2023年の労組組織率は横ばい、労働運動は活性化の傾向

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米労働統計局(BLS)が1月23日に発表した2023年の労働組合の労働者組織率は10.0%で、前年の10.1%とほぼ同水準だった。労働組合員数は約1,440万人と前年から10万人ほど増加したが、雇用者数の増加が上回った。一方、全米労働関係委員会(NLRB)によると、労働組合結成に向けた従業員投票の申請や不当労働行為の救済申立件数は増加している。また、国民の7割程度が労働組合を支持しているという世論調査の結果が出ており、労組への支持の高さを背景に、労働運動が活性化する傾向もみてとれる。

40年前の組織率が半減

米国の労働組合組織率は1983年に20.1%だったが、2023年は10.0%となり、この40年間で半減する形になった(図表1)(注1)。労働組合員数は1,442万4,000人と2年連続で増加したが、雇用者数の増加(2023年は前年から286万8,000人増)に追いつかず、組織率は低下した。組合員数は1983年の1,771万7,000人から約330万人減少している。

図表1:米国の労働組合組織率と労働組合員数 (単位=左軸:%、右軸:千人)
画像:図表1

出所:連邦労働省労働統計局ウェブサイト

民間部門の組織率は6.0%で前年と変わらず、公共部門は32.5%で前年から0.6ポイント低下した。フルタイム労働者の組織率は10.9%(前年比0.1ポイント低下)、パートタイム労働者は5.2%(同0.3ポイント低下)だった。

なお、米国では「排他的交渉代表制度」により、各職場で認証された労働組合が、組合員であるかどうかを問わず、全ての労働者を代表して使用者と交渉する。合意した労働協約はその職場の全労働者に適用される。こうした労働組合が代表する非組合員を含む「組織率」は11.2%(前年から0.1ポイント低下)、対象者数は1,619万3,000人(同19万1,000人増加)となっている。

「従業員投票申請」「不当労働行為救済申立」とも増加

全国労働関係委員会(NLRB)によると、2023会計年度(2022年10月~2023年9月)における労働組合結成のための従業員投票申請件数(注2)は2,594件で、前年度の2,511件から83件増加した(図表2)(注3)

NLRBへの不当労働行為の救済申立件数は1万9,869件で、前年度から1,871件増えており、コロナ禍前の2019年度の水準(1万8,552件)を上回った。

図表2:NLRBへの従業員投票申請件数と不当労働行為救済申立件数の推移
画像:図表2

出所:全国労働関係委員会(NLRB)ウェブサイト

約7割が労働組合を支持

ギャラップ社が2023年8月30日に発表した世論調査の結果によると(注4)、労働組合を支持する(approve)人の割合は前年の71%から67%へと低下した。ただし、半数以下に落ち込んだ2009年以降は上昇傾向にあり、依然として米国人の三分の二が労働組合を支持している。

図表3:労働組合支持率の推移(2001~23年)
画像:図表3

出所:ギャラップ社ウェブサイト

米国では2023年に自動車大手三社(ビッグ3)の従業員やハリウッドの脚本家・俳優などの労働組合によるストライキが国民の関心を集めた(注5)。ギャラップ社の調査はこれらストライキに至った労働争議に対して、労働者側と使用者側のどちらにより共感(Sympathize)するかをたずねた(図表4)。調査は2023年8月1日~23日に実施したもので、自動車大手3社において全米自動車労組(UAW)がストライキに突入した9月15日より前、ハリウッドの脚本家と俳優らの労組がストライキ中(それぞれ5月2日、7月14日からストライキを開始)の時期にあたる。調査結果によると、いずれも労働者側への支持が約7割にのぼり、それぞれの労働争議でこうした支持者の声が、労働者側の主張の実現を後押ししたことがうかがえる。

図表4:2023年の主要労働争議における労使の支持率 (単位:%)
  労働者側に共感 経営者側に共感 どちらにも共感 どちらにも共感しない 意見なし
自動車争議 75 19 1 2 3
脚本家争議 72 19 1 5 3
俳優争議 67 24 1 7 2

出所:ギャラップ社ウェブサイト

参考資料

  • ギャラップ社、全国労働関係委員会、ブルームバーグ通信、連邦労働省(労働統計局)、各ウェブサイト

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