大規模労働争議が33件発生
 ―2023年、労働統計局集計

カテゴリー:労使関係労働条件・就業環境統計

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米労働統計局(BLS)は2月21日、2023年に1,000人以上が参加する大規模なストライキ等の労働争議が33件発生したと発表した。前年の23件から10件増加し、2001年以降で最も多い。争議の参加者数は約45万8,900人で、前年を33万人以上上回った。

2001年以降で最多

BLSが集計する「大規模労働争議」には労働組合によるストライキのほか、経営側のロックアウトによる作業停止を含み、統計上両者を区別していない。また、ストライキあるいはロックアウトにより作業停止を行った人数が1,000人以上規模の争議のみをカウントし、小規模のストライキ等は含まない。

2023年の大規模労働争議の発生件数は33件で、前年の23件から10件増加した(注1)。400件を超えていた1950年代、70年代に比べると少ないが、2001年以降では最も多い(図表1図表2)。短期的に見ると、コロナ禍で落ち込んだ2020年以降は増加が続く。過去20年間(2004~23年)の平均件数は16.7件となった。

図表1:米国における大規模労働争議の発生件数と参加人数(1947-2023年)
画像:図表1

出所:連邦労働省労働統計局ウェブサイトより作成

図表2:米国における大規模労働争議の発生件数と参加人数(2000-23年)
画像:図表2

出所:連邦労働省労働統計局ウェブサイトより作成

「教育・医療サービス」で大規模争議

大規模労働争議の参加者数は約45万8,900人で前年の12万600人から4倍近く増加した。業種別に見ると、サービス業が約39万7,700人と86.7%を占め、このうち「教育・医療サービス部門」が約18万8,900人を数えた。「情報サービス部門」が約17万1,500人で続いている。

「教育・医療サービス」関係では、医療機関大手カイザーパーマネンテ社の医療従事者らによるストライキが2023年10月4~7日にカリフォルニア、コロラド、オレゴン、バージニア、ワシントンの各州とワシントンD.C.で発生した。カイザーパーマネンテ労働組合連合(Coalition of Kaiser Permanente Unions、=国際サービス従業員労組(SEIU)、国際事務職・専門職従業員労組(OPEIU)、国際専門職・技術職連盟(IFPTE)の各支部労組で構成)の組合員約7万5,600人が人手不足の職場環境の改善、賃金の引き上げなどを求めてストライキを実施した(注2)。現地メディアは、全米の医療従事者で過去最大規模のストライキだと報じている。

このほか、ロサンゼルス統一学区の教職員らが賃上げを求め、3月21~23日にストライキを行った。国際サービス従業員労組の支部(SEIU Local 99)が組織する約3万人に加え、ロサンゼルス統一教師労組(United Teachers Los Angeles)の約3万5,000人が連帯してストライキに参加している(注3)

なお、全米でとりわけ注目された自動車大手3社(ビッグ3、デトロイト3)での全米自動車労組(UAW)によるストライキはカリフォルニア州やイリノイ州、ミシガン州など23州で行われ、9月15日~10月30日に約4万9,800人が参加した(注4)。また、ハリウッドの脚本家組合(WGA)と俳優組合・全米テレビ・ラジオ芸術家連盟(SAG-AFTRA)によるストライキは、前者が5月2日~9月24日に約1万1,500人、後者は7月14日~11月8日に約16万人が参加している(注5)

「労働損失日数」は1,000万日台に

2023年における労働損失日数は1,667万3,000日にのぼった。争議参加人員の増加を反映し、前年の219万4,500日をはるかに超え、2000年(2,041万9,400日)以来の多さとなり、1,000万日台に乗せている(図表3)。 

図表3:米国における労働損失日数(1947-23年)
画像:図表3

出所:連邦労働省労働統計局ウェブサイトより作成

小規模を含む争議は470件にも

米コーネル大学産業・労使関係研究所(ILR)はインターネットやソーシャルメディア、ニュース記事、各種データベースなどの情報を収集・確認・分析し、1,000人未満規模を含む労働争議の統計をとっている。

それよると、2023年の労働争議(作業停止)発生件数は470件(ストライキ466件、ロックアウト4件)で前年の433件(ストライキ426件、ロックアウト7件)から37件増加した(注6)。争議参加人員は約53万9,000人で、前年の約22万4,000人から約2.5倍の増加を記録した。上述の4つのストライキの参加者が約65%を占めている。

ストライキの総日数は2,487万4,522日にのぼった。労働者の要求内容としては、「賃金」(266件)、「健康・安全」(138件)、「スタッフの増員」(113件)がトップ3となっている。

参考資料

  • コーネル大学産業・労使関係研究所、ニューヨークタイムズ、ブルームバーグ通信、連邦労働省

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