ベアなどの「実質的な賃金改善額」は加重平均で1万1,350円・3.66%/サービス連合
2026年8月5日 調査部
旅行会社や宿泊業、航空貨物運送業などの労働組合が加盟するサービス連合(櫻田あすか会長、4万1,000人)は7月27日に記者会見を開き、26春闘の結果を公表した。6月19日現在で集計した44組合のベアなどの実質的な賃金改善額は、加重平均で1万1,350円、3.66%となり、賃金改善額、改善率ともに3年続けて過去最高の水準を更新。櫻田会長は、「労使で『人への投資』という共通認識を持って、その働きに報いるということが数値となってあらわれた」などと評価した。なお、会見では23日に開いた定期大会の内容も説明した。
定期昇給込みの賃金改善は加重平均で1万7,375円・5.57%
2026春季生活闘争でサービス連合は、賃上げ要求について「とりわけ生活の基礎となる月例賃金にこだわり、地域別最低賃金の上昇率や他産業との格差是正を意識し、物価上昇に生活向上分を加えた6.0%(1万9,984円)の改善に取り組む」方針を掲げた。
6月19日までに要求書を提出した組合は109組合。そのうち、93組合が賃金改善など何らかの項目で合意した。賃金改善については、同日現在で集計した44組合の定期昇給込みの賃金改善額は加重平均で1万7,375円、改善率は5.57%となり、いずれも過去最高だった25春闘(34組合で1万6,351円・5.32%)を上回った。44組合中15組合が「定期昇給と併せて6%以上」の賃金改善に合意したという。
合意結果を業種別にみると、賃金改善額はホテル・レジャーの21組合が1万6,669円・6.13%(25春闘は15組合で1万3,964円・5.34%)。ツーリズム・フォワーダー(国際貨物利用運送事業者)の23組合が1万7,669円・5.33%(同19組合で1万7,244円・5.31%)となっている。
サービス連合では、「ベースアップまたは賃金カーブを維持したうえで、賃金制度で定められた改定以上に賃金を引き上げること」を「実質的な賃金改善額」と定義している。この実質的な賃金改善額をみると、全体の改善額は加重平均で1万1,350円、率は3.66%で、前年(1万918円・3.54%)より高い。業種別の改善額はホテル・レジャーが1万1,789円・4.33%(同9,141円・3.49%)、ツーリズム・フォワーダーは1万1,167円・3.38%(同1万1,583円・3.56%)だった。
夏期一時金は前年同期比0.15カ月増の1.74カ月
年間一時金の平均支給月数は、6月19日現在で集計できている33組合の単純集計で、前年同期を0.02カ月下回る3.34カ月となった。業種別では、ホテル・レジャー(22組合)は同0.07カ月増の3.10カ月、フォワーダー(5組合)も前年を0.51カ月上回る3.81カ月となったが、ツーリズム(6組合)は3.80カ月で前年同期を0.09カ月下回った。
夏期一時金の平均支給月数では、全体(72組合)の単純集計は前年同期比0.15カ月増の1.74カ月。業種別では、ホテル・レジャー(37組合)は同0.04カ月増の1.46カ月、ツーリズム(26組合)も前年同期より0.33カ月増の2.07カ月となったが、フォワーダー(9組合)は前年と同じ1.92カ月だった。
賃金改善は額・率とも3年連続で過去最高数値に
こうした結果をふまえ、サービス連合は「2026春季生活闘争のまとめ」で賃金改善について、「集計可能な加盟組合による賃金改善額・賃金改善率は、3年連続で過去最高の数値となり、賃金改善が当たり前となる産業への流れを作り出すことができた」と評価。一時金についても、「年間協定を締結した加盟組合の平均は、現時点においては、前年を下回ることとなったが、夏期一時金は、前年を上回る水準となった」と明記した。その一方で、「加盟組合の中には、賃金改善が定期昇給のみや地域別最低賃金への対応など限定的な改善結果に留まる組合や、企業業績の影響で安定した一時金の支給が困難な組合も散見される」とも記して、賃金や一時金の改善が加盟組合全体に波及しきれていないことを課題にあげた。
ポイント年齢別最低保障賃金の合意が中途採用の賃金水準を底支え
また、契約社員やパートタイマー等の待遇改善については、36組合が賃金改善に合意。サービス連合全体での契約社員やパートタイマーの賃金改善額は、集計可能な23組合の加重平均で7,318円、改定率は3.52%となった。一時金についても45組合が合意し、サービス連合全体での契約社員やパートタイマーの一時金は、集計可能な23組合の単純平均で年間2.40カ月、夏期一時金1.47カ月となっている。
産業別最低保障賃金では、地域別最低賃金を上回る企業内最低保障賃金を締結した組合も含めて35組合が合意に至った。ポイント年齢別最低保障賃金についても、一部のポイント年齢や雇用形態を除くなどの条件付きで合意した加盟組合も含め、23組合が回答を得ており、サービス連合は「各企業で積極的におこなわれている中途採用の賃金水準の底支えに繋がった」としている。
カスハラ対策への対応や勤務間インターバルの導入・拡大も
年間総実労働時間1,800時間の実現を意識した取り組みでは、7組合が休日数の増加など所定労働時間の短縮に関して合意したほか、5組合が半日年休や時間単位年休、積立年休の拡大など年次有給休暇の取得拡大、36協定の改定や労働時間管理の徹底などの時間外労働・休日労働の縮減等の回答を得ている。
このほか、育児と仕事の両立に関連した制度拡充に3組合、高年齢者の労働条件の改善にも7組合が合意。カスタマーハラスメント関連では、心理的な不安の解消に向けた対応で合意した加盟組合が3組合、勤務間インターバル制度の導入やインターバル時間の拡大に合意した加盟組合も4組合あった。
組合員への「働きに報いることが数値になってあらわれた」(櫻田会長)
櫻田会長は、26春闘で賃金改善額・率ともに過去最高を更新したことや、労働諸条件に一定の前進がみられたことについて、「労使で『人への投資』という共通認識を持って、その働きに報いるということが数値となってあらわれた」などと評価。そのうえで、「賃金だけではなく、労働時間や両立支援、ハラスメント対応などに関しても、それぞれの加盟組合が課題と思っていること、そしてサービス連合としても方針に掲げたものに則って交渉した」と述べた。
「賃金実態調査」ですべての加盟組合の実態把握を目指す/定期大会
記者会見に先立つ7月23日、サービス連合は都内で定期大会を開催。昨年の大会で決めた「2025~2026年度運動方針」の中間まとめを行うとともに、労働環境の向上や組織拡大などの方針の柱の補強内容を確認した。27春闘方針の策定にむけては、「35歳年収550万円」の中期的な賃金目標を達成する加盟組合が増加傾向にあるなか、若年層重視の賃金改善により中堅層の賃金カーブが緩やかになってきていることに焦点を当てて「35歳、40歳、45歳と年齢に応じて一定程度の賃金カーブが維持されるべき」などと指摘。加盟組合の実態を把握する各種調査の提出率を高めることに注力していく考えを強調した。
若年層重視の賃上げで賃金カーブが年齢とともに緩やかに
方針の補強にあたっては、「誰もが働きたい、働き続けたいと思えるようなサービス・ツーリズム産業の実現」を目指す労働環境の向上について、「中期的な賃金目標『35歳年収 550万円』を達成する加盟組合が増加傾向にある」一方で、「若年層に加重した賃上げから賃金カーブが年齢とともに緩やかになっている」傾向がみられることから「40歳、45歳の目標感を設定して取り組む」とした。
根強く残る「病気などのために残存日数を意識した」年休取得の傾向
「年間総実労働時間1800時間」の実現にむけても、「年間総実労働時間実態把握について加盟組合の提出が5割程度に止まっている」点に着目。「まずは実態把握をしっかり実施し、客観的な数値をもって加盟組合それぞれの目標設定をおこない、取り組みを進めていく」などとしている。また、健康管理に資する休暇の取り扱いに関して、「積立年休制度の設定や取得要件拡大へ取り組む加盟組合が増加傾向にある」一方、「年次有給休暇取得については、本来の目的である、リフレッシュや余暇の為ではなく、病気などのために残存日数を意識して取得する傾向も根強く残っている」ことを指摘。そのため、「シックリーブ休暇(病気のための有給休暇)の法制化にむけた政策課題とすることも視野にいれつつ取得率向上へ取り組みを強化していく」考えを示している。
本部の伴走型支援強化で未加盟組合の組織化やオルグ育成の加速化を
組織拡大については、① 企業内組織拡大の徹底 ② 関連企業の組織化 ③ 未組織企業・未加盟組合の組織化 ④ オルガナイザーの育成――を柱とする運動を継続。とりわけ、今後はサービス連合本部による伴走型支援を強化し、未加盟組合の組織化やオルガナイザーの育成などを加速する。
賃金や労働時間などの実態調査の提出率を高める
組織強化では、加盟組合に対し「担当の専従者を配置するとともに、地域間および業種間での連携強化をはかる」ことで組合活動の活性化を進めてきた。今後、加盟組合の支援について、「様々な実態把握(賃金実態調査、労働条件調査、総実労働時間実態把握、組織実態調査、組合活動調査)は、加盟組合の活動に資するためにおこなう」との狙いを改めて徹底し、提出率を高める。補強方針は、ほかに産業の発展を見据えた政策の策定・実現や、ジェンダー平等の取り組みによる多様性・包摂性の実現なども掲げている。
27春闘でも「他産業との格差是正を意識して取り組む」
また、大会では「2026秋闘方針・2027春季生活闘争方針策定にむけて」も確認した。26春闘の賃上げの結果を「転換点として踏み出した2024春季生活闘争、正念場として踏ん張った2025春季生活闘争の流れを継続すべく、物価を上回る実質賃金の向上にむけ、労務費を含めた適正な価格転嫁と適正取引の実行を意識して取り組みを進めた結果、集計可能な加盟組合の賃金改善率は、3年連続で5.0%を上回る成果となった」などと概観。さらに、「年間総実労働時間1,800時間」や「ジェンダー平等による多様性・包摂性」の実現、「従業員の健康管理」の取り組みでも、「要求基準を達成する加盟組合があるなど、一定程度の成果に繋がっている」とした。その一方で、「賃金、一時金の合意水準や労働条件の合意内容にばらつきが出はじめている」ことにも触れ、基幹産業としての労働条件向上を掲げるなかで、「賃金改善額や改善率、一時金の支給カ月数、年間総実労働時間数など、他産業との格差是正は、意識して継続的に取り組む必要がある」とした。
賃金実態調査の結果を活用して産業間格差の是正を
加えて、「労働集約型産業であることから、これまでの経験や知見が重要」だと指摘。「35歳、40歳、45歳と年齢に応じて一定程度の賃金カーブは維持されるべき」などと各種調査での実態把握を意識する必要性を訴え、27春闘にむけて「すべての加盟組合が中期的な賃金目標『35歳年収550万円』への早期実現のため実態把握として『賃金実態調査』へ取り組む」考えを示した。調査結果に基づく「指標」を活用することで、他産業との産業間格差の是正を意識し、物価上昇を上回る実質賃金の向上を図る姿勢を鮮明にしている。


