賃金の制度維持分・改善分を合わせた平均獲得額は1万2,932円で1976年以降の最高水準に/自動車総連の定期大会

2026年9月18日 調査部

自動車総連(金子晃浩会長、78万3,000人)は3日、石川県金沢市で定期大会を開催し、2026年春季生活闘争(「2026年総合生活改善の取り組み」)の総括を確認した。今春の取り組みでは、賃金の制度維持分と改善分を合わせた平均獲得額が1万2,932円で、1976年以降の最高水準を記録。物価上昇分を加味した実質の賃金増加率は全体で1.97%となり、「全世代で物価上昇を上回る実質賃金の確保につながった」と評価している。また、2025年から重点的に実施する年間休日増の取り組みの中間報告では、2025年からの2年間で308組合が休日増を獲得し、そのうち104組合が5日増を獲得していることなどが報告された。

働くことを通じた自己実現や企業の成長を通じた自らの成長を実感できる職場づくりへ

自動車総連は今春の総合生活改善の取り組み方針で、これまでに積み上げた賃上げと物価上昇の好循環を前進させて「全年代で物価上昇を上回る実質賃金の引き上げを目指すことが極めて重要」であることや、「各組合が自社の賃金課題の解決や自らが目指すべき賃金水準、さらには魅力ある労働諸条件の実現に向けて、力強く取り組みを推進する」などと強調。

そのための環境整備として、グッドサイクル運動を通じて労務費を中心とした価格転嫁の促進や商習慣の課題解決に取り組み、産業全体の底上げ・下支えを図ることや、内需拡大に向けた政策・制度課題に注力することで、「働くことを通じた自己実現や、企業の成長を通じた自らの成長を、働く者一人一人が実感できる職場づくりへとつなげていく」としている。

「絶対額を重視した取り組み」を前提に中小組合は賃金改善分「1万2,000円以上」を示す

そのうえで、方針は各項目における取り組み基準を設定。賃上げの取り組みについては、各組合の自ら取り組むべき賃金水準の実現に向けて、2019年から続けている「個別ポイント賃金の取り組み」と「平均賃金の取り組み」を併せ持つ「絶対額を重視した取り組み」を引き続き進めるとの考え方を提示した。

月例賃金では、まず個別ポイント賃金として、各組合の目指すべき賃金水準の実現と規模間格差の拡大防止に向けて、それぞれの状況をふまえて要求するため、技能職若手労働者(若手技能職)と技能職中堅労働者(中堅技能職)の2銘柄でそれぞれ、「賃金センサスプレミア」(若手:34万1,400円、中堅:42万5,000円)、「自動車産業プレミア」(同31万5,000円、36万円)など、6つの基準額を設定している。

平均賃金では、賃金カーブ維持分を含めた絶対額を意識して取り組むことを前提に、「自ら目指すべき賃金水準や賃金課題の解決を目指す」としたうえで、「すべての組合員の労働の価値および生活水準の低下を防ぐことを前提とした主体的な要求構築を行う」ことを提示。

とりわけ中小組合については、地域別最低賃金や物価の上昇を上回る賃上げ、底上げ・底支えなどの観点から「賃金カーブ維持分を確保したうえで賃金改善分1万2,000円以上の実現にこだわる」として、具体的な目安の金額を示した。

そのほか、企業内最低賃金の18歳の締結額「21万4,000円以上」(21万4,000円以上の要求が困難な場合は、「20万円以上」)や、年間一時金「5カ月基準」とする目標設定に加え、2025年から重点的に実施している年間休日増の取り組み(2024年時点で休日数121日の組合は2027年までに5日増の126日を目指すことなど)を明記した。

また、基盤整備に向けた取り組みとして、受注側・発注側の双方が本音で困りごとを話し合える環境の整備や取引課題の解決に向け、「グッドサイクル運動」の方針に基づき、総連・労連・各組合がそれぞれの立場で取り組みを推進することとし、総合生活改善の取り組みにとどまらず通年で取り組みを進めていくことも付言している。

個別ポイント賃金の平均回答額は若手技能職・中堅技能職ともに増加

大会では、佐藤好一・副事務局長が、今春の取り組み総括を報告した。「絶対額」を重視した取り組みでは、自動車総連が定める、①賃金データの把握②賃金実態の分析・課題の検証③賃金カーブ維持分の算出・労使確認④賃金課題の明確化・目指す水準の設定・改善計画の立案⑤具体的な取り組みの実施⑥配分への関与・検証――の6つのステップの進捗状況を確認。具体的な進捗状況をみると、ステップ5「具体的な取り組みの実施」まで進んでいる組合の割合は71.3%、ステップ6「配分への関与・検証」まで進んでいる組合の割合は73.3%にのぼっている。

個別賃金の要求・回答状況をみると、要求単組数は450組合で昨年(509組合)から59組合減少、回答単組数も231組合で昨年(281組合)から50組合減少した。回答単組数・平均回答額は、若手技能職が44組合・27万4,776円で、昨年(54組合・26万3,864円)から10組合減、1万912円増となり、中堅技能職は129組合・32万6,151円で、昨年(174組合・31万7,915円)から45組合減・8,236円増となった。

賃金の改善分のみの平均獲得額は9,752円に

平均賃金の賃上げの最終結果をみると、賃金の制度維持分と改善分を合わせた平均獲得額は1万2,932円で、昨年の1万2,886円から46円増加し、第一次オイルショック後の1976年以降最も高い水準となった。改善分のみの平均獲得額は9,752円で、昨年の9,520円から232円増加。獲得した組合の割合は94.1%で、昨年の94.9%から0.8ポイント減少している。

佐藤副事務局長は「米国関税問題や産業構造転換への対応など、企業側の危機感も非常に強いなかでの交渉となったが、そうした環境下でも高い水準の賃上げを実現できたことは大変大きな成果」とコメントしている。

賃金改善分の昨年比は「500人~999人」で453円増、「299人以下」で326円増に

賃金改善分の平均獲得額を組合規模別にみると、「3,000人以上」では1万2,498円、「1,000人~2,999人」では1万1,235円、「500人~999人」では1万1,456円、「300人~499人」では9,925円、「299人以下」では9,014円となっている。

報告によると、昨年と比べ、特に「500人~999人」は453円増、「299人以下」は326円増となっており、佐藤副事務局長は中堅・中小組合の奮闘によって「自動車総連全体としての賃上げの成果を広げることができた」としたうえで、特に自動車総連の6割強を占める「299人以下」の組合で昨年を上回る回答を引き出せたことについて、「規模間格差の拡大防止と産業全体の底上げという観点からも大きな成果」だと述べた。

業種別にみると、「メーカー部門」が1万2,450円で最も高く、次いで「車体・部品部門」(1万343円)、「輸送部門」(9,397円)、「一般部門」(9,380円)、「販売部門」(9,293円)の順になった。

また、賃金増減率を物価上昇分を加味した実質でみると全体で1.97%増となり、年齢別でみても、昨年は断続的にマイナスとなっていた41歳以上の世代も含め、「全世代で物価上昇を上回る実質賃金の確保につながった」としている。

企業内最低賃金の平均締結額は19万4,873円に

企業内最低賃金協定締結の取り組みをみると、締結割合は71.1%で、平均締結額は19万4,873円と昨年の18万5,629円から大幅に増加し、19万円台に達した。佐藤副事務局長は、産業全体の賃金水準の底上げや働く仲間の生活基盤の確保につながる重要な取り組みであることから、「今次も着実な前進を図り、産業としての魅力向上につなげてきた」と報告。一方、他産別でも同様かそれ以上の改善が進み、相対的な優位性は以前よりも薄れてきていることから、「他産業に対する優位性を備えた賃金水準の確保が重要な課題」と話した。

年間一時金は、平均獲得月数が4.59カ月となり、昨年の4.62カ月から0.03カ月減少。非正規雇用で働く労働者の取り組みについても、有額回答を引き出した71単組の時給引き上げ額の平均が58.1円となり、昨年の54.8円(同80単組)を上回った。

「賃上げの流れを継続するために重要な労使関係の進展にもつながった」などと総括

全体の総括では、人数規模・業種を問わず自動車総連全体が貫徹した結果、「働く者の総合的な労働条件の改善や産業の魅力向上に資する取り組みを着実に前進させることができた」と指摘。また、「今後も賃上げの流れを継続するために重要となる労使関係の進展にもつながったと受け止める」としている。

一方、課題では、「継続する物価上昇への確実な追随はもとより、組合員の労働の質的向上(生産性向上)や自社・産業の魅力向上(労働条件の相対的な優位性確保)などの様々な観点に基づく要求構築ならびに回答引き出しにこだわることが不可欠」として、価格転嫁の促進や商習慣の見直し、個社・業種を超えた取り組みの進展などに取り組む必要性を訴えた。

2027年総合生活改善の取り組みに向けては、「働く者の生活を守るため、自社・産業の魅力向上と発展のため、今次取り組みで培った交渉姿勢は崩さず、自動車産業に集う仲間の想いを一つにさらなる取り組みに邁進していく」としている。

2年間で308組合が年間休日増を獲得し、うち104組合が5日以上を達成

大会では、特別報告として、2025年から3カ年計画として重点的に行っている年間休日増の取り組みの中間報告を行った。取り組みでは、2024年時点で休日数121日の組合は2027年までに5日増の126日を目指すなど、休日数の一律5日増の実現を掲げている。

報告によると、2年間で、1,092組合のうち308組合で休日増を獲得。そのなかで5日以上を獲得したのは104組合にのぼっている。2026年の平均年間休日数は116.8日と、2024年(115.9日)から0.9日増加。自動車総連のモデルカレンダーである休日121日以上の組合数は、2026年は377組合で、2024年(355組合)から22組合増加した。

2年間の休日増の獲得組合数を部門別にみると、特に年間休日数が少なめだった販売部門が全体の8割超となる257組合にのぼっており、これは販売部門全体でみると約46%に相当する。また、組合員数300人未満の組合で休日増を獲得したのは250組合にのぼるなど、中小組合が取り組みを牽引している。

121日以上達成のため、休日増への理解促進や稼働日減による業務量への対策などが重要に

報告した佐藤副事務局長は、「各個別労使が産業の魅力向上や人材獲得などについて、真摯な議論を重ねた結果」と評価。休日増を実現した組合から、「求人サイトの検索条件に該当するようになり、新卒応募者が増加した」「休日増をきっかけにさらなる生産性向上に向けた労使議論へ発展した」などの声が寄せられていることを報告した。また、日本自動車工業会などの業界団体や、メーカー、部品企業などへの理解が浸透しつつあるとした。

その一方で、「もともと休日数が少ない単組を中心に休日数が増加しているが、自動車総連のモデルカレンダーの休日121日以上の組合はまだ少ない」と指摘。121日を超えていくためには、①産業の魅力向上のために休日増が必要であることの理解促進②稼働日減による業務量への対策③サプライチェーン内の稼働日の連動への対策(取引先間の納期・在庫などの調整)――の3点が重要だと強調した。

これからの取り組みの内容を、各単組と各労連・総連についてそれぞれ説明。各単組には、産業の魅力向上のための休日増の必要性の訴求や、休日増の実現に向けた阻害要因への対応を実施すること、総連や各労連には、単組の取り組みを後押しする情報提供や、個別労使では解決困難な課題への対応を求めた。

「あり方委員会」の答申内容には人材価値の創出や人材流動化への対応などを補強

大会の特別報告ではまた、並木泰宗・事務局長が、今後の自動車総連運動のあり方を検討する「あり方委員会」が2021年に示した答申内容についての補強を報告した。

答申では、自動車総連として将来・10年後を見据えて、自動車総連のあるべき姿の実現に向けた「目指すべき5つの方向性」と、新たな方策・具体的取り組みについての「8つの提言」を示しており、答申からの5年間での産業を取り巻く環境の大きな変化を経て、報告では「『8つの提言』の方向性を継承したうえで、残る5年間に重点的に取り組むべき事項を補強し、取り巻く環境変化に即した実践を加速する」としている。

主な補強内容をみると、「雇用問題への対応にとどまらず、産業内での中長期的な人材確保スキームを構築するべき」との提言については、これまで掲げてきた「将来にわたる『失業なき雇用移動』スキームの構築」などに加えて、他産業に誇れる人材価値の創出や、人材流動化への積極的・柔軟な対応などを補強。並木事務局長は、「雇用維持の対応を中心に活動してきたが、今後はそれだけでは十分ではなく、若年層人口の減少や技能継承の課題をふまえ、産業全体で人材の確保・育成を行い、必要なスキルを身につけられる仕組みづくりが求められている」とコメントした。

「同じ職場で働く『仲間づくり』『仲間の拡大』を推進するべき」との提言では、職場での絶対的過半数維持や未組織企業の組織化に関する補強として、若年層との接点強化や組合価値の再発信、多様な人材の参画促進などを掲げた。

また、「自動車総連を将来にわたり信頼され必要とされる組織とするべき」との提言については、これまで掲げる、総連・労連間の人材交流や活動のスクラップ&ビルドなどへの補強として、総連・労連・単組の明確な役割分担と連携強化や、多様な人材が参画する機関会議の運営などを示した。

答申の実践には「職場とのつながり」と「産別機能の発揮」が重要と金子会長

金子会長はあいさつで、答申の実践を支える土台として、「職場とのつながり」と「産別機能の発揮」の2つを提示。

「職場とのつながり」については、「多様な仲間たちは何を考え、どんな課題を抱えているのか、その声を丁寧に聞き、運動につなげていくことこそが私たちの原点」としたうえで、「目的は参加者を増やすことではなく、その考えや問題意識を運動に反映し、政策や活動の実効性を高めること」だとし、多様な人材の参画が新たな視点を生み良い運動につながるという好循環をつくる重要性を訴えた。

「産別機能の発揮」については、「個別企業の視点に加え、産業全体の将来を見据えた取り組みを進めていかなければならない」と産業別組織の役割の重要性を述べたうえで、「総連・労連・単組がそれぞれの役割を果たしながら緊密に連携していかなければならない。そうした積み重ねが、自動車産業で働く仲間の雇用と暮らしを守り、産業の持続的な発展につながるものと確信している。私たちもその責任を深く自覚し、力強く運動を推進していきたい」と訴えた。

中長期的な賃金のあり方を示す「賃金政策ビジョン」を策定

特別報告では、これらのほか、中長期的な賃金のあり方や考え方を表す、新たな「賃金政策ビジョン」の策定を報告。同ビジョンでは、賃金制度の3つの役割として「生活基盤の確保」「働きがいの創出」「社会的価値の付与」をあげ、それらの課題の方向性として、物価上昇を上回る実質賃金の確保や、適正な評価に資する公平性ある賃金制度への転換、人への投資、他産業に対する優位性を備えた賃金水準の実現などを示した。

今後の進め方については、「賃金政策の具体策については、総合生活改善の取り組みや各委員会にて議論し、該当する取り組みの方針などへ反映のうえ、単組の実践へとつなげていく」としたほか、「各年の取り組み結果と課題をふまえ、当ビジョンのアップデートは定期的に実施する」としている。