見つけて生活を営む特徴に応じ、できるだけ彼らのご都合の良いときに訓練学習を手配する。訓練の対象と内容では、自営就業者を重点とし、就業を開くための訓練を展開する。青、壮年の人を重点にし、実用技術と職業資格訓練を展開する。従業人員の就業競争能力を増やすため、職業の向上移動と就業の質の向上を実現するために土台を築き上げる。

  7. 労働組合はまた、都市部の社会保障体系を完備化させるために政府側を協力する。中国の社会保障体系の建設は経済の軌道転換と人口高齢化というダブル圧力のもとにおかれ、同時に社会保障水準が低く、社会保険基金が大きく不足し、潜在的な債務が厳しい問題に直面しているため、激しい市場の就業競争の状況の下で労働組合は労働者の目の前の就業権利を保護するほか、更に労働者の長期的な利益を守らなければならない。労働者が退職後、及び病気、失業、労災、生育など労働リスクに遭遇する場合、社会保障制度に恵まれて、必要な社会的な物的補助を得られるようにしなければならない。同時に、労働組合は積極的に社会保障体系の建設に参加すべきである。企業の社会保険費の全額上納を監督する。社会保険基金の監督活動に参加し、基金の価値維持或いは上昇を確保する。条件のある企業に企業年金と企業補充医療保険などの設立を推進する。