営業職・内勤職ともに多くの組合が収入の向上につながる成果を獲得/生保労連定期大会

2026年8月26日 調査部

生命保険会社の労働組合で構成する生保労連(堀義行委員長、22万8,000人)は8月19日、都内で定期大会を開き、2026年度の運動方針を決めた。大会では「2026春闘の成果と課題」も確認。「成果と課題」は、賃金改善に関して、出来高給体系を基本とする営業職員が「実質的な収入の向上につながる幅広い内容の回答を引き出すことができた」ことや、25春闘から2年続けて要求目安を掲げた内勤職員で「7組合が3%以上の引上げに資する成果を獲得した」ことなどを評価した。他方、今後の課題として、営業職員が「安心して長く働き続けられるための中長期的視点での資格・給与・雇用の安定化」や、内勤職員の賃金データを収集・分析して「組合員の期待・納得感に応える統一要求基準を検討する」必要性を指摘している。堀委員長はあいさつで、「営業職、内勤職員ともに多くの組合が収入の向上につながる成果を獲得し、全体として4年連続で賃上げを実現できた」などと述べた。

統一闘争を通じて組合員の総合的な労働条件の改善・向上をはかる

新運動方針は従来と同じく、 ① 生保産業の社会的使命の達成 ② 総合的な労働条件の改善・向上 ③ 組織の強化・拡大 ④ 生保産業と営業職員の社会的理解の拡大――の4本の柱を立てている。このうち、春闘期の取り組みを包含する「総合的な労働条件の改善・向上」については、「組合員の意識や取り巻く環境が変化していく中、『人への投資』を通じて安心と働きがいのもてる職場・ルールをつくることが一層求められている」との認識のもとで、「統一闘争を通じた共闘効果の発揮や相場形成、各組合の取組みに資する情報交換・情報提供等を通じて、組合員の総合的な労働条件の改善・向上をはかる」構え。統一闘争の推進にあたっては、「2026春闘の成果と課題を十分に踏まえ、2027春闘の効果的な進め方に関する検討を行う」考えを示している。

25春闘から内勤職員の賃金改善の引き上げ水準を統一要求基準に設定

生保労連では2001年度より春闘を総合化し、2004年度からは「労働諸条件全般を見据えた総合的な生活改善闘争」と位置付け、「総合生活改善闘争」として年間を通じた統一闘争を推進している。その後、「統一取組み課題」の枠組みの構築・見直しや「賃金改善」の考え方を整理。ワーク・ライフ・バランスの実現に向けた取り組みを「総合生活改善闘争」の大きな柱に位置づけるなどの改善・充実を図った。

2025春闘からは、「近年、社会全体でベースアップをはじめとした賃上げの流れが継続し、『賃金改善』に対する組合員の期待が一層高まっている状況」にあることなどを踏まえ、「内勤職員関係の統一要求基準として引上げ水準(目安)を掲げて取り組む等、統一闘争をより積極的に推進」してきた。

全組合が「さらなる収入の向上」に最大限取り組む

具体的には、組合員一人ひとりが「働きがい・生きがい」を実感できるように、全組合が取り組む「統一取組み課題」と、各組合の課題認識に基づき取り組む「主体的取組み課題」を設定して、総合的な労働条件の改善・向上に向けた統一闘争を展開。「統一取組み課題」では、「賃金・制度関係の取組み(賃金改善、営業支援策の充実)」について、「業界情勢、一般情勢、労働界の動向、組合員の期待・納得感等を十分に踏まえ、『統一要求基準』の策定に向けた検討」を進める。

26春闘の統一要求基準の策定にあたっては、「全組合が創意工夫をもって『さらなる収入の向上』に最大限取り組む」こととし、営業職員関係は「『ベストアドバイザー活動』に対する評価を高めることで『実質的な収入の向上』に取り組む」こと、内勤職員関係では「引上げ率を目安として掲げ、『年間総収入の向上』に取り組む」方向性を決定。これを2026春闘の基本スタンスとして、労使協議会で生保協会会長に申し入れたほか、諸会議や単位組合オルグ等で共通認識の醸成をはかった。

情勢変化のなか活動効率や生産性を高められる環境の整備を/営業職員

大会で報告された「2026春闘の成果と課題」によると、賃金の比例給要素が大きい営業職員の水準改善については、顧客との接点の確保・拡大が難しくなっていたり、各種デジタルツールを柔軟に取り入れた働き方が求められるなどといった営業職員の活動や生活に影響を与える情勢変化のなかで、厳しい活動を余儀なくされていることを踏まえ、営業職員が「募集活動を中心とした活動量を確保するとともに、各種活動にも専心して取り組むことができるよう、活動効率や生産性を高められる環境の整備に向け、『営業支援策の充実』と『賃金改善』により『実質的な収入の向上』をはかる」こととした。

なお、営業職員を取り巻く環境変化に関して、堀委員長はあいさつのなかで、様々な判断をAIに相談する人が増えている状況に触れ、「AIに助言を求めた結果として、生命保険の見直しや解約するケースも残念ながらあると聞く」と話した。そのうえで、「こうした時代には、AIがどのような助言をするかを意識することも必要かもしれないが、私たちが本当にめざすべきことは、AIに生命保険は必要と評価されることではなく、例えAIが節約の対象として生命保険をあげたとしても、お客様に『私や家族にとっては欠かせない』『担当者を信頼しているから、この保障は続けたい』と思ってもらえる関係を結ぶことが重要」だと説明し、組合員の働きがいの向上と生保産業の信頼につながる取り組みを進めていく考えを強調した。

各組合が「課題認識等に応じた幅広かつ主体的な要求を行った」結果、月例給与では「営業職員が日々の活動・努力が反映される労働評価をめざし」、全10組合が取り組み、「支給規定上の改善」に関わる回答を6組合が獲得したほか、「新契約活動に対する労働評価」(8組合)や「お客さまサービス活動に対する労働評価」(3組合)、「採用・育成に対する評価」(4組合)、「臨時・特別措置の実施」(5組合)の回答を得た。

「営業職員の頑張りに報いることができる支給規定であることが重要」との課題認識で「現行水準の確保・向上」をめざした臨時給与でも、各組合が現行水準を確保しつつ、4組合で「支給規定上の改善」の回答を引き出している。

中長期的視点での資格・給与・雇用の安定化を

こうした結果について「成果と課題」は、「各組合がそれぞれの課題認識に基づき積極的な取組みを展開」したことで、「実質的な収入の向上につながる幅広い内容の回答を引き出すことができた」などと評価した。そのうえで、今後の課題として、「営業職員の処遇の魅力度向上をはかる観点から、他産業と比較しても、働きに見合った収入が見込め、働きがいやモチベーションの向上につながるものとなっているか」を検証する必要性を明記。さらに、「安心して長く働き続け、お客さまに寄り添った活動を実践していくためには、中長期的視点での資格・給与・雇用の安定化についても検討・実施していく必要がある」ことも指摘している。

前年比1組合増の7組合で「全層一律の引上げ」を獲得/内勤職員

内勤職員の賃金改善は、統一要求基準として、「組合員の生活の安定・向上」と「『人への投資』を通じたモチベーション・働きがいの向上」、「個人消費の拡大・下支えを通じた『経済の好循環実現』」をはかる観点から、「創意工夫をもって『年間総収入の向上』に取り組む」方向性を確認したうえで、年間総収入で3%以上(月例給与のみで取り組む場合は5%程度)を引き上げ率の目安に示した。

こうした「統一要求基準」を踏まえ、月例給与の引き上げに関する要求を13組合、臨時給与で11組合、その他は5組合、年収制では3組合が要求を掲げて交渉に臨んだ。その結果、月例給与では狭義ベアの「全層一律の引上げ」を昨年より1組合多い7組合が回答を得た。広義ベアでも「初任給水準の引上げ」と「特定の職種・職位への重点配分」、「パート・契約社員の処遇改善」をそれぞれ2組合が獲得。生活関連手当等についても、「単身赴任手当・帰省手当等の拡充・支給基準の見直し」の回答を4組合が得たほか、「住宅手当の拡充」(1組合)、「その他手当(生産性向上に関する手当)の新設」(1組合)といった回答を引き出した。

また、臨時給与については、規定対応または規定上の引き上げの区分で「全層に対する規定上の引上げ」を4組合、「特定層に対する規定上の引上げ」を2組合、「パート契約社員の賞与の新設」を1組合が獲得。特別対応でも、5組合が「特別対応分の確保・向上」、1組合が「特別対応の本規定化」の回答を得ている。

各種一時金については、「健康増進関連、生活維持・向上に対する手当・一時金の創設・拡充」(2組合)や「育児・介護等による休職者をフォローした従業員に対するサポート手当・一時金の創設・拡充」、「各種資格取得手当・一時金の創設・拡充」(各1組合)の回答がみられたほか、年収制でも、「特別対応分を含めた現行水準の引上げ」を1組合、「昨年を上回る水準の昇給原資獲得」を2組合が引き出している。

組合員の期待・納得感に応える統一要求基準の検討を

こうした結果に対し、「成果と課題」は、「各組合において精力的な交渉が展開された結果、組合員の頑張りに応えるとともに、組合員の生活の維持・向上をはかるための最大限の対応が示された」と評価する一方、今後の課題として「積極的な賃金改善の流れを一層加速させ、狭義・広義ベアをはじめとした創意工夫ある取組み」の重要性を指摘。その推進に向けて、「引き続き精緻な内勤職員の賃金データを収集・分析の上、他産業の賃金データ、要求根拠等も参考にしつつ、組合員の期待・納得感に応える統一要求基準を検討する必要がある」と強調している。なお、年間総収入ベースで3%程度を目安とする統一要求基準を掲げた結果、「7組合が3%以上の引上げに資する成果を獲得した」という。

27春闘も全組合が統一して賃金改善などの「賃金・制度関係の取組み」を展開

こうした結果を踏まえ、大会では2027春闘の基本的な考え方や取り組み課題を含めた「総合生活改善闘争・基本方針」を確認した。

基本方針は、2027春闘の取り組み課題について、「『賃金改善』をはじめとした『賃金・制度関係の取組み』を全組合が統一して取り組む『統一取組み課題』」に設定。「『誰もが安心と働きがい・生きがいをもてる職場の実現に向けた取組み』『DEI(ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン)に関する取組み』を各組合の課題認識に基づき取り組む『主体的取組み課題』」に位置づける。

そのうえで、「賃金・制度関係の取組み」に関しては、「業界情勢、一般情勢、労働界の動向、組合員の期待・納得感等を十分に踏まえ、営業職員・内勤職員委員会を中心に検討を行い、(来年1月予定の)中央委員会において『統一要求基準』を決定する」とした。

「全体として4年連続で賃上げを実現」(堀委員長)

堀委員長はあいさつで、26春闘の結果について「全組合が創意工夫を持ってさらなる収入の向上に最大限取り組んだ結果、営業職、内勤職員ともに多くの組合が収入の向上につながる成果を獲得し、生保労連全体として4年連続で賃上げを実現できた」などと評価した。

役員改選では、堀委員長(第一生命)が再選。松田惣佑書記長(日本生命)が退き、新書記長には市川勝也副書記長(明治安田)を選んだ。