7%の賃上げ要求を掲げて格差是正を進める/UAゼンセンの2027闘争方針素案

2026年11月6日 調査部

繊維・衣料や食品、流通などの業界の労組が加盟する国内最大産別のUAゼンセン(永島智子会長、196万1,000人)は10月27日、2027年の「労働条件闘争方針(素案)」を記者発表した。正社員組合員の賃金引き上げでは、「体系維持分に加え賃上げ分として4%、賃金体系が維持されていない組合は総合計で6%を基準に賃金を引き上げることを基本とする」目標を掲げた。そのうえで、賃金水準がUAゼンセンの定める最低ラインの「ミニマム水準」未達や水準不明の組合については、「格差是正分を加え、総合計で7%、要求額として2万円で賃金を引き上げる」ことも明記した。短時間(パートタイム)組合員の要求水準は、「制度昇給分に加え、時間額を70円、5%で引き上げる」とし、制度昇給分が明確でない場合は「制度昇給分を含めて時間額を90円、7%で引き上げる」ことを目指す。

1%以上の実質賃金の上昇を社会全体に定着させる

素案は、2027労働条件闘争の基本姿勢として、①経済全体の持続的成長と実質賃金上昇の定着に向けて、すべての働く者の1%以上の実質賃金引き上げを実現する②働く者の安心を礎に、人への投資と多様な人材の活躍促進を図り、企業の持続的成長を実現する③3月内に闘争を集中し、共闘を強化して交渉力を高めていく――3点を掲げた。

実質賃金の引き上げについては、「これまで賃上げの社会的流れをけん引することで、加盟組合のみならず社会全体の賃金水準向上に大きな役割を果たしてきた」一方で、「物価上昇が継続するなか、特に中小組合においては、2022年以降の物価上昇分が賃金引き上げに十分反映されておらず、業種間・企業規模間・雇用形態間で賃金格差が拡大している」などと指摘して、1%以上の実質賃金の上昇を社会全体に定着させる必要性を強調。また、企業が、人口減少や労働力不足、生成AIをはじめとする技術革新の進展などといった環境変化に対応しながら持続的な成長を実現するためには、「人への投資を強化し、一人ひとりが能力を発揮できる環境を整備することが不可欠」だとして、労使協議体制の充実を図って諸課題を労使で共有することで、「企業の持続的成長と働く者の安心の両立をめざす」方向性も示した。

さらに素案は、「この数年間の闘争を通じて、賃上げを実現し、その成果を社会全体へ波及させるためには、産業別統一闘争と共闘の強化が不可欠であることが改めて明らかになった」などとして、「より高い相場形成に向けて3月内交渉への集中を一層促進する」ことも記載した。

平均賃上げ要求はベア4%、定昇含め6%

賃金闘争に関する要求の考え方としては、①組合員全体の賃金を底上げし、1%以上の実質賃金上昇を定着させる②個別賃金引き上げにより規模間格差是正を推進する③短時間組合員の賃上げを加速する④全組合員への物価上昇分以上の配分を基本とする――4点を示した。

要求基準をみると、正社員(フルタイム)組合員については、「平均賃金引き上げを基本」に据えたうえで、今次闘争から新たに「賃金水準把握および賃金体系維持を前提に環境が整う部会・単組は個別賃金引き上げに取り組む」方針を打ち出した。

平均賃金引き上げ方式では、定期昇給制度が確立されているなど賃金体系が維持されている組合は、「体系維持分に加え賃上げ分として4%、賃金体系が維持されていない組合は総合計で6%を基準に賃金を引き上げることを基本とする」とした。いずれも前年と同水準。

ミニマム基準未達組合は2万円の賃上げ目標も

また、UAゼンセンでは、正社員組合員の賃金水準の判定として「目標」「到達」「ミニマム」の3つの水準を定めており、このうち「ミニマム水準」(高卒35歳・勤続17年および大卒30歳・勤続8年:27万5,000円)未達もしくは水準不明の場合は、「格差是正分を加え、総合計で7%、要求額として2万円で賃金を引き上げる」ことも明記した。UAゼンセンの説明によると、2026年は加盟組合の72.7%がミニマム水準に達していないか水準不明だったという。素案はこうした状況を勘案し、賃上げの数値目標を2026闘争方針の「格差是正分として1%程度を加えて賃金を引き上げる」といった表記から「7%」と明示する形に変更。あわせて、要求額も2万円の賃上げ目標を掲げた。賃金体系が維持されている組合は、「賃上げ分として5%程度、要求額として体系維持分に加え1万5,500円に達するよう積極的に取り組む」。既にミニマム水準を超えている場合は、「部門ごとに実質賃金の向上と格差是正の必要性を踏まえ要求基準を設定する」とした。

なお、「到達水準」(高卒35歳・勤続17年:29万円、大卒30歳・勤続8年:29万5,000円)以上の組合の場合は、「部門の決定にもとづき、要求基準のうち、一定部分については総合的な労働条件の改善として要求できるものとする」とし、「具体的な対応については本部と部門で確認を行う」としている。

「中小組合、短時間組合員は『7%』を掲げて賃金闘争を展開する」(西尾書記長)

正社員の賃金引き上げ要求基準について、西尾多聞書記長は「UAゼンセンは中小規模の労働組合の集まりであり、賃上げの高さは社会水準に少し後れを取っている」ことを指摘して、「これを改善するために、格差是正にしっかりと取り組んでいきたい」と訴えた。さらに、「UAゼンセンの加盟組合の約70%は300人未満の組合であり、組合員に目を向ければ短時間組合員が61.8%を占めている」状態にも触れ、「これらの組合、そして短時間組合員については『7%』という数字を掲げて賃金闘争を展開していきたい」などと述べ、27闘争で社会的な賃上げの流れをけん引することで格差是正を進める考えを強調した。

目指すべき賃金水準を2032年に18%程度引き上げる中期目標を新たに設定

素案はまた、「足元の実質賃金は上昇している一方で、業種間・規模間の格差が開いている傾向があり、平均賃上げ方式を繰り返すだけでは格差は埋めることができない」(髙橋義和労働条件局長)として、27闘争からはこれまでの平均賃金引き上げに加え、個別賃金引き上げも取り入れていくことも提起した。賃金体系維持分を確保したうえで、ポイント賃金の銘柄・水準に基づく賃金の引き上げを目指す考え。

具体的には、目指すべき賃金水準を2032年に18%程度引き上げる「目標」「到達」「ミニマム」の3つの中期賃金水準目標を新たに設定した。18%は、「賃金・経済・物価の巡航軌道のベースライン(物価2%、実質賃金1%以上)に『人への投資』や技術革新・国内投資などを加速することの押上げ要素を加味して総合勘案した」としている。

そのうえで、2027闘争では、ミニマム水準未達の組合は、ミニマム水準への到達を目指し、「高卒35歳・勤続17年」「大卒30歳・勤続8年」ともに要求額として1万6,000円に達するよう取り組む。ミニマム水準を超える場合は、「部門ごとの要求基準に基づき賃金を引き上げる」。

個別賃上げ方式への移行に取り組みながら格差是正を進める

平均賃上げ方式を基本に据えたうえで個別賃上げ方式にも取り組むことについて、髙橋労働条件局長は、UAゼンセンの7割が中小組合で、賃金水準を把握できていない組合が多い実態のなかで、「一気に個別賃上げ方式に移行するのは難しい」と説明。「環境が整う組合は個別賃上げ方式に移行し、まだ賃金水準の把握ができていない組合は引き続き平均賃上げ方式を活用しながら賃金実態を確認することで土壌をつくっていく」と述べ、個別賃上げ方式への移行に取り組みながら、格差是正を進めていく考えを示した。

短時間組合員では制度昇給がある場合は5%、ない場合は7%基準で引き上げ

一方、全組合員の6割超を占める短時間(パートタイム)組合員の要求基準については、「制度昇給分に加え、時間額を70円、5%で引き上げる」とし、制度昇給分が明確でない場合は「制度昇給分を含めて時間額を90円、7%で引き上げる」ことを目指す。いずれも率は前年と同水準だが、額では5円プラスとなっている。また、「経験年数5年程度で時間額が1,500円程度となるよう昇給昇格制度の整備と人材育成を行う」ことも盛り込んでいる。

企業内最低賃金の要求基準は月額22万円、時間額1,350円以上に

企業内最低賃金の要求基準では、「法定の地域別最低賃金を1割以上上回ることを原則」とし、月額は前年より7,000円高い22万円、時間額は同50円増の1,350円以上に設定した。そのうえで、「地域別には地域別最低賃金、消費者物価の地域差を勘案して算出した金額以上とする」ことや、「各部門において時間額1,500円を2020年代中に達成するための計画を策定する」こと、「法定最低賃金遵守とともに社会的な引き上げを促進するために月額設定の場合も時間額表示を行い、必ず協定書を交わす」ことなども加筆。必要な場合は、地域別最低賃金の引き上げにあわせて秋にも交渉を行うこととしている。

そのほか、2027年度採用者の初任賃金要求基準も「高卒22万円基準(都道府県別に定める企業内最低賃金要求基準以上)、大卒26万円基準」に設定し、この「基準を上回る場合は、平均賃金引き上げと均衡ある引き上げを行う」とした。基準額は2026闘争方針に比べ、高卒は7,000円、大卒で1万円高い水準を提起している。

一時金は年間5カ月を基準に各部門で決定

2027年期末一時金闘争の要求基準は、2026闘争方針と同様に「年間5カ月を基準に各部門で決定する」考え。金額は「社会水準が160万円程度であることを意識し、最低でも100万円以上を確保する」とした。なお、業績連動型を採用している場合は、算式を労使合意事項として毎年点検・確認することとしたうえで、「算定基礎賃金の4カ月分を季節賃金として最低限確保し、過去の実績や中期経営計画などを踏まえ、業績に応じた変動部分は0~2カ月分程度、標準的な業績の場合に5カ月分程度(年間4~6カ月程度)となるよう」算式を設計する。

一方、短時間(パートタイム)組合員については「少なくとも年間2カ月以上とし各部門で決定する。正社員(フルタイム)組合員と同視すべき短時間組合員は、正社員組合員と同じ要求とする」とした。

労働時間の短縮・改善では、総実労働時間について、年間1,800時間の目標と1,900時間の中間目標を据え置きつつも、「達成時期を前倒しし、2020年代中の実現をめざして取り組む」構え。年次有給休暇については完全取得を目指すとともに、1年につき少なくとも7日間の連続休暇を設定することなどを掲げている。

総合的な労働条件の改善に向けた労使協議体制の整備・充実も

素案は今次闘争で、総合的な労働条件の改善に向けて、労使協議体制の整備・充実を図ることも提示した。「経営環境の変化に対応するため、経営情報や職場課題を共有する労使協議体制を整備・充実するとともに、企業価値向上、人材資本投資、生産性向上などの経営課題について労使で認識を共有し、持続的な成長と賃上げにつなげる」。また、「DX推進、生産性向上、人材育成、安全衛生をはじめ、キャリア形成支援、多様な人材の活躍推進、働き方改革などの課題について労使で協議し、企業の持続的成長と働く者の安心の実現をめざす」などとしている。

2027闘争方針は、11月9日に開く「UAゼンセン2027政策フォーラム」で、素案を基に議論をスタート。その後、地域や業種ごとに討議を進め、12月8日の中央執行委員会で執行部案を固めたうえで、来年1月19日の中央委員会で正式決定する。