基礎情報:台湾(2004年)
基礎データ
- 国名:台湾(Taiwan)
- 人口: 2,260万4,550人(2003年)
- 経済成長率:5.71%(2004年)
- GDP:10兆7269億800万台湾ドル(2004年)
- 労働力人口:1,024万人(2004年)
- 失業率:4.44%(2004年)
資料出所:台湾行政院予算会計統計委員会統計、台湾行政院経済部統計
2004年の動向
2004年の台湾経済は、米国とアジアにおける経済が堅調であったことをうけ、2003年上期におけるイラク戦争やSARS(非典型ウィルス)の影響による景気後退を克服して、7.17%の高い経済成長を達成し、前年比1.66%の大幅な成長を成し遂げた。
特に2004年は、第4期において実質国民総生産額が前年同期比3.25%増加、対外貿易において輸出が3.41%、輸入が10.33%とそれぞれ増加し、大幅な経済成長が実現された。また、同年第四期には、民間固定投資と個人消費の拡大により実質国内需要も前年比で7.26%増加している。このように対外貿易と工業生産の持続的発展を背景に、2004年の年間を通じた実質国民総生産額は5.71%、実質国内需要は6.35%という数字を記録することができた。
5月の総統選挙では、2000年に着任した陳水偏総統が対抗候補に僅差で勝利し、再選された。再選政権は、中台の「両岸関係」など対外的な政治問題を抱える一方、高齢少子化問題、失業問題や高度技術を有する人材の不足、労働市場におけるミスマッチの解消、外国人労働者の受入れなど就業の問題、さらに貧富の格差、不安定な経済運営など多様な国内問題を抱えており、今後どのように解決していくのか内外の関心は高い。
そういった中、就業問題に関しては、「公共建設拡大計画」や「公共サービス拡大就業計画」が引き続き推進されたことで、失業は改善されている。就業者数は978万6000人増加し、2003年と比較して21万3000人が増えたことになり、これは、過去12年間で最高水準にあたる。
台湾における過去6年間の就業者の構成の推移は表1のとおりである。
1984年 | 1989年 | 1994年 | 1999年 | 2003年 | 2004年 | |
---|---|---|---|---|---|---|
総数(単位:%) | 100.00 | 100.00 | 100.00 | 100.00 | 100.00 | 100.00 |
男性 | 64.00 | 62.45 | 61.65 | 59.51 | 58.29 | 58.07 |
女性 | 36.00 | 37.55 | 38.35 | 40.49 | 41.71 | 41.93 |
年齢階級(単位:%) | 100.00 | 100.00 | 100.00 | 100.00 | 100.00 | 100.00 |
15歳から24歳まで | 21.76 | 17.02 | 13.94 | 12.40 | 10.52 | 10.04 |
25歳から44歳まで | 52.95 | 57.78 | 61.90 | 60.46 | 59.45 | 58.97 |
45歳から64歳まで | 24.15 | 23.68 | 22.63 | 25.59 | 28.37 | 29.37 |
65歳以上 | 1.14 | 1.52 | 1.53 | 1.55 | 1.66 | 1.61 |
教育程度(単位:%) | 100.00 | 100.00 | 100.00 | 100.00 | 100.00 | 100.00 |
国中以下 | 64.31 | 56.32 | 49.00 | 38.83 | 32.21 | 30.85 |
高中(職) | 23.62 | 28.65 | 32.31 | 35.16 | 36.42 | 36.67 |
大専以上 | 12.07 | 15.03 | 18.69 | 26.01 | 31.37 | 32.47 |
業種別 | 100.00 | 100.00 | 100.00 | 100.00 | 100.00 | 100.00 |
農業 | 17.22 | 12.50 | 10.95 | 8.38 | 7.30 | 6.64 |
工業 | 41.91 | 42.65 | 39.70 | 37.28 | 34.84 | 35.16 |
サービス業 | 40.87 | 44.85 | 49.35 | 54.34 | 57.86 | 58.20 |
職業別(単位:千人) | ||||||
ホワイトカラー | 1700 | 2243 | 2926 | 3569 | 3839 | 4016 |
ブルーカラー | 3122 | 3545 | 3551 | 3357 | 3184 | 3265 |
職業地位(単位:%) | ||||||
雇用主 | 3.99 | 4.64 | 5.28 | 5.44 | 5.19 | 5.26 |
自営業者 | 21.40 | 18.99 | 17.37 | 16.31 | 15.62 | 14.87 |
無報酬家族従業員 | 10.14 | 8.64 | 8.60 | 7.85 | 7.21 | 7.01 |
被用者 | 64.46 | 67.73 | 68.75 | 70.41 | 71.98 | 72.86 |
政府 | 12.12 | 11.27 | 11.12 | 10.27 | 10.18 | 10.27 |
民間 | 52.35 | 56.46 | 57.63 | 60.13 | 61.81 | 62.59 |
資料出所:人的資源調査統計年報(2004年)
2004年の雇用失業情勢と過去5年間の推移は、表2、3にまとめられる通りである。そのうち、2004年の就業概況について以下に紹介したい。
まず、労働力人口は1024万人、前年との比較で16万4000人増加している。うち就業者数は978万6000人、失業者数は45万4000人で失業率は、4.4%であった。労働力率は、男性が67.8%、女性が47.71%で平均57.66%で2003年と比較して0.32%上昇している。ただし年齢別に見た場合、12歳から24歳までの層と65歳以上の層の労働力率がそれぞれ0.39%と0.36%と減少しており、特に若年者層の労働力率の減少については懸念されるが、2004年5月政府発表の「人材活用調査」によると、これは高学歴化により就学年限が延びたことに起因していると分析されている。
年度 | 15歳以上民間人口(千人) | 労働力(千人) | 非労働力人口(千人) | 労働力率(%) | 失業者(千人) | ||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
合計 | 就業者 | 失業者 | 平均 | 男 | 女 | 平均 | 男 | 女 | |||
2000年 | 16963 | 9784 | 9491 | 293 | 7178 | 57.68 | 69.42 | 46.02 | 2.99 | 3.36 | 2.44 |
2001年 | 17179 | 9832 | 9383 | 450 | 7347 | 57.23 | 68.47 | 46.10 | 4.57 | 5.16 | 3.71 |
2002年 | 17387 | 9969 | 9454 | 515 | 7417 | 57.34 | 68.22 | 46.59 | 5.17 | 5.91 | 4.10 |
2003年 | 17572 | 10076 | 9573 | 503 | 7495 | 57.34 | 67.69 | 47.14 | 4.99 | 5.51 | 4.25 |
2004年 | 17760 | 10240 | 9786 | 454 | 7520 | 57.66 | 67.78 | 47.71 | 4.44 | 4.83 | 3.89 |
資料出所:人的資源調査統計年報(2004年)
年別 | 合計 | 15~24歳 | 25~44歳 | 45~64歳 | 65歳以上 |
---|---|---|---|---|---|
2000年 | 57.68 | 36.28 | 79.60 | 59.80 | 7.71 |
2001年 | 57.23 | 35.47 | 79.71 | 59.13 | 7.39 |
2002年 | 57.34 | 35.29 | 79.97 | 59.04 | 7.79 |
2003年 | 57.34 | 33.91 | 80.34 | 59.58 | 7.78 |
2004年 | 57.66 | 33.52 | 81.25 | 59.96 | 7.42 |
資料出所:人的資源調査統計年報(2004年)
同調査によると、2004年の就業状況の特徴としては次のことが指摘される。
まず、長期的にみて緩やかではあるが、女性の労働市場への参加率が高まっている。1984年には38.74%であったが、2004年には47.84%に増加している。特に若い女性と学歴の高い既婚女性と6歳未満の子を持つ女性については、20年間にそれぞれ18.49%、16.81%と大幅な増加の傾向が見られる。また、6歳以上の子を持つ女性についても10年間で6.37%の増加を示している。15歳以上の人口のうち、仕事をする能力を有し、仕事をしたいと希望しているが、何らかの原因でまだ仕事を見つけていない者の数は554万3000人であり、20年前と比較すると10%減少している。これは、高齢人口の増加により仕事をする能力を有する者の比率が減少したことによるものと分析される。一方、就職を希望する労働者は38万8000人おり、仕事をする能力を有する労働者の7.01%である。
また、2004年5月同調査における就業者976万4000人のうち、男性は566万9000人で58.07%、女性は409万4000人で41.93%であった。女性就業者と大学卒業以上就業者が増加する傾向が特徴として指摘される。またホワイトカラー労働者は401万6000人で、前年との比較で17万7000人、4.6%増加している。ホワイトカラーの数は、過去20年間をみると毎年平均4.39%増加している。また、2004年の週当たり労働時間は平均45.14時間であった。週当たり労働時間が40時間以下の就業者であるパートタイム労働者は、景気の変動により左右されるが、就業者全体に占める割合が5%~10%であった。
就業者の入職状況については、2003年1年間では男性23万人、女性23万6000人の46万6000人、全就業者中割合4.78%の者が職を得ることが出来た。サービス業での就職比率が高く67.12%を占めている。就職の機会は、「広告などを見て」か「知り合いからの紹介」を通じて得ており、それぞれ41.24%、35.27%と多数を占めている。転職経験者は66万2000人で全就業者の中で6.78%を占める。転職の理由が自己都合による者は46万5000人で転職経験者の70.21%であるが、その中でさらに転職したいと思っている者が11万4000人いる。自己都合以外の離職者は、14万7000人で22.15%、そのうち工場の閉鎖など業務縮小により転職を余儀なくされた者が14.49%の9万6000人いる。転職経験者は88.71%が転職回数1回のみで、3回以上の転職を繰り返す者はわずか3.32%であることがわかった。過去1年間の転職者の動向をみると、不動産業等が19.35%と最も多く、ついで文化・レジャーサービス業が15%と続く。最も移動の激しい業種は、ホテル・レストラン業で過去1年間に1万1000人が移動している。
毎週労働時間が40時間未満で労働時間の延長を希望する者は全就業者のうち3.56%で、過去3年間は4%台であったことから比較して、2004年においては労働時間の延長を好まない傾向がでてきていることが明らかである。
仕事を変わりたいと思っている者の割合も増えてきている。2004年5月調査では平均在職期間は8年4カ月であった。求職者のなかで仕事を変わりたいと思っている者は61.44%、すでに求職活動を行っている者は29.29%である。
失業状況について、2004年5月の失業状況は45万人、そのうち男性が28万8000人で63.97%をしめ、女性は16万2000人で36.03%を占めている。失業者が職業を探す場合、73.69%の者が「求人広告を見る」、60.72%の者が「知り合いの紹介」で職探しを行っている。年齢が若いほど「求人広告」の利用率が高い。また、初めて職探しを行った失業者は、37万8千人であった。業種別にみた離職者については製造業が最も多く、12万2000人。職業別では生産ラインのオペレーションを行う者が最も多く17万7000人であったが、その82.39%以上の者が同様の職業に再び就きたいと希望している。失業者全体の51.44%にあたる23万2000人が仕事の機会に恵まれたが、これは前年と比較すると8.82%の増加で、景気回復により雇用機会が増加したことが理由として分析される。
一方、未だに職に就かない者については、半数以上が「待遇がよくない」ことがその原因としている。さらに職を見つけることが困難な者については、その理由は「年齢制限により就職できない」が33.31%、「仕事が合わない」が24.96%、「技術を持っていないため」が23.05%であった。2004年5月の失業者の平均失業期間は29.5週となっており、失業期間が1年以上の長期失業者は8億3000人、全体失業者の18.34%に及んでいる。長期失業の理由は、主に「年齢制限により就職できない」と「技術をもっていない」が上げられる。
以上が労働市場における主な動きであるが、労働分野におけるその他の動きとして2004年は、グローバル化進展のもとさらに国際競争力を獲得していくための方策がさまざまに検討された年であった。
法制度に関していうと、2004年は、9月に労働基準法の改正が行われたほか、雇用、社会保障、外国人労働者や福利厚生など労働各分野の関連法規の整備が進められた。具体的には、雇用サービスの強化、職業紹介サービスに関する仲介業者の許可、雇用保障基金の活用、民間職業紹介の料金などに関する雇用関連法令のほか、労働年金法(新定年制度)、外国人労働者の労働許可に関する規定や海外職業紹介サービスへの規定、保育施設への補助金に関する規定などが整備された。労働年金法については、6月30日に総統により公布され、2005年7月1日から実施されることになるが、制度の具体的管理体制などをめぐり現在調整が行われている。
外国人労働者問題に関しては、台湾は送出国であると同時に受入国でもあることから、受入れ国としての国内制度の運用整備に力が注がれた。1978年以来、タイ、フィリピン、インドネシア、マレーシア、ベトナムと協定を結び人材仲介機構を通じて外国人労働者の受け入れを行ってきたが、2004年には新たにモンゴルを加え、6カ国から外国人労働者を受け入れている。6カ国のうち、ベトナムとインドネシアからの労働者の失踪が多く、社会問題となっている。そういった中、インドネシアからの受け入れについては、2年4カ月に渡り凍結してきた経緯がある。政府は、インドネシア側の改善努力を認め、2004年12月に凍結の解除を発表した。一方、ベトナムに関しては失踪が後を絶たないことから、2004年末をもって状況が改善されない場合、台湾政府は凍結の姿勢であることをベトナム側に伝えている。
労使関係については、2004年12月末時点で、産業別組合が1109組織、組合員数59万3907名、職業別組合は3,024組織、組合員数は230万7704名であった。労働争議の処理件数は、2005年1月から3月の期間で発生案件が3028件で前年より819件増加している。争議参加人数は8,366名で前年同期に比べ1984名増加している。争議の原因は、「契約」に関することが1463件と最も多く、「賃金」が1295件、「労災」が227件、「退職」が121件と続く。
台湾経済は2005年も国際経済の緩やかな成長の影響をうけ、輸出の拡大が期待され、実質GDPは現段階で4.21%成長が期待されている。そういった景気の好調を背景としつつ、内閣にあたる行政院は、2004年に「行政院組織法修正案」「機能と組織の調整に関する暫定法」「中央行政組織統制基本法」の3つの行政組織再編に関する法案を承認した。この法案は立法院でも承認され、2006年1月1日から新体制に移行することになる。今回の法案承認により行政院は13の省庁と委員会もしくは審議会に再編されることになり、「労働・人的資源部会」の設置が検討されている。
出所:
- 行政院予算会計統計委員会「人的資源調査統計年報(2004年)」
- 行政院予算会計統計委員会「人力運用調査報告(2004年)」
- Directorate General of Budget, Accounting and Statistics Executive Yuan、"Statistical Yearbook 2004"
- 行政院労工委員会ホームページ「労働に関する法律と規定」
- 行政院経済部ホームページ
- 労働政策研究機構ホームページ「海外労働情報(台湾)」2004年4月から12月等。
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