「物価上昇分を上回る賃上げを獲得」と評価も「1%程度の実質賃金上昇までには至らなかった」などと2026闘争を総括
/UAゼンセンの定期大会
2026年10月7日 調査部
わが国最大の産業別労働組合であるUAゼンセン(永島智子会長、196万1,000人)は9月9、10の両日、都内で定期大会を開催し、「2026労働条件闘争のまとめ」を確認するとともに、「2027~2028年度運動方針」を決定した。昨年に続き、正社員組合員の賃上げ獲得額(制度昇給・ベア等込み)で過去最高を更新した最終結果について、闘争のまとめは、「前年に引き続き物価上昇分を上回る賃上げを獲得できた」と評価しつつも、目標とした「1%程度の実質賃金上昇までには至らなかった」などと総括した。永島会長は、すべての加盟組合に、賃金水準や賃金体系維持原資の確認、3月内決着に向けた交渉スケジュールの前倒しをあらためて訴えた。
半数近くの組合が妥結総合計率で前年結果を上回る
UAゼンセンは2026労働条件闘争で、賃金については、制度昇給等で賃金体系が維持されている組合では、賃金体系維持分に加えて4%基準(総合計で6%基準)、維持されていない組合は6%に、格差是正分として1%程度を加えて賃金を引き上げることを方針とした。
定期大会報告書に盛り込まれた「2026労働条件闘争の取り組み」(6月末時点)によると、正社員(フルタイム)組合員の妥結集計(加重平均)では、総合計の引き上げ額は1万5,000円以上(1万5,031円・4.75%)となり、「率では2年連続前年を下回ったが、妥結額はUAゼンセン結成以降最高水準」となった。
「賃金引き上げ分(ベアなど)」の引き上げ額は1万1,064円・3.39%で、総務省統計局が公表した2025年度平均の「物価上昇率2.6%を上回る」としている。また、2026年の妥結総合計率が前年を上回る組合は、48.6%と半数近くにのぼっている。
部門別にみると、引き上げ率(総合計)は、「総合サービス部門」が4.95%で最も高く、次いで「製造産業部門」が4.90%、「流通部門」が4.60%となっている。
規模別にみると、「300人未満」の引き上げ率(総合計)は4.21%で、「300人以上」(4.83%)を下回っている。
短時間(パートタイム)組合員については、引き上げ率(総合計)は加重平均で6.20%となり、前年同時期比、前年同組合比ともにプラスで、2012年の「UAゼンセン結成以降最高水準」となっている。パート・正社員とも妥結している組合では、74%の組合でパートタイマーの妥結率が正社員を上回るとともに、6月末時点では11年連続でパートタイマーの妥結率が正社員を上回った。
短時間組合員の妥結結果は「雇用形態間の格差是正が継続して進展」と評価
闘争のまとめは、正社員組合員の妥結結果について、総合計の妥結額がUAゼンセン結成以降最高水準となったことや、部門別では製造産業部門と総合サービス部門が約5%の妥結となるなど、「UAゼンセン全体としては、前年に引き続き物価上昇分を上回る賃上げを獲得できた」とする一方で、「1%程度の実質賃金上昇までには至らなかった」と記した。
短時間組合員の妥結結果については、「正社員よりも高い要求基準を掲げて取り組んだ結果、妥結総合計率で6%以上と前年を上回り、11年連続で正社員組合員を上回るなど、雇用形態間の格差是正が継続して進展した」と評価した。
妥結時期については、3月内決着を目指して取り組む組合が一定数増えたことを評価しつつも、「4月以降に交渉を行うとした組合は依然として多い」と指摘。「3月内に決着した組合と、4月以降に交渉を行っている組合とでは、妥結結果に大きな差がある。特に、5月以降に交渉を行っている組合は、同組合比較で率・額ともに前年を下回っている」としている。
また、300人未満の組合の妥結率が前年に比べて上昇したものの、妥結率そのものは300人以上を下回っている点について、「中小組合の多くは依然として4月以降に交渉を行う傾向が強く、特に本年度は、中東情勢の不透明感などもあり、交渉が後になるほど妥結結果が低くなるなど、中小組合を取り巻く交渉環境は厳しかった」と分析している。
次年度に向けては、中小組合の賃金水準底上げのために、賃金水準の把握や賃金体系維持の確立、3月内交渉、共闘による交渉推進を強化することや、2月中旬から下旬にかけての要求確認の徹底や闘争日程の確認など、早期に闘争を行う組合グループに対する働きかけ強化に取り組むことを示した。
7月末時点での妥結集約状況でも、正社員・短時間組合員の賃上げ額は過去最高水準に
なお、UAゼンセンは、9月3日に開いた記者会見で、7月末時点での妥結集約状況を公表している。それによると、正社員組合員の総合計の引き上げ額は加重平均で1万4,870円・4.72%となり、前年同時期(1万4,387円・4.75%)と比べて483円上回っている。
「賃金引き上げ分(ベアなど)」の引き上げ額は、1万897円・3.34%で、前年同時期(1万375円・3.30%)と比べて522円上回る。「総合計」および「賃金引き上げ分(ベアなど)」の引き上げ額については、6月末時点に引き続き、ともに過去最高の水準となっている。
正社員組合員について妥結した1,429組合中、満額(満額以上含む)回答を得たのは104組合となった。また、前年と比較できる1,380組合について、前年と比べた増減額・率の状況をみると、加重平均で「総合計」が381円増、率が0.06ポイント減、「賃金引き上げ分(ベアなど)」が706円増、率は0.11ポイント増となっている。
正社員組合員の妥結状況を部門別にみると、引き上げ率(総合計)は、「製造産業部門」が4.89%で最も高く、次いで「総合サービス部門」が4.83%、「流通部門」が4.59%となっている。規模別にみると、引き上げ率(総合計)は、「300人以上」が4.81%で、前年同時期(4.87%)より0.06ポイント減、「300人未満」が4.16%で、前年同時期(4.05%)より0.11ポイント増となっている。
短時間組合員の妥結状況をみると、「総合計」(時給)での引き上げは、加重平均で72.9円(6.14%)と、前年同時期の66.4円(5.78%)と比べ、額は6円以上上回り、率は0.36ポイント増となっている。引き上げ額・率はともに、UAゼンセン結成以降の最高水準となっている。
「賃上げ環境の整備や適正な価格転嫁の促進に今後も取り組む」(永島会長)
大会のあいさつで、永島会長は、賃上げの最終妥結結果を評価する一方、「しかしながら、『生活が良くなったという実感が乏しい』という声もある。まだ十分とは言えない」と指摘。また、連合の最終集計での賃上げ率(5.01%)を3年連続で下回る結果となったことや、妥結時期が5月以降になった加盟組合で厳しい結果がみられたことを示しながら、「賃上げ環境の整備や適正な価格転嫁の促進には、今後も産別として取り組む」と強調するとともに、すべての加盟組合に対して、「賃金水準の確認」「賃金体系維持原資の確認」「3月内決着に向けた交渉スケジュールの前倒し」をあらためて要請した。
また、永島会長は「私たちが目指しているのは一時的な賃上げではない。『同一価値労働同一賃金』を基本とし、働きがいを実感できる処遇を実現することだ」と強調。「そのためには企業ごとの成果にとどまらず、産業全体の労働価値を高める社会的・構造的賃上げの実現が不可欠だ」と述べて、企業内最低賃金協定の集約や特定最低賃金の新設・強化を通じて、組織の有無を問わず働く人々に成果が及ぶ仕組みづくりを進めていくと宣言した。
次期運動方針では、リーダー教育や職場課題の把握と政策化などに重点
大会ではまた、「2027~2028年度運動方針」を決定。方針は、昨年の第14回定期大会において確認した新たな中期ビジョンを実践する第一歩の2年間と位置づけ、「中期ビジョンの実現にあたっては、『力と政策』を活動の基軸とし、その実効性を高める」ため、重点運動として、①リーダー教育②職場課題の把握と政策化③組合民主主義の実践――の3点を掲げている。
1つめのリーダー教育では、理念と価値観を共有して、主体的な担い手として助け合い、励まし合い、高め合い、求心力を高めていく場として、すべての加盟組合で「リーダー教育」を実施することを目標とし、具体的には、すべての加盟組合役員が新任役員研修会を受講することや、機関会議において適宜学習の機会を設けることなどを提示している。
2つめの職場課題の把握と政策化では、職場の課題とは「職場の組合員のオルグによって見出すもの」であり、「その課題の解決策が労働組合の政策であり、その実現のために組合員が一丸となって行動する」との目標を掲げる。具体的には、加盟組合役員がすべての職場をオルグすることや、本部・支部が連携して非専従・少人数・広域組織の支援オルグを行うことなどを明記している。
3つめの組合民主主義の実践では、社会に対する影響力があることを自覚して組合民主主義、およびその基盤となるコンプライアンスを徹底することを目標に掲げ、具体的には「UAゼンセン行動基準」の周知・徹底や、UAゼンセンの意思を社会に発信することなどを示した。
なお、中期ビジョンは、一人ひとりが人間らしく心豊かに生きることのできる持続可能な社会の実現を目指し、今後6年間に取り組むべき課題を社会的課題と組織的課題に整理。社会的課題としては、「職業人生の長期化」「エッセンシャルワーカーの労働条件改善」「雇用形態間格差の解消」「だれもが能力を発揮できる環境づくり」を掲げ、組織課題としては、「組織拡大と強化」「企業の枠組みを超えて組合員を支える仕組みの構築」「組合民主主義の深化」「民主的労働運動の拡大・発展」を位置づけ、その解決に向けた取り組みを推進することとしている。
運動の推進体制として、4つの活動分野と本部の体制を整理
運動を推進する体制として、方針は、活動分野を設定するとともに、役割分担・組織の姿を提示している。具体的には、まず、役割の明確化、活動の重点化、一体感のある組織運営を目指して、活動分野を「組織」「政策」「企画」「管理」の4つに整理。また、それらの分野ごとに各部署の役割を整理・明確化するために、本部体制に、環境の変化を捉えて運動・活動をつくる役割の「局」、特定の活動を維持する機能の「センター」、特定の機能を作り上げる役割の「室」を設置する。
「組織」の分野は、求心力の高い同盟体の核として運動を牽引する役割を担い、加盟組合の状況把握や活動支援、助け合いの風土の醸成を行う。本部には「組織拡大局」や「組織強化局」、「中央教育センター」などを設置する。
「政策」の分野では、職場オルグを通じて把握した職場の課題を解決に導く道筋を示す役割を担い、組織内で議論を経た政策を社会へ発信したり、労働・社会と産業・業種・地域などさまざまな視点で政策立案につなげて実現をはかる。本部には「政策政治局」や「労働条件局」、「政策サポートセンター」を設置する。
「企画」の分野では、機関会議運営を中心に企画・管理し、外郭団体やマスコミなどとの連携により運動の外部発信・世論喚起を行い、組織の付加価値を高める役割とすること、そのための横断的な課題や業務への調整・事務局機能も担う。本部には「企画局」や「戦略局」、「国際労働運動センター」、「情報・DX推進室」を設置する。
「管理」の分野では、組織継続性・専門性を高めるための多様な人材活用の仕組みの導入や書記局の人材確保と育成、多様な働き方を支える制度の導入をはかること、UAゼンセンのインフラ整備(整理)を企画・推進する役割を担う。本部には「財政局」や「総務・人財局」、「資産管理室」などを設置する。
また、本部には、ビジョン進捗管理、政治戦略、多様性戦略、情報システム戦略といった、UAゼンセン全体で取り組むべき横断的テーマを担う「戦略事務局」も設置する。
本部以外の役割として、部門については産業政策や労働条件向上の実現に向けた企画と対策、都道府県支部については地域での加盟組合の支援と、UAゼンセン運動の浸透と実践を担うこととし、「両者の連携のもと、現場の近いところから課題解決を進める」としている。
健全な組織運営のためのガバナンスの強化などを強調/永島会長
組織拡大の取り組みについて、永島会長は、「組織が大きくなるということは、働く仲間の声を社会に届ける力が大きくなり、仲間を守る力が強くなるということ。同時に、その力に見合う責任を負うことでもある」と指摘。目先の課題だけでなく、先の未来を見据えた運動を推進していくため、健全な組織運営が不可欠であり、「ガバナンスを強化し、仲間からも社会からも信頼される産業別労働組合を目指す」と語った。
運動方針に関する質疑では、組織強化、北朝鮮拉致被害に関する運動、「UAゼンセン行動基準」、消費税への対応などについて質問や意見が出た。総合サービス部門に所属するタクシーの労働組合は、労働組合員が年々減少していることから、同じく連合傘下の交通労連との「統合を考えてはどうか」と発言。答弁した本部の担当者は、「チャンスがあれば、同業種の仲間を増やしていきたいと本当に切に願っている」と述べたうえで、タクシー労働者の拡大に向けて、「複数の産別があるなかで、UAゼンセンのやり方がその企業労使に合うということであれば、来ていただくことはありだろう」「無理やり組織の取り合いをするようなことはしないが、UAゼンセンに来たいという仲間があれば、きちんと仁義も切ったうえで進めていきたい。そうした組織化等の仲間づくりの情報があれば、ぜひ教えてほしい」などと話した。


