物価上昇を超える回答額を高く評価するも業況間の差は如実に表れる結果に/基幹労連の定期中間大会
2026年9月18日 調査部
鉄鋼、造船重機、非鉄などの業界の労働組合を束ねる基幹労連(津村正男委員長、27万2,000人)は9月10、11の両日、広島県広島市で定期中間大会を開催し、「AP26春季取り組みの評価と課題」を確認するとともに、第13期後半年活動方針を決定した。AP26春季取り組みでは、賃金改善の平均回答額が1万1,773円となり、昨年、一昨年に引き続き、物価上昇を超える獲得額となった。あいさつした津村委員長は「最後まで結果にこだわり取り組んだことによる成果」と評価。一方、総合重工や非鉄総合の組合は満額かそれ以上の額を獲得したのに対し、鉄鋼総合の組合は要求を下回る回答となったことから、「業況間の差が如実に反映される結果となった」と述べた。
賃金改善は1万5,000円を統一要求水準に設定
基幹労連では、春の労使交渉について、「AP(アクティブプラン)春季取り組み」と呼んでおり、2年間を1サイクルとして考える「2年サイクル」方式をとっている。1年目は「総合改善年度」と位置づけ、労働条件全般の改善に取り組み、賃上げについては基本的に2年分の賃上げを交渉・協議する。2年目は「個別改善年度」と位置づけ、「年間一時金」や、総合組合とグループ・関連組合間の「格差改善」などを主なテーマとして取り組む。
AP26は「総合改善年度」にあたるが、賃金改善については、物価上昇が継続していることや、先行き不透明な経済情勢をふまえて、2年分の賃上げについて取り組むのではなく、2026年度・2027年度それぞれ単年度で取り組む方針とした。
AP26方針は、賃金改善について、上部団体・金属労協他産別の動向等もふまえ、AP25と同様に「1万5,000円」を統一要求水準に掲げた。加えて、統一水準を上回る要求が可能な部門・部会を抑えるべきではないとの考え方から、部門・部会のまとまりのもと、柔軟な水準設定を相互に認め合う方針とし、全体水準の引き上げを図った。
各部門の具体的な要求は、「鉄鋼部門」と「非鉄部門」が1万5,000円、「船重部門」は1万6,000円、「建設部門」と「独立部門」は基幹労連方針をふまえ1万5,000円を基本として取り組み、交渉単位組合284組合のうち、282組合が要求を行った。
回答額の平均は1万1,773円
回答結果をみると、280組合(賃金改善要求組合の99.3%)が、回答なし・回答見送り以外の「前進回答」を引き出し、回答額の平均は1万1,773円となった。
前進回答を得た280組合のうち、1万5,000円を超える回答が103組合、1万5,000円未満が178組合、継続協議は1組合となった。前進回答280組合のうち、格差改善分を除いた賃金改善の回答が要求額を超えたのは17組合、満額回答は74組合で、要求額以上を獲得した割合は31.4%となった。
最後まで結果にこだわり取り組んだことによる成果と評価
「AP26春季取り組みの評価と課題」は、「昨年、一昨年に引き続き、物価上昇を超える獲得額となったことは、継続した『人への投資』の必要性について粘り強く主張し、最後まで結果にこだわり取り組んだことによる成果と受け止める」と評価した。
大手組合の回答をみると、「総合重工」部会では、三菱重工等の6組合が満額獲得となり、三井E&Sは要求超えの1万7,000円(賃金等処遇改善を含む)で妥結した。「非鉄総合」部会では、三菱マテリアル、住友金属鉱山が満額回答となり、JX金属では1万6,000円、DOWAでは1万7,000円、三井金属では2万33円と、要求超えの回答となった。
一方、「鉄鋼総合」部会では、中国による鉄鋼の過剰生産などによる業績の低調が響き、日本製鉄が1万円、JFEスチールが7,000円、神戸製鋼が1万3,000円と要求額を下回る回答額で妥結するなど、業況間の差が顕著に表れる結果となった。
「300~999人」規模の回答額が全体平均を上回る
中小を中心とする業種別組合の回答額の平均は1万1,162円となった。規模別にみると、「1,000人以上」で1万1,261円、「300~999人」で1万2,410円、「299人以下」で1万500円となった。
AP25と比べ、回答額が低下したものの、「300~999人」では産別全体の平均回答額(1万1,773円)を上回る結果となった。「評価と課題」は、「加盟組合の粘り強い交渉が奏効し、人材の確保・定着という観点から経営の理解を得られたことで、必要な『人への投資』を行う、という経営の英断を引き出した結果であると受け止める」とした。
業種別組合の部門別の賃金改善総額平均をみると、「鉄鋼部門」が1万31円、「船重部門」が1万3,470円、「非鉄部門」が1万4,336円、「建設部門」が1万5,988円、「独立部門」が9,066円となった。
賃金改善に集中するために労働諸条件の改善要求を見送った単組も
「評価と課題」は、これらの結果について、「成果にこだわって取り組んだ結果」と評価する一方、「限られた原資を賃金改善に集中せざるを得ないなかで、人材の確保・定着のために改善をはかりたい賃金以外の労働諸条件について、職場のニーズはあるものの要求自体を断念した、もしくは要求したが回答を得られなかったという組合もあった」と指摘。
そのうえで、全体を通して、「置かれた厳しい環境のなかで、最後の最後までの粘り強い交渉によって、組合員の生活の安心・安定への一定の配慮と、今後の協力・努力への期待等を込めた回答が示されたものと受け止める」と総括した。
年間一時金の回答額の平均は148万8,265円
賃金以外の結果をみると、年間一時金では、174組合が要求・交渉した(業績連動は106組合)。回答を受けた組合の平均額は148万8,265円で、187組合が4カ月以上を確保。そのうち、5カ月以上を確保したのが117組合だった。
ワーク・ライフ・バランス実現では、132組合が要求し、132組合で回答を受け、95組合が前進回答(前進回答率72.0%)を引き出した。回答内容をみると、「育児・看護・介護」(26組合)、「積立年休日数増」(23組合)、「年休取得促進」(12組合)、「永年勤続休暇(リフレッシュ休暇)」(13組合)、「不妊治療」(5組合)などとなっている。
労働時間・休日・休暇では、年間所定労働時間1,800時間台や年間休日125日以上の実現に向けて取り組み、時短・休日増では133組合が要求し、137組合で回答を受け、66組合(前進回答率48.2%)が前進回答を引き出した。年休付与については、86組合が要求し、87組合で回答を受け、36組合(前進回答率41.4%)を引き出した。
時間単位年休を要求する組合は「増加傾向にある」
半日・時間単位年休の新設・拡充については、42組合が要求し、42組合で回答を受け、30組合が前進回答(前進回答率71.4%)を引き出した。報告を行った基幹労連の前田悠士事務局次長は、時間単位年休を要求する組合は「増加傾向にある」と話した。「評価と課題」は、「ワーク・ライフ・バランスの推進ならびに優秀な人材の確保・定着に資する取り組みとして、会社が理解を示したものと受け止める」とした。
3月中の回答引き出し率が例年に比べ低下
取り組みの進め方に対する評価について、「評価と課題」は、要求提出や交渉日程について言及した。
AP26では、2月6日を集中要求提出日とし、以降の要求提出ゾーンを2月6日~20日までに設定し、業種別部会ごとに提出の集中化をはかった。集中回答指定日は金属労協の集中回答指定日である3月18日としたうえで、3月18日~25日を回答指定ゾーンに設定して、まとまりをもった引き出しに向けて取り組んだ。しかし、結果をみると、AP26の3月中の回答引き出し率は156組合(58.2%)にとどまり、AP16からAP25までの10年間の回答引き出し率の平均(62.9%)に比べ、約5ポイント低下した。
その要因について「評価と課題」は、「2月中の要求提出組合が例年より少なかったこと、また集中回答指定日が例年より遅く、その後の対応への期間が短かったこと等が影響したと考えられる」とし、「例年より集中要求提出日から集中回答日までの交渉期間が長かったことにより、取り組みの集中度合いに濃淡が生じたことも否めない」と分析した。
賃金改善の公表額の扱いを課題にあげる
今後の課題について、「評価と課題」は、AP27春季取り組みで「個別改善年度」の位置付けのなかで取り組むこととなる賃金改善額について、「個社ごとに平均賃金など基準となる賃金水準が異なっていることもあって、賃金改善の要求水準に対する根拠の構築が難しくなってきているなか、取り組み方針の納得性を高めるとともに、賃金改善の要求水準の考え方について、慎重に検討していく必要がある」とした。
また、「物価上昇局面における賃上げに世の中の注目が集まるなかで、賃金改善の公表額の扱いが課題」だと指摘。「連合や金属労協、他産別では総額平均や率表記を公表しているのに対し、基幹労連は賃金改善分(ベア分)のみを示しているため、公表値の比較において相対的に低く見えてしまう懸念がある。こうしたことから、これまでの経緯を踏まえつつ、公表額のあり方について今後検討していく必要がある」と提起した。
取り組みの進め方については、3月中の回答引き出しにより、4月から春季取り組み結果を反映し組合員の生活の安定につなげていくことから、「2月中の要求提出をめざすとともに、回答の集中化をはかり3月中の回答引き出しに努める必要がある」とした。
2030年8月までに組織拡大目標人数1万人の達成を目指す
第13期後半年活動方針については、特別重点活動に、2028年7月に予定される第28回参議院議員選挙に基幹労連組織内候補予定者として推薦を決定している村田きょうこ氏の「参議院議員の再選に向けた取り組み」を据えた。このほか、重点項目には、安全衛生活動の取り組みや組織強化と組織拡大の取り組みなどを掲げた。
安全衛生活動の取り組みでは、死亡災害に歯止めがかからない状況が続いている現状をふまえ、安全衛生に関する情報や法改正の動向などの情報発信を強化していくことを、従来からの取り組みに追加した。
組織拡大の取り組みでは、2030年8月までの5年間で組織拡大目標人数1万人の達成に向け、「組織拡大強化期間」を設定した。企業内グループ内の関係会社の組織化・産別加盟、60歳以降の再雇用者の組合員籍の継続、直接雇用の非正規雇用従業員の組織化等に取り組むとしている。
組合員に占める女性比率は12.9%と過去5年間であまり変わらず
活動経過報告の冊子では、中央本部加盟組合256組合を対象に2025年10月~2026年1月に実施した「基幹労連第13回男女共同参画に関する実態調査結果」を掲載しており、2021年~2025年までの5年間の男女共同参画の取り組み状況等を紹介している(回答率93.0%)。
それによると、2025年の組合員の女性比率は12.9%。過去5年間でみると、2021年は12.0%、2022年は12.1%、2023年は12.3%、2024年は12.6%、2025年は12.9%で、12%台で推移している。
企業連・単組本部における女性役員比率をみると、委員長、副委員長、書記長等をあわせた「執行部計」が4.6%、「会計監査」が17.8%、「職場の委員等」が10.7%となった。このうち「執行部計」の割合を過去5年間でみると、2021年は3.4%、2022年は3.3%、2023年は4.2%、2024年は4.4%、2025年は4.6%となっている。
単組・支部における執行部等の女性役員比率は8.8%
単組・支部における女性役員比率をみると、「執行部計」が8.8%、「会計監査」が23.5%、「職場の委員等」が9.7%となった。このうち「執行部計」の割合を過去5年間でみると、2021年は5.9%、2022年は6.4%、2023年は6.1%、2024年は6.5%、2025年は8.8%と推移しており、5年前の2021年に比べ約3ポイント上昇している。
運動方針・活動方針への男女共同参画推進について「記載した」組合の割合は69.7%で、「記載していない」の割合は30.3%だった。「記載した」組合の割合を過去5年間でみると、2021年は63.6%、2022年は63.5%、2023年は60.4%、2024年は73.3%、2025年69.7%となり、昨年度より割合が低くなっているものの、概ね60%台で推移している。
「記載していない」理由についてみると、「女性組合員が少ないから」(65.3%)が突出して高く、次いで、「男女共同参画が充分に進んでおり、記載の必要がないから」(12.5%)、「女性組合員がいないから」(8.3%)などと続いた。
男女共同参画推進について大会等でトップリーダーからの呼びかけを「行った」組合の割合は62.6%で、「行っていない」の割合は37.4%だった。「行った」割合について過去5年間でみると、2021年は47.7%、2022年は51.9%、2023年は55.3%、2024年は64.2%、2025年は62.6%となり、5年前の2021年から約15ポイント上昇している。
呼びかけを行っていない理由のトップは「女性組合員が少ないから」
呼びかけを「行っていない」理由をみると、「女性組合員が少ないから」(62.9%)が突出して高く、次いで「男女共同参画が充分に進んでおり、呼びかけの必要がないから」(11.2%)、「女性組合員がいないから」(10.1%)などと続いた。
調査結果では今後の課題について、「依然として女性組合員比率には届いておらず、さらなる取り組みが求められる」とし、「『女性組合員が少ない・いない』ことを理由に、取り組みに結びついていない組織も多くある」ことを指摘した。引き続き、産別として男女共同参画の取り組みを推進するとともに、各加盟組織の実情に応じた支援や働きかけを行っていくとしている。


