基礎情報:EU(2005年)

基礎データ

  • 組織名:欧州連合 (European Union)
  • 人口:4億5,949万人 (2005年1月1日)
  • 実質GDP成長率:1.6% (2005年)
  • GDP:10兆4,182億ユーロ (2004年、PPS)
  • 一人あたりGDP:2万2,600ユーロ (2004年)
  • 労働力人口:2億1,392万人 (2004年)
  • 就業者数:1億9,451万人 (2004年)
  • 失業率:8.7% (2005年)

資料出所:欧州統計局(EUROSTAT)ホームページ

I. 労働関係の主な動き

1. リスボン戦略の再活性化と新雇用ガイドライン

2005年3月の欧州理事会(欧州連合(EU)首脳会議)は、2000年に開始されたEUの経済改革アジェンダ「リスボン戦略」の再活性化に向けた新戦略「成長と雇用のためのパートナーシップ」を採択した。これを受けて、欧州委員会は、4月12日、成長と雇用を促進するための新3カ年計画(2005~2008年)となる「統合ガイドライン」を発表した。新ガイドラインは、欧州の脆弱な経済実績と低調な雇用創出状況を改善するため、マクロ経済、ミクロ経済、雇用の3分野に関する包括的な戦略を盛り込んだ。

加盟国の雇用政策指針となる新雇用ガイドライン(2005~2008年)は、すべての年齢階層が直面する問題に対処するため、1)フル就業、仕事の質と生産性の改善、社会・地域統合の強化に向けた雇用政策の実施、2)生涯を通じた仕事へのアプローチの促進、3)求職者、障害者のための包括的労働市場の整備、4)労働市場の必要に応じたマッチング機能の強化、5)雇用保障を伴う柔軟性の促進と労働市場分割化の是正、6)雇用フレンドリーな賃金・労働費用制度の導入、7)人的資源投資の拡大と改善、8)新たな能力開発の必要性に対応した教育訓練制度の導入――などの8つの指針を設定した。これに基づき、加盟国は、10月までに国別改革計画を策定し、欧州委員会に提出した。

2.2005年のEU社会労働政策

欧州議会は5月10日、「有限責任会社の国境を越えた合併に関する指令」を採択した。同指令は、欧州の2カ国以上で事業展開を行おうとする有限責任の中小企業が、国境を越えた企業合併を行う際の単一の法手続きを定めている。労働者参加の仕組みについては、基本的には、合併会社が設立される加盟国の国内法の規定が適用される。ただし、参加会社のうち少なくとも1社が労働者参加の仕組みを有し、合併会社が労働者参加に関する法制を有しない加盟国において設立される場合には、欧州会社法で定められた交渉手続きが採用される。

欧州委員会は10月20日、企業年金の移動性に関する指令案を発表した。指令案は、EU加盟国や産業を横断して移動する労働者の年金受給権の保護を目的に、1)年金加入権の取得条件、2)休眠中の権利の保護、3)他の年金制度へ移行する可能性――などについて定めている。

欧州委員会はリストラの影響を予測し、管理する能力を改善・強化するための政策策定に取り組み、4月5日に「リストラクチャリングと雇用」に関する報告書を発表した。報告書は、EUの競争力を強化するためには、リストラの社会的コストを最低に抑え、エンプロイヤビリティーの向上や代替的な雇用開発を促進する必要性を強調した。また、リストラへの対応と欧州労使協議会の問題が密接に関連すると指摘し、EU労使団体に対し、リストラの取り扱いと欧州労使協議会の運営に関する好事例収集および普及促進に関する交渉を開始するよう呼びかけた。

10月末のEU非公式首脳会議は、貿易構造の変化に伴うリストラの影響を緩和するための「グローバル化調整基金」の創設を提案するとともに、労働者と企業により魅力的な市場、就業率の向上、質の高い教育などの目標を達成するためには、構造基金、とりわけ社会基金による支援が極めて重要である点を確認した。また、EUが直面する最大の挑戦の1つに人口動態の変化を挙げた。2005年から2030年の間に、65歳以上の人口は52.3%(4000万人)増加し、15~64歳層の人口は6.8%(2080万人)減少する。生産年齢人口に依存して生活する若年者や高齢者の生産年齢人口に対する割合は、2005年の49%から2030年には66%上昇するという。欧州委員会が4月に発表した報告書「人口動態の変化とその影響」は、こうした問題を取り上げ、ワーク・ライフ・バランスや機会均等、移民の管理に関するEUの政策を進展させる必要性を提起した。

欧州委員会は3月、ジェンダー問題に関する情報提供の強化を目的としたジェンダー平等研究所の創設を提案した。民間部門における男女の賃金格差は17%であり、女性の非労働力率は男性よりも高く16%となっている。リスボン戦略の女性の就業率目標を達成する上で、これらの統計数値の改善がきわめて重要な課題となっている。

また、欧州委員会は9月に、2004年5月にEUに新規加盟した中東欧諸の8カ国に対する労働者の自由移動に関する制限措置を、次期(2006年5月~2009年4月)も継続するかどうかを検討する高級グループ会合を組織した。最新の統計では、現在も制限措置を採用していない3加盟国(イギリス、アイルランド、スウェーデン)への中東欧諸国からの労働力の流入は予想されたよりも少なく、3カ国の労働市場への影響はむしろ肯定的という結果が示された。旧加盟国は、4月末までに次期3年間の経過措置を決定し、欧州委員会に通知する。

Ⅲ.リファレンスリスト

  • 欧州委員会ホームページ
  • 欧州労使関係観測所オンライン(EIRO)

参考:

  1. 1ユーロ=145.39円(※みずほ銀行ホームページ2006年6月22日現在のレート参考)

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