持続可能な交通運輸・観光サービス産業の実現を/交運労協定期総会

2026年10月14日 調査部

交通運輸関係の産業別労組で構成する交運労協(池之谷潤議長、56万5,000人)は10月7日、都内で定期総会を開催。「国民生活と経済活動を支えるため、持続可能で活力のある交通運輸・観光サービス産業を実現しよう!」のスローガンを掲げ、向こう1年間の活動方針を確認した。活動方針は、持続可能な地域公共交通の実現と交通空白の解消や、物流産業を取り巻く取引環境の整備、観光サービス産業の担い手不足などの課題への取り組みの方向性を提示。26春闘の総括では、「前年を上回る賃上げや満額回答、過去最高の妥結額などを勝ち取ることができ、人材確保に向けた賃上げと価格転嫁の推進の重要性を労使で一定確認することができた」と評価した。27春闘でも引き続き、賃上げの流れを継続させていく必要性を訴えている。

活動方針は、政策課題の実現に向けた取り組みとして、①地域公共交通確保と「交通空白」解消②持続可能な物流の確立③人材の確保・育成・定着④ライドシェア新法制定反対と日本版ライドシェア⑤自動車自動運転およびAI導入⑥カスタマーハラスメント防止⑦観光立国推進――の7つの柱を掲げている。

全国2,700カ所超の「交通空白」の解消を

地域公共交通確保と「交通空白」解消について、活動方針は、長期的な利用者の減少に伴う交通事業者の経営悪化や路線の減便・廃止、深刻化する担い手不足に加え、地方公共団体でも交通計画の策定・実践に係る人材・ノウハウ不足が課題になっていることを指摘。政府が策定する交通に関する施策の中期計画となる「第3次交通政策基本計画」(計画期間:2025~2030年度)を活かして、交通分野の課題解消に取り組む考えを示した。具体的には、「今次計画の実行にあたり、全国892市区町村2,740カ所(2026年6月現在)の『交通空白』の解消に向けた集中対策期間(2025~2027年度)の先も見据え、目の前の『交通空白』への対応と、将来にわたって『交通空白』を生み出さない体制を全国に波及させるため、その原資となる人手不足対策のさらなる強化を求める」などとしている。

トラック適正化二法と取適法を活かした取り組みを推進

2つ目の持続可能な物流の確立に向けては、昨年6月の通常国会で成立した「貨物自動車運送事業法改正法および貨物自動車運送事業適正化推進法(トラック適正化二法)」の活用を進める構え。活動方針は、貨物自動車運送事業法の主な改正事項が、①許可の更新制度の導入②「適正原価」を下回る運賃・料金の制限③委託次数の制限④違法な「白トラ」に係る荷主等の取り締まり――などとなっていることを明記したうえで、「なかでも、法改正のキーワードとなっているのが、『労働者の適切な処遇の確保』。許可の基準および更新の際には、『労働者の適切な処遇の確保』が準用されるとともに、その具体策として示されたのが『適正原価』」などとして、今年7月以降、「適正原価の設定に向けた有識者検討会」で議論が進められている適正原価について、「早期に設定がなされ、荷主との間で適正取引が進められるよう求めていく」としている。

また、今年1月に下請法の改正により「中小受託取引適正化法(取適法)」が施行されたことについても、「同法には『特定運送委託』が規制対象として盛り込まれ、不当な買いたたきの防止や適正な価格転嫁に向けた法的枠組みが一層強化された」ことを「大きな前進」だと評価。今後、法施行を「切り札として掲げながら、適正取引環境の改善を図る」などの考え方を打ち出している。

政府が物流施策の指針として策定する「総合物流施策大綱(2026年度~2030年度)」では、2030年に想定される輸送力不足への対応として大綱が示した「省庁ごとのKPIの達成状況を把握する」とともに、「検討会が示した『持続可能な物流サービスの提供に向けたサプライチェーン全体の担い手確保・処遇改善』の目標達成に向けた対応していく」。

賃金・労働条件の向上が担い手確保の第一義的な解決策に

人材の確保・育成・定着に関しては、交通運輸・観光サービス産業で働く人が「社会に不可欠なキーワーカーであるにもかかわらず、産業は人手不足に苦しみ担い手を確保することが困難な状況にある」ことを指摘したうえで、「その第一義的な解決策は、賃金・労働条件の向上であり、その原資となる価格転嫁の推進と運賃・料金制度の見直し」だと説いている。

トラックドライバーについては、前述の取適法の内容を活かして、「荷主に対し、『協議を適切に行わない代金額の決定の禁止』を周知徹底させることにより、低価格での運賃の据え置き等を一掃する必要がある」ことなどを指摘。港湾労働者も、「取引環境の改善策を真に実効性のあるものとするために、『協議を適切に行わない代金額の決定の禁止』の周知徹底および運賃・料金の届け出に際する厳格な審査と監査の実施」を求める。

運賃が総括原価方式に基づく認可制に置かれている鉄道・バス・タクシーなどの公共交通では、「人件費の算定方法など運賃・料金制度の柔軟な見直しを図る」必要性を記載。さらに、鉄道運賃・料金制度の残された課題として「通学定期券の割引制度」にも踏み込み、「通学定期の割引分は事業者にとって大きな負担となっており、家計負担への配慮いう社会政策として実施されている以上、割引分については文教予算など公費負担とすべき」だと主張している。

また、国土交通省が促進を図るとしている「モビリティ・パートナーシップ・プログラム(事業者・産業・自治体の壁を越えた連携・協働)」にも触れ、「既存のリソースをフル活用(輸送資源の総動員)することにより、深刻な人材不足に対応していくということだが、人材不足問題の根本的解決には迫力不足と言わざるを得ない」としたうえで、「私たちが求めているのは、その場しのぎの対処療法策ではなく、産業の持続可能性を担保しうる人材確保に向けた支援策」だとして、初任給の引き上げや賃上げ原資に対する助成などの国によるさらなる支援の必要性を訴えている。

ライドシェアや自動運転、カスハラへの対応も

このほか、活動方針は、ライドシェア新法の制定反対と日本版ライドシェア(自家用車活用事業)への対応や、バス・タクシー自動運転の社会実装に向けた①技術面②環境整備③社会デザイン④社会的受容性――の未解決課題の克服、カスタマーハラスメント対策について事業主の雇用管理上の措置義務とされた改正労働施策総合推進法を踏まえた実効性ある施策の展開、今年3月に閣議決定された「第5次観光立国推進基本計画」の実行にあたっての課題の解消などの取り組みに力を注ぐ考えも打ち出している。

労働条件の向上こそが持続可能な産業の人材確保に不可欠

一方、活動方針は「労働条件改善」の取り組みも柱立てしている。交運労協は26春闘の賃上げ要求で、「交通運輸・観光サービス産業における深刻な人材不足の現状を踏まえ、賃上げをはじめとする労働条件の向上こそが持続可能な産業の基盤たる人材確保にとって不可欠」なことを基本スタンスにあげたうえで、「すべての構成組織は、定期昇給および定期昇給相当分(一人平均基本給の2%)を確保」することを前提に、「実質賃金の向上と産業間格差の是正を図る観点から、賃上げ要求は、6%以上とする」とした。

さらに、「離職防止や採用競争力強化を念頭に置いた中期的な視点に立ち、『手当偏重の賃金体系』を改善し、基本給を主軸に据えた賃金制度の確立」を求めることとし、ミニマム賃金水準として、「30歳:20万100円」「35歳:27万6,200円」「40歳:29万9,300円」「45歳:32万5,600円」「50歳:37万4,400円」も明示して、「賃金水準の絶対値」にこだわる考え方も提示。26春闘を「賃金の流れを止めず、社会に必要不可欠な交通運輸・観光サービス産業の持続的成長を担保しうる人材確保に向けた闘い」と位置付けて、①産業の基盤たる人材の確保②拡大する産業間格差の是正③物価高騰に対する実質賃金向上④賃上げの原資となる価格転嫁の推進⑤産業間の規模間格差の是正――の5つの視点で取り組みを進めた。

なお、賃金制度に関しては、①賃金制度が未整備の組合については、現行の賃金水準を基本とした定期昇給制度の確立を図る②歩合制度が採用されている自動車運転業務においては、各運転者の労働時間に応じ、各人の通常賃金の6割以上の賃金保障を求める――としている。

27春闘でも他産業に劣後することのない賃金・労働条件の獲得を

活動方針は、こうした対応を踏まえた26春闘の総括として「熾烈な人材獲得競争を背景に、前年を上回る賃上げや満額回答、過去最高の妥結額などを勝ち取ることができた。このことは、人材確保に向けた賃上げと価格転嫁の推進の重要性を労使で一定確認することができた証左だ」と評価。27春闘でも「引き続き、他産業に劣後することのない賃金・労働条件を獲得するために、運賃・料金制度の見直しや法改正等の成果を活かしながら、賃上げの流れを継続させていく必要がある」と主張している。

なお、総会では、交通産業については「全国2,700カ所を超える『交通空白』の解消とともに、将来に亘って空白地を生み出さない地域づくりを、全国に波及させることが必要」「運輸産業においては、これまで荷主優位にあった取引環境や、トラックドライバーの処遇を改善するため、大綱の実現性を高める」「観光サービス産業においては、宿泊業における顕著な担い手不足、空港の受入環境、二次交通不足などの課題や、空港アクセスの充実、地方誘客、手ぶら観光など、様々な施策の推進が必要」などと各産業の課題を列記したうえで、「これら各産業の持続可能性を実現するためには、それぞれの現場を支える『人材の確保・育成・定着』が最も重要」などとする総会宣言を確認した。

役員改選では、池之谷議長(私鉄総連)と蒔田純司事務局長(運輸労連)が再任された。