2026春闘について、格差拡大の歯止めでは「課題を残した」と総括/JAMの定期大会
2026年9月9日 調査部
機械・金属関連の中小企業の労働組合を多く抱える産業別労組のJAM(安河内賢弘会長、36万9,000人)は8月27、28の両日、岐阜県岐阜市で定期大会を開催し、2026年春季生活闘争総括を確認するとともに、2027年度活動方針を決定した。春季生活闘争総括は、過去最高の賃金改善額を獲得したものの、「格差拡大に歯止めをかける取り組みについて課題を残した」と総括した。安河内会長は、来年の春闘に向け、「目の前の成果に決して満足することなく、次の春闘へと歩みを進めていかなければならない」と強調した。
格差拡大の歯止めでは課題を残す
JAMの2026年春季生活闘争の最終結果(6月19日時点)では、交渉単位1,417組合中、860組合が賃金改善を獲得。賃金改善額の単組平均額は1万2円(300人未満:9,102円、300人以上:1万2,770円)となり、賃金改善額、賃金改善獲得単組数ともに、JAM結成(1999年)後の春闘で過去最高となった。
2026年春季生活闘争総括は、2026闘争の「概要・特徴点」について、「結果として、賃金改善額、平均賃上げ額ともに過去最高額となり、2023年を起点とした高い水準の賃上げを継続し、全体では前年に続き過年度物価上昇率を上回る賃上げを獲得した。一方、『格差拡大に歯止めをかける』取り組みについて課題を残した」と記した。
3年間で規模間の格差は大幅に拡大
総括はまた、「2023年からの3年間で企業規模間の格差は大幅に拡大した」と指摘。JAMの組合員賃金全数調査によると、「規模1000人以上と300人未満の所定内賃金の格差は、全体平均で4万6千円台から6万4千円台となり2万円弱拡大した。年齢別に見ても1万5千円から2万円程度拡大している」ことから、「『格差拡大に歯止めをかける』ことを重要課題としたが、規模間の賃上げ額に開きは大きく課題を残した」と評価した。
さらに、「多くの単組が高額の賃金改善分を獲得する一方で、実質賃金を維持できなかった単組もあり、同規模内でも賃金改善額のばらつきは大きかった」と振り返った。
今後の課題について総括は、「すべての組合員が生活向上を実感できる水準には至っていない」とし、「今後は、積極的な賃上げを継続し生活向上にこだわった取り組みが必要」と述べるとともに、「実質賃金維持の必要性について、労使の認識をさらに深める必要がある」と記した。
初めてベア1万円を超えたが、「決して簡単ではなかった」と安河内会長
あいさつした安河内会長は2026春闘について、「結成以来、初めてベア平均で1万円を超える非常に素晴らしい成果を出すことができた」と述べた一方、「決して簡単な春闘ではなかった」とし、「総理による発言で中国との関係が一気に冷え込み、レアアースを含めた様々な課題が噴出した。また、トランプ大統領による横暴な戦争によって様々な原材料が不足し、そして今もなお高騰を続けている。さらには人手不足によって、現場の混乱は極まっている。それでも高い成果を出すことができたのは、ひとえに労使が真摯に不断の努力を続けて話し合いを続けた結果だ」と述べた。
また安河内会長は、「大手と中小の格差はさらに開いてしまった。地方と中央の格差もさらに開いてしまった。さらにこの間、しっかりとベースアップを取ることができた中小の労組と、残念ながら実質賃金を下回る結果しか引き出すことができなかった中小労組との間の格差もさらに広がることになってしまった」と自省しながら、「中小労働運動を掲げる我々JAMにとって、これは痛恨の極みだと言わざるを得ない」と語った。
賃上げの流れは自然に定着するものではなく、目の前の成果に満足してはいけない
2027年春闘に向け、安河内会長は、「23春闘以降、我々は高い水準での春闘の結果を導き出しており、少しずつではあるが賃金は上がるものだという流れが定着しつつある。しかしながら、この流れは自然に定着するものではない」と指摘。「やはり我々がしっかりと要求をし、そして労使で普段の努力を続けた結果から、初めてこの流れが定着をする。そして社会を変えることができる日本経済を再び光ある方向へと導くことができる。だからこそ我々はこの目の前の成果に決して満足することなく、次の春闘へと歩みを進めていかなければならない」と強調した。
また、昨今の物価高について「物価高対策の王道は賃上げしかない」と述べたうえで、「この30年間、我々が見たものは、賃上げを我慢したとしても雇用を守ることはできないという歴然たる事実だ。しっかりと賃金を上げて、日本経済を復活させることによって初めて、我々の雇用が安定し、そして日本経済は再び輝きを取り戻すのだと確信している。2027春闘はまさにその試金石となる春闘だと考えている。厳しい状況にそれぞれの単組が置かれている状況は十分に理解している。しかしながら、しっかりとした議論を持って力強い春闘をもう一度組織していこう」と呼びかけた。
徹底した「職場討議」を実践
2027年度活動方針では、昨年の定期大会で決定した「2026・2027年度運動方針」を一部補強した。補強した主な内容をみると、職場に関する取り組みとして、「執行部が組合員から直接意見を聞く機会が定例的にある単組は、約2割に留まっている」現状を鑑み、「すべての単組役員が『職場での取り組み』活性化に向けて、徹底した『職場討議』を実践することを地方JAM・地協単位で集団的にオルグし、支援・サポートする活動を展開していく」としている。
企業組織再編とM&Aへの対応について、雇用問題に関する会社施策に対して早い段階で労使協議することや、労働組合が経営状況を的確に把握して経営への関与を強めていくことなどが求められるとして、「労働協約の点検見直しと関連する活動、特に労働組合による経営分析力向上などについて、地方JAMオルグや地協活動、研修会などを通じて周知・徹底を強化する」とした。
個別賃金の拡大に向けて推進計画を策定し、ツールも作成
格差拡大の歯止めには絶対水準を重視した取り組みが重要なことから、JAMが力点を置いている個別賃金要求の推進・拡大では、「個別賃金要求方式導入の推進にむけて推進計画を策定する」とともに、「取り組みツールの作成を進める」としている。賃金関係ではまた、高齢者について「60歳以上の賃金実態の把握に向けて、組合員賃金全数調査の集約を強化する」とした。
指針に組合不要論などの解散・離脱原因への対策を付加
組織の強化の取り組みでは、組織の解散・離脱が大幅に増加し、その理由の4割が「組織の維持困難」との調査結果があることをふまえ、「これまでの『雇用対策指針・組織防衛指針』などに必要に応じて新たな留意点を補足していく」とし、特に組合役員の後継者不足や組合不要論などの解散・離脱原因への対策を付加するとしている。
男女平等参画の推進の取り組みでは、選択的夫婦別姓制度について、「昨年度、連合『選択的夫婦別姓制度導入の民法改正を求める請願』署名活動を展開したが、様々な意見があった」ことから、引き続き「議論を深める」としている。
組織変革の取り組みでは、JAMでは2026年度から、ボトムアップによる参加型運動の推進を目的としたプロジェクトを設置したが、2027年度は「春季生活闘争において職場での組合員と単組役員との対話を一層促進するため、1対1コミュニケーションを取り入れた活動を展開する」とした。
価格転嫁の取り組みはさらに強化
社会に関する取り組みでは、「価値を認め合う社会へ」の実現に向けた取り組みについて、2026年3月のJAM調査で労務費、固定費を「ほぼ全額転嫁できた」とする回答は31%と前回調査からあまり変化がみられないことから、「対応マニュアル」を活用し、「単組や企業へのさらなる認識向上を図る」とした。
また、中東情勢の影響などによる原材料費やエネルギー価格の上昇などで「中小企業を中心に負担が増大している」ことから、「国際情勢や経済環境の変化に対して、調達に係る負担のしわ寄せが生じないよう、価格転嫁の取り組みを強化する」としている。
大会ではこのほか、2027年度政策・制度要求や、5月の中央委員会で第28回参議院議員通常選挙比例代表選挙区におけるJAM準組織内候補予定者として推薦を決定した、村田きょうこ・参議院議員の再選に向けた活動の推進計画を確認した。


