職場の賃上げと公定価格引き上げの取り組みを両輪で推進/日本医労連定期大会

2026年7月31日 調査部

日本医労連(佐々木悦子委員長、13万7,000人)は7月21~23日の3日間、栃木県宇都宮市で定期大会を開き、2026年度の運動方針を決めた。方針は、① いのち・くらしまもるケア労働者にふさわしい大幅賃上げの実現 ② 夜勤交替制労働の実効ある規制と大幅増員、働くルールの確立 ③ いのちまもる社会保障の拡充、安全・安心の医療・介護の実現 ④ 憲法改悪阻止・戦争法廃止、災害復興、原発ゼロ、核兵器廃絶など、いのちと平和を守る政治の実現めざす国民共同の取り組み ⑤ 組織強化拡大を共済事業と両輪で取り組み、20万人医労連をめざし18万人の早期達成、労働組合と共済事業の拡大・強化――を重点課題に設定。大幅賃上げでは、ストライキを背景に「職場での賃上げのたたかいと公定価格引き上げの取り組みを両輪で進める」姿勢を強調している。

ベアの平均額は5,952円・2.07%(6月11日現在)

日本医労連は、26春闘で「月額平均5万円以上、時間給300円以上」の賃上げ要求を掲げた。回答指定日を3月11日に設定。翌12日にはストライキを配置し、要求の前進を図るとともに、改めて「報酬の10%以上引き上げ」を求めていくことも提起して交渉を展開している。

26春闘の集約をみると、要求書は5月11日時点で462組合の約6割(276組合)が提出している。要求に対する回答状況は、6月11日時点で249組合(52.6%)が回答を引き出し、そのうち平均賃上げ額(定昇平均)の回答があったのは133組合(53.4%)、ベア回答を引き出したのは81組合(32.5%)。ベアの平均額は5,952円、率で2.07%となっている。定昇込みの基本給平均額は、6,400円(2.45%)、所定内手当は87組合が引き出して平均9,846円(2.85%)となり、全体平均は9,823円(3.21%)。臨時・パートの賃上げ回答は50組合から示された平均額が57円と「低水準であることは否めない」状況だ。

社会的役割にふさわしい賃金水準の実現を

方針は大幅賃上げの実現について、「25春闘以降、要求額を引き上げて賃金闘争をすすめている」が、「コロナ禍以降、極めて不十分な引き上げにとどまっている」などとして、「その責任を果たすことを経営者と政府に引き続き強く求める」ことを強調。医療・介護分野の賃金が「女性差別型賃金の影響をのこし、とりわけ看護や介護は、典型的な『ねたきり賃金』になっている」こともあわせて指摘して、「医療・介護労働を正当に評価した『社会的役割にふさわしい賃金水準』を実現する大幅賃上げに必要な公定価格の引き上げと財政保障を要求していく」姿勢を鮮明にした。

なお、26春闘では、「2.5カ月+α」を統一要求とした夏季一時金の回答が、正職員の単純平均で1.570カ月・39万9,863円(6月11日時点)と、支給額では前年に比べて3万36円マイナスとなっている。方針は、月例賃金を上げる一方で一時金を削減するケースも散見されるとして、「年収ベースでの賃金水準の改善・確保を追求する」必要性も訴えている。

ストを構えた組織は戦術が高まり成果を勝ち取っている

一方、26春闘では、ストライキ権を確立したのは376組合、ストを配置して交渉に臨んだのは138組合、ストを決行したのは111組合だった。この結果については、「全体としてストライキへの結集はまだ十分とは言えないが、ストを構えて大幅賃上げの実現を迫る議論を職場でつくり出せた組織では、戦術が確実に高まり、実際にストによって成果を勝ち取っている」と評価。「こうしたたたかいを広げることが産別全体の成果につながる」などと主張している。

ベアは限定的で賃上げ幅も不十分

また、ストライキに関して方針は、「25春闘以降、ストを背景にした職場での賃上げのたたかいを土台にして、公定価格の10%以上の引き上げを求める取り組みをすすめてきた」ことが、「物価高騰や人件費増への対応を求める経営団体の動きとも重なり、補正予算による全額公費での賃上げ対策や30年ぶりの大幅な診療報酬の引き上げや賃上げを目的とした介護報酬・障害福祉サービス等報酬の臨時改定による引き上げを実現した」などと一定評価する一方で、「依然としてベースアップによる賃上げは限定的で、多くは手当によるもの」「賃上げ幅も『ふさわしい賃金水準』どころか、これまでの遅れを取り戻すにも不十分」などと断じて、「引き続き、職場での賃上げのたたかいと公定価格引き上げの取り組みを両輪で進める」重要性を強調している。

「夜勤規制と大幅増員をめざすアクションプラン」の取り組みを継続

大幅増員、働くルールの確立については、昨年の大会で提起した「夜勤規制と大幅増員をめざすアクションプラン」の2年目の取り組みとして、夜勤学習と国会請願署名の継続を明記した。当初、2年目の請願署名の目標を100万筆としていたが、「夜勤学習が職場まで十分に広がっておらず、1年目の署名の到達も3割弱にとどまっている」ことから、「夜勤学習に引き続き重点を置きつつ、署名の取り組みを内・外に広げる」として、署名の目標を1年目の60万筆に据え置く。

2交替制シフトを無原則に広げない取り組みも強化

また、「経営者が無原則に2交替制シフトを広げないために協定の締結、点検等に積極的に関わる」ことも指摘。日本医労連の「夜勤改善の手引き」や、厚労省の「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」および「勤務環境改善マネジメントシステムに関する指針」などを活用して、「労働時間管理体制の明確化、始業前残業など不払い労働の根絶、夜勤協定の締結・順守、長時間夜勤の改善と正循環3交替勤務シフトへの切り替え、夜勤専属配置の原則禁止、休憩・仮眠の確保、妊娠者の夜勤免除の徹底など、具体的な要求を出して職場からのたたかいを強める」方向性を提示した。夜勤実態調査や看護職員の労働実態調査結果に基づく現場実態なども参考に、「月9日以上夜勤や長時間労働の解消、労働時間の短縮、勤務間隔の確保、休日・休暇の取得や諸権利の行使などに必要な人員を職場ごとに明らかにして増員を要求する」考えを打ち出している。

紹介・派遣会社の利用や「スポットバイト」の規制強化を

働くルールの確立では、人員不足で紹介・派遣会社を利用せざるを得ない医療・介護事業者の増加や、現場に単発バイトを斡旋する「スポットバイト」が広がっている状況にも言及。前者については、「高額な紹介料が経営を圧迫し、賃上げの財源を奪っており、回りまわって国の医療費や国民の保険料が営利目的の紹介・派遣会社に渡ってしまう」として規制強化を要求。後者に対しても、「情報共有も不十分なままに、初めての医療機関・施設でケアが行われるリスクが問題となっており、仮に事故が起きた場合でも、その責任は施設側とバイト本人が負うだけで、スポットバイトの業者には法的責任が発生しない」ことを問題視して、法的規制の必要性を主張している。

「特定行為」や「タスクシフト・シェア」への対応も

ほかにも、看護師が医師等の手順書に基づき実施する診療の補助を行う「特定行為」について、「医師が行うべき医行為を看護師へ委譲する」ことは「患者にとっても看護師にとっても危険」だとして反対を表明。医師の業務の一部を他の医療技術職に移管・共同化する「タスクシフト・シェア」の推進に関しても、「メディカルスタッフの人員も増やさずに、さらなる業務拡大の押しつけやそれぞれの資格職の専門性を失わせるような業務委譲には断固反対する」とのスタンスを基本に、現場実態に即した対応を図るとしている。

住民の要求にそった地域医療構想や医療計画を

安全・安心の医療・介護の実現では、現場の医療・介護活動を「正当に評価し、地域最賃や労働者全体の賃金水準引き上げに連動した医療・介護現場の勤務環境改善に資する診療報酬・介護報酬」の必要性を指摘。また、「新興・再興感染症拡大の際にも対応できる病床や集中治療体制の整備、『余力』を持たせた人員配置とそのための診療報酬引き上げなど財政保障を求める運動」の推進も掲げた。

検討が進められている「新たな地域医療構想」にも触れ、今後の医療・介護提供体制が「『患者・利用者の目線で描かれたもの』としてはいるが、限りある人材等のもとで『医療・介護提供体制の最適化・効率化』がうたわれており、さらなる医療・介護の削り込みがすすめられる」ことを危惧。都道府県・自治体に対し、「実態を無視した病床削減をやめ、今後の感染症対策や災害時の医療の確保を考慮に入れて『地域医療構想』を見直し、地域住民の要求にそった『医療計画』を策定するよう要請を強める」姿勢を示している。

18万組織の早期達成に向け労働組合の「見える化」を進める

組織の強化・拡大については、「いのちと平和を守り、社会保障の切捨てを許さない運動を広げ推進するためにも、日本医労連の組織を飛躍させることが必要」だとして、20万医労連・5.5万人共済を目指す構え。まずは、早期の組織数18万人の達成に向けて、全国の加盟組合で2万人にのぼる新採用者の100%加入を目指すほか、「職場を基礎にした組合員との対話(職場討議)」や「要求実現の取り組み」と結合した組織強化・拡大、SNSの有効活用などを通じ、労働組合の「見える化」を重視した取り組みを展開する。