春闘を牽引する「社会的な役割を果たすことができた」と2026年闘争を評価/金属労協の定期大会

2026年9月9日 調査部

自動車総連、電機連合、JAM、基幹労連、全電線の5つの産業別労働組合でつくる金属労協(JCM、金子晃浩議長)は1日、都内で定期大会を開催し、2026年闘争の経過を報告するとともに、2027年度活動方針を確認した。2026年闘争では、比較可能な2014年以降で最も高い賃上げ(賃金改善分)額となったことから、「春闘を牽引するというJC共闘の社会的な役割を果たすことができた」などと評価した。活動方針では、多様性の取り組みの推進に向け、若年層の運動参画について、課題や方向性を整理することなどを補強した。

回答を引き出した組合のうちの86.1%が賃金改善分を獲得

2026年闘争の経過報告では、闘争の経過、評価と課題や2027年闘争に向けた考え方を説明した。2026年闘争方針では、金属労協は、成果の適正配分と実質賃金の引き上げなどを考え方の柱に据え、賃金の引き上げ要求については、「定期昇給などの賃金構造維持分を確保した上で、実質賃金向上を確固たるものにするべく、すべての組合で12,000円以上の賃上げにこだわる」と掲げた。

最終の回答結果(7月21日現在)をみると、回答を引き出した2,567組合のうち、賃上げ(賃金改善分)を獲得した組合は2,209組合となった。回答引き出し組合に対する賃上げ獲得組合の比率は前年の83.6%を上回る86.1%となり、8割半ばを超えた。組合規模別にみると、「1,000人以上」が95.9%、「300~999人」が95.5%、「299人以下」が81.8%で、300人未満の組合でも8割を超えた。

賃上げ(賃金改善分)額の平均は前年の1万169円を上回る1万487円となり、比較可能な2014年以降で最も高い引き上げ額となった。規模別では、「1,000人以上」が1万3,035円(前年1万2,855円)、「300~999人」が1万1,928円(同1万1,673円)、「299人以下」が9,502円(同9,160円)で、すべての規模区分で前年を上回った。

春闘全体の賃上げ機運醸成や相場形成にも寄与

これらの結果について、「評価と課題」では、「JC共闘として緊密に連携して相乗効果を発揮し、賃上げを獲得した組合数は8割半ばを超えるとともに、賃上げ額も比較可能な2014年以降で最も高い引き上げ額となった。2014年以降、JC共闘として賃上げに積極的に取り組み、2023年以降はさらに高い水準の賃上げを4年間継続し、2026年闘争ではより大きな成果を上げることができた」と評価するとともに、「これらの成果は、組合員の生活の安心・安定はもとより、春闘全体の賃上げ機運醸成や高い金額での相場形成、積極的な賃上げの継続につながるものであり、春闘を牽引するというJC共闘の社会的な役割を果たすことができた」とした。

中高年層も含めた実質賃金の向上も引き続き課題

一方、課題については、「全体としては実質賃金を向上させる賃上げを獲得することができたが、中小企業や業績の厳しい企業を中心に、実質賃金の確保に至らなかった組合もある」と言及するとともに、「人材の確保・定着を目的に若年層への配分が手厚くなる中、中高年層も含めた実質賃金の向上も引き続き課題となっている」「国際情勢が激変する中、内需主導の安定的・持続的な経済成長への転換が求められており、積極的な賃上げの継続により、すべての働く者の実質賃金向上につなげていく必要がある」と指摘した。

賃金の底上げや格差是正の観点では、「賃金の底上げを前進させることができた」とする一方、「賃上げ額は1,000人以上の組合が最も高いため、大手と中小で3,000円程度の差が開いており、賃金水準の規模間格差が拡大している。闘争の環境整備としての価格転嫁を含む適正取引の取り組みは一定の前進が図られているものの、取適法の周知や法の適用されない範囲も含めたバリューチェーン全体への適正取引の広がり、労務費の価格転嫁、金型等の無償保管などでは課題が見られる」とした。

賃上げの企業内での配分のあり方についても言及しており、「賃上げの配分について、経営側から、人材確保・定着を図るための若年層への重点的な配分や、成果や貢献に応じた配分を求める傾向が強まってきている。配分にあたっては、労使で十分な論議を行った上で、組合員の納得感の得られる公正な配分が行われるよう、労働組合として関与していくことが重要」だと指摘した。

継続してきた賃上げが途絶えれば、新たな経済ステージの定着機会を失う

経過報告は、2027年闘争に向けた検討について、「国際情勢の悪化による原材料供給リスクは日本経済全体に深刻な影響が懸念されることに加え、中国の経済減速や過剰生産品目の市況悪化により一部の産業は収益に大きな影響を受けるなど、積極的な賃上げの継続は正念場を迎えている。こうした厳しい内外環境の下にあって、これまで継続してきた賃上げの流れが途絶えてしまえば、賃金と物価が安定的に上昇する新たな経済ステージを定着させる好機を失いかねない」と指摘し、「実質賃金の向上を通じて個人消費を喚起し、内需主導の安定的・持続的な経済成長を実現していくことが重要」だと強調した。

「一過性に終わらせず、基幹産業にふさわしい賃金水準の実現を」(金子議長)

あいさつした金子議長(自動車総連会長)は、「2026年闘争ではJC共闘のもと、組合の生活向上と日本経済の好循環実現に向けて取り組みを進めてきた結果、積極的な賃上げの流れを継続し、実質賃金改善に向けた前進を図ることができた。加えて、この数年にわたるJC共闘の取り組みは、労使交渉の枠を超え、日本経済全体の賃上げ機運を支える存在として、社会的にも高く評価されていると感じている」と述べる一方、「規模間格差への対応やバリューチェーン全体への波及、人材確保・定着など、なお課題は残されている。だからこそ、この数年で築いてきた賃上げの流れを一過性で終わらせることなく、定着・発展させ、日本の基幹産業にふさわしい賃金水準を実現させていかなければならない」と強調した。

金子議長はまた、2027年闘争に向け、「方針策定はまだこれからの議論だが、引き続きJC共闘の結束のもと、力強く取り組みを続けていきたい」と語った。

為替変動に伴う減額措置が規約に盛り込まれる

今回は2年間の運動期の中間年の大会にあたるため、後半年の2027年度の活動方針を確認した。

主な内容をみると、国際連帯活動では、昨年開催された第4回インダストリオール世界大会で「為替の急激な変化に伴う加盟費の減額措置」を求める新規規約がJCMの主張もあって導入されることになったが、実際の運用はこれからになるため、「運用面でも適切に反映されるよう、通年の取り組みとして引き続き本部と継続した交渉を行う」と補強した。

人権デュー・ディリジェンスでは、2026年度にとりまとめたアンケートの結果をふまえ、労働組合として人権デュー・ディリジェンスに取り組むための参考資料を作成するなど、継続して取り組む。

多様性の推進に向けた取り組みでは、若年層の運動参画について、インダストリオールでも議論が活発になっていることをふまえ、「金属労協全体として取り組むべき課題や方向性について整理し、必要性の共有、組織内での理解・醸成を図る」とともに、産別の担当者とも議論を深める。また、加盟組織は「国際的な若年層の交流の場への参画を推進する」としている。

「第4次賃金・労働政策」を12月の協議委員会で提案

労働政策では、2027年闘争に向け、「積極的な賃上げの継続に向けて議論していく」と明記した。また、JCMでは現在、「第4次賃金・労働政策」の策定に向けた議論を行っているが、今年12月に予定している第69回協議委員会で取りまとめるとした。

賃金・労働政策の改定は2016年以来となる。第3次賃金・労働政策では、「長期安定雇用」「良質な雇用の確立」「ワーク・ライフ・バランス」などの理念を掲げた。検討中の第4次では、金属産業を取り巻く環境の変化をふまえ、「産業の高度化」と「人への投資」を金属産業のめざす姿として提示する方向。そのうえで、「金属産業にふさわしい賃金・労働諸条件の確立」「長期安定雇用を基盤としたキャリア形成」「多様な人材の活躍推進」を柱に具体策を肉付けする予定だ。

特定最低賃金については、「2025年度に金額改正・新設の申し出を行った金属産業の特定最低賃金のうち、3分の1程度が金額改正・新設の必要なしとなり、2026年度以降も審議が難航することが予想される」として、「関係各所と連携を図り、特定最低賃金の金額改正・新設が困難な現状を改善し、運用しやすい制度に見直すことを求める」としている。

方針の討議では、構成組織からは、継続的な賃上げの取り組みや、多様性推進の取り組みなどについて、賛同するとの意見が多く出された。また、特定最低賃金については、基幹労連などから、意義や役割の周知活動など、改正・新設に向けたJCM本部の取り組み強化を期待する意見があった。

新事務局長に橋本修平氏が就任

役員改選により、副議長(4人体制)の1人である神保政史氏(現・連合事務局長、前・電機連合会長)、事務局長の梅田利也氏(電機連合)が退任し、新たな副議長に半沢美幸氏(現・電機連合会長)、事務局長に橋本修平氏(電機連合)が就任した。