組合と共済の同時加入の推進で組合拡大と脱退防止対策を強化/自治労定期大会
2026年9月9日 調査部
地方自治体の職員などを主に組織する自治労(石上千博委員長、68万9,000人)は8月26、27の両日、埼玉県さいたま市で定期大会を開き、2027年1月までの取り組み方針(当面の闘争方針)を確認した。方針では、自治体労働者の生活を守る賃金・労働条件の確保に向け、給与の引き上げ改定、中途採用者の賃金改善や再任用職員の一時金改善などを重点課題として提示した。組織拡大に向けた取り組みでは、組合と「じちろう共済」の同時加入を推進することで、組織化と脱退防止対策を強化するとしている。石上委員長は「自治体職場で主体的な賃金・労働条件改善に向け、人勧のみに依拠することなく、労使交渉を積み重ねていかなければならない」などと述べ、公共職場で働く全組合員の処遇改善の必要性を訴えた。
月例給・一時金等の勧告内容を挙げたうえで自治体確定闘争の重点課題を提示
方針は、秋季・自治体確定闘争をめぐる情勢として、8月7日に人事院が国会と内閣に対して行った国家公務員の月例給・一時金や手当等に関する勧告内容について、①月例給の較差は1万5,056円(3.51%)で、中堅層以上の職員について3.0%以上の改定を行うなど、2025年を上回る改定、②一時金は0.05月引き上げ、期末手当(0.025月)と勤勉手当(0.025月)に配分(年間4.7月、再任用職員2.5月)、③広域異動手当の支給割合引き上げおよび転居手当の新設、④再任用職員の月例給について、民間再雇用者の状況を踏まえ、近年の考え方に基づく改定を上回る平均8.5%の改定――などのポイントを列記した。
また、勤務時間等に関する改定として、無給休暇の新設および代休日の指定等の見直しが勧告されたことや、人事管理に関して、超過勤務縮減のための調査・指導の強化、ゼロ・ハラスメントの実現等が示されたことも記述した。
そのうえで、方針は自治体労働者の生活を守る賃金・労働条件の確保に向けて、①給与の引き上げ改定を行い、年内に差額を支給する、②38歳4級到達をめざして在級期間を短縮する、③中途採用者の賃金改善を行う、④再任用職員の一時金・級格付けを改善する――ことを「4つの重点課題」に挙げている。
独自の判断で給与改定を実施して年内に差額支給を
1つ目の柱である「給与の引き上げ改定」では、人事院勧告を踏まえ、①全世代の職員の賃金を引き上げる、②一時金の支給月数を引き上げる。引き上げ分の配分にあたっては、期末手当に重点を置く、③給与改定については、国における給与法の改正を待つことなく、独自の判断により実施し、年内に給与改定に伴う差額を支給する――ことを求めている。
中堅層が今後の処遇に見通しをもって働き続けられる運用改善が必要
2つ目の「38歳4級到達をめざした在級期間の短縮」については、「中堅層が昇格の停滞や賃金の伸び悩みを感じることなく、今後の処遇に見通しをもって働き続けられるような運用改善が必要」だとして、全単組で取り組む考えを強調。達成済みの単組は、「45歳5級到達」を目標に掲げる。
賃金の運用改善に向けては、昇格目標達成のため、賃金実態を把握・分析し、単組事情を踏まえた労使交渉を展開する。単組の到達目標は、基本給で①30歳・30万4,700円、②35歳・33万3,100円、③40歳・37万1,600円、④45歳・41万3,800円、⑤50歳・43万4,400円――の個別ポイント賃金などを設定し、水準の改善をめざす。
中途採用者の初任給と昇格の改善を求める
3つ目の「中途採用者の賃金改善」については、「同学年の新卒採用者の給与を基本」に、初任給と昇格の改善を求める考え方を示した。2025年4月から国が民間企業等での経験年数の換算表を改定して原則100%としたことに加え、2026年4月からは経験年数による号俸調整も見直したことから、自治体も同様に経験年数換算表を改正することなどを要求する。民間経験等のある中途採用者の初任給の格付けで、国の経験者採用試験採用者に準じた格付けを可能にするとともに、中途採用者の初任給決定の変更にあたっては、必要な在職者調整を行うことも求める。
再任用職員の職務・職責に見合う処遇を追求
最後の柱である「再任用職員の処遇改善」では、再任用職員の職務・職責に見合う処遇を追求する。具体的には、「60歳超の職員と同様に、退職時の職務での任用・級の格付けを継続することを基本」とすることや、「一時金の支給月数を常勤職員と同月数にする」ことなどを掲げている。
このほか、重点課題以外の取り組みとして、人事評価制度への対応や、会計年度任用職員の処遇改善、カスハラ防止対策などを含む労働安全衛生、ワークライフバランスの確保、長時間労働の是正などの取り組みも提示している。
「勧告は全体を見れば組合員の期待に一定応える内容」(石上委員長)
石上委員長はあいさつで、人事院勧告の内容について「5年連続で月例給と一時金の引き上げ、全ての級・号俸で3%以上の改定に加え、課題は残っているが再任用職員の月例給が平均8.5%の改善となるなど、勧告全体を見れば組合員の期待に一定応える内容だ」などと評価したうえで、今後の総務省・国会対策を強化していく決意を表明。あわせて、今勧告で骨格が示された国家公務員の人事制度の見直しにも触れ、「中央公務員への影響を注視し、人事院への意見反映に取り組んでいく」考えを示した。
自治体確定闘争を公共サービスで働く全組合員の処遇改善につなげる
また、自治体で応募者の減少や中途退職者の増加などの状況が続いていることを挙げて、「賃金引き上げも重要な課題の一つであることは労使共通の認識だ」と指摘した。「今こそ、自治体職場で主体的な賃金・労働条件改善に向け、人勧のみに依拠することなく、精力的かつ積極的に労使交渉を積み重ねていかなければならない」などとして、自治体確定闘争に全力で取り組むことで、賃上げの流れを病院・医療職場、公共民間職場も含む公共サービスで働く全ての組合員の処遇改善につなげる必要性を強調した。
じちろう共済の優位性を周知しつつ組合と共済の同時加入を進める
方針は、組織の強化・拡大に向けた取り組みについても言及した。新規採用者の加入に向けて、「2026年6月に行った新規採用職員等の組織化状況調査および10月に行う同継続調査の結果をもとに、引き続き新規採用職員100%加入に取り組む」としている。
単組は、新規採用者の未加入状況を確認するとともに、職場単位での声かけなどを実施する。団体生命共済やマイカー共済、税制適格年金、長期共済などの優位性を周知しながら、組合と共済の同時加入を促進する。一方、本部では、「2027年度に向けた取り組みの提起などを行うため、10月に県本部新採組織化対策会議を開催する。また、未加入者対策を強化するため、県本部・単組と連携して事例収集と情報提供に努める」としている。
加えて、脱退防止対策も強化する。具体的には、単組が「組合員とコミュニケーションを重ねて信頼を深め、脱退防止につなげる」考えだ。脱退の主な理由が「組合費に対するデメリット感にある」との分析結果を踏まえ、「労働組合の意義を訴え続けるとともに、(団体生命共済、マイカー共済等の)じちろう共済の推進による可処分所得の向上についても、より強く意識して取り組む」としている。
新採職員への早期アプローチや単組の状況に応じた支援強化を
組織の強化・拡大に関しては、討論のなかで複数の県本部から活動報告があった。
新規採用者の組織化について、栃木県本部は、「県職労の新採職員の組合加入率はコロナ禍以降、年々低下しており、主な未加入・脱退の理由として、物価上昇に伴い組合費を重荷に感じていることが挙げられる」などと説明した。さらに、「組合の活動が組合員にきちんと伝わっていない」状況を指摘。とりわけ、「若い世代は民間賃金の上昇に伴い公務員賃金の引き上げが続くタイミングである」ことから、「組合の活動がなくても、人勧準拠で給料は勝手に上がると考える職員が一定数以上いる」などと述べ、新採職員への早い段階でのアプローチの重要性を訴えた。
現場に寄り添った支援活動へと転換してきた千葉県本部では、「単組からの要請には全て応える体制を整え、時には事務所を閉鎖してでも現場に駆けつける姿勢を大切にしている」という。新採の加入状況も「決して満足のいく数字ではない」としながらも、「ここ数年、60%半ばを維持している」。そんな千葉県本部の課題は、「加入率が伸び悩む単組に、どう県本部として奔走するか」だ。新規採用対策会議についても、「前年の取り組みに対する総括が不足していないか、課題や改善策が次年度に十分に生かせているかなどを確認しながら、会議を通して反省を共有する場から、単組ごとの課題を明確にして具体的な改善計画を作る場に変えていかねばならない」などと話し、各単組の状況に応じた支援強化を県本部全体の底上げにつなげる姿勢を強調した。
次世代リーダーの人材育成や団体共済を活用した組織化も
一方、京都府本部は、組合の次世代リーダーの育成を意識した取り組みとして、「2023年から、おおむね35歳までの若年層組合員を対象に『自治労京都ユニオンカレッジ』を開催している」ことを報告した。それによると、受講者は2年間の受講期間中に、府本部が主催する取り組みに優先的に参加する。「労働条件や学習会、反戦平和運動、国会見学などの体験型の取り組みにも参加しており、昨年10月にはカレッジ受講者のなかから本部の執行委員が誕生したほか、単組の書記長や執行委員の活動をしている人もいる」という。京都府本部は、「この取り組みを一過性のもので終わらせず、受講生が今後、本部・単組のなかで中心的な存在として活動できるよう」、継続性を持った最重点の取り組みとして位置付けている。
また、宮城県本部では「加入率はこの間、5割を切る状況が続いており、2025年度は4割を下回り過去最低だった」ことを報告したうえで、26春闘期からは「新規採用者の組織化をめざし、4月の組合加入説明会に向けたスケジュールの策定、勧誘ツールや説明会の開催方法、若手組合員を企画段階から参加させるなど、単組オルグや総支部別の対策会議を開催して単組に提起し、組合加入とあわせて『じちろう共済』の同時加入を推進している」とした。
組合員数の水準は維持しているものの、「最近は脱退の相談が増えており、組合員の減少が大きな課題になりつつある」和歌山県本部も、「2022年度から団体生命共済などの共済推進を通じた組織強化・脱退対策に取り組んでいる」ことを紹介した。団体生命共済の加入率は、「2022年度の約25%から現在は約37%に上昇し、加入者数は500人程度の増加となっている」という。こうした効果の背景については、「この3年余りで延べ1,700人以上と個別保障相談会を実施し、一人ひとりへのきめ細かな対応を軸に、共済推進活動を通じた組合員とのつながりをつくり、強く効果がでている」とし、「組合員に喜んでもらえる活動は、組合離れの防止や組織強化に大きな効果がある」と発言した。
組織の原点に立ち返り愚直に取り組みを進める
「2022年度から人員確保を通年闘争として取り組んできた」佐賀県本部が重視しているのは、「職場ごとの実情や組合員の思いに当局が向き合い、一つひとつ真摯に回答すること。そして、その内容を組合員に返しながら年間を通じて進捗を問い続け、『ここだけは何とかしてほしい』という願いを一つでも実現すること」だと述べた。その一方で、取り組みへの結集状況は、「単組ごとの温度差は濃淡という言葉では収まりきれないほど広がっている」状況で、「県本部として伴走のあり方を見直さなければならない」という強い危機感がある。佐賀県本部は、「何のために組織があり、何のために役員が存在するのかを改めて見つめ直しながら、組合員の生活向上という原点に立ち返り、愚直に取り組みを重ねていく」姿勢を訴えた。
現場の声を反映させた政策や地方自治と地方財政の確立に向けた政策実現を
大会では、2028年に執行予定の「第28回参議院選挙闘争の推進について」も確認した。「闘争の推進」は、「新たな政治対応方針」等で確認してきた「穏健な保守」層をも巻き込みつつ、国民の多数派に対応した「中道・リベラル」勢力の結集に向けて、①社会保障を中心とした公共サービスの拡充をはじめ、地方財政の確保・分権の推進、自律的労使関係制度の確立など、自治労の政治課題の前進をめざす、②自治労が求める社会像と政策について共有できる候補者を積極的に支援し、拡大をはかる、③連合が掲げる「自由・公正・連帯の社会」「働くことを軸とする安心社会」の構築をめざす――などの基本目標を提示した。「公共サービス現場の声を反映させた政策や、地方自治と地方財政の確立に向けた政策実現をはかる」ために、組織内議員の鬼木誠・現参議院議員を組織内候補(比例代表)として擁立する。


