「対話と学びあい」で組織化を進め「労働組合主導の賃上げ・労働条件改善」をめざす/全労連定期大会
2026年7月31日 調査部
全労連(秋山正臣議長)は7月25日から3日間、都内で定期大会を開き、今後2年間の運動方針を決めた。方針は、組織の強化・拡大に関して、「一人が一人の仲間を増やす」という「一歩を踏み出す」考え方を提起。そうした「組合員・労働者の主体的な参加による労働組合運動によって要求実現は可能になる」として、「『対話と学びあい』を全労連運動の文化となるほどにひろげ、ボトムアップ型の組織づくりに向けて具体化を図る」ことなどを打ち出した。賃上げや労働条件改善についても、「当事者の労働組合への組織化を促進し、ともに声をあげることで『労働組合主導の賃上げ・労働条件改善』をめざす」方向性を提案している。役員改選があり、秋山議長が退任。新議長には、黒澤幸一事務局長が就任した。
「対話と学びあい」を全労連運動の文化に
方針は、はじめに「定期大会で提起したいこと」として、① 平和と憲法を守り切り、憲法をいかす政治への転換を図る ② 誰でも、どこでも、どんな仕事でも誇りを持って働き、安心して暮らせる賃金水準の実現をめざす ③ 労働者のいのちと健康が守られ、安心して働き続けられる職場をめざす ④ すべての国民の権利を守る「公共」の実現を――の4つの要求の柱を提案。その実現に向けた運動の基調で、「組合員・労働者の主体的な参加による労働組合運動によって要求実現は可能になる」などとして、「『対話と学びあい』を全労連運動の文化となるほどにひろげ、ボトムアップ型の組織づくりに向けて具体化を図る」ことなどを掲げた。
個々に分断された人間関係を労働組合を通じて結び直す
「対話と学びあい」については、まず労働運動を「新自由主義で個々バラバラにされた労働者の人間関係を、労働組合を通じて結び直していく民主主義の実践であり、資本の支配への最大の対抗策」と整理。「知識としての学びに加え、労働組合運動を通じて要求が前進し、労働者の権利、人権を勝ち取る経験を共有することが大事」だとして、「非正規、女性、外国人、青年、高齢者、性的少数者、障害のある人など弱い立場の人と声をあげ、相互尊重にもとづく対話と学びあいを通じて労働組合でたたかう」ことを主張している。
「一人が一人の仲間を増やす」取り組みを
組織強化・拡大に関しては、仲間を「対話と学びあい」で増やし「150万人全労連にすることで織りなす職場・地域・社会を想像し、『一人が一人の仲間を増やす』一歩を踏み出す」ことを呼び掛ける。「仲間の連帯がつくる、あきらめや躊躇を乗り越える力を引き出すオルガナイザーが必要」だと指摘。「労働組合が果たすべき役割は、仲間を増やすこと」との流れをつくりだしていくことで、「労働組合に結集し、主体として立ち上がる仲間を大勢にする」とした。組織拡大を進めることで、職場では「労使対等な交渉が基本であることがひろがり」、社会的には、「『民主主義と平和』を求める運動の再構築が図られる」などと展望している。
「職場から労働組合をなくさないよう次世代につなぐ」(秋山議長)
大会の冒頭、秋山議長はあいさつで「職場から労働組合がなくなれば、その職場に新たな労働組合をつくることは大変な困難を伴う。何よりも職場から労働組合をなくさないよう、次世代につないでいかなければならない」などと危機感をあらわにしたうえで、「職場に労働組合が存在していることを明確に示し、一緒に取り組む仲間を増やさなければならない」と強調。「組織拡大は正念場だ。職場から組合をなくさないためにも、最大限の奮闘をしよう」と訴えた。
「賃金・労働条件の労使対等決定の原則」の文化を取り戻す
賃上げや労働条件改善については、「労働者が労働組合で要求し、集団交渉で賃金や労働条件を決める『賃金・労働条件の労使対等決定の原則』の文化を日本に取り戻す」運動を構築する。具体的には、① 全国一律最低賃金制度の実現 ② 賃下げなしの労働時間短縮や最低規制の強化 ③ 正規労働者と非正規雇用労働者の差別をなくし、同一労働同一賃金をはじめとする均等待遇の実現――を経済闘争の中心課題に据え、「当事者の労働組合への組織化を促進し、ともに声をあげることで実現させる『労働組合主導の賃上げ・労働条件改善』をめざす」方向性を打ち出している。
すべてのたたかいに「ジェンダー平等の推進」を位置づける
また、こうした取り組みは、「ストライキを背景にしてこそ労使対等で交渉ができる」として、「(仲間を増やし、統一闘争を強化し、ストライキでたたかえる労働組合になるといった)たたかう労働組合のバージョンアップの実践で仲間を増やし、要求の実現をめざす」考えも示した。加えて、「労働者5,828万人のうち、非正規雇用労働者は36.5%、2,128万人(総務省「労働力調査」2025年)。その非正規雇用労働者の7割が女性だ」などとして、非正規や女性労働者の砦となれるよう「『ジェンダー平等の推進』をすべてのたたかいに位置づけ推進を図る」ことも強調している。
「労働力を安売りしない」団結をつくる
賃上げに関しては、「成果や企業利益からでなく労働力の再生産に足る賃金を資本や使用者に払わせる」ことを「焦眉の課題」と言及したうえで、労働組合の力で「賃金が上がる国への転換」を目指す考え方も記載した。「労働者は、『自分たちで自分たちの労働力を安売りしない』と集団で規制し合わないと、個人では経営者の労働力の買い叩きに応じざるを得なくなる」「職場や同産業の労働者に『安く働いても構わない』という労働者があると、規制が効かなくなる」などと説明。その点、「労働力を安売りしない団結体」である労働組合が機能することで、「職場の同僚らに『労働組合で、一緒に労働力の安売りはやめよう』と対話と学びあいをとおして、できるだけ多くの仲間と団結する」ようになれば、改善が見込めるとした。そして、その実現には、「『もうこれ以上の労働力の安売りは止める』との団結の輪を強くし、新たな仲間、新たな労働組合をつくりひろげる」必要があるとして、「『これ以下で労働力は提供できない』と賃上げを要求し、ストライキで実現までたたかうことが、労働組合主導での大幅な賃上げ・底上げをつくる方程式」だと結論づけている。
非正規雇用労働者の組織化と賃上げを実現する「 4カ年プラン」の検討を開始
さらに、非正規雇用労働者の組織化と賃上げをセットで実現させる「4カ年プラン」の検討にも着手する。
組織化については、非正規雇用労働者・女性労働者の組織化を意識した特別体制を構築。各単産および地方・地域組織で「個人加盟ユニオンへの非正規雇用労働者、女性労働者の組織化」を位置づけ、ターゲットを明確にした組織化戦略を策定する。他方、賃上げの目標としては、「低賃金・不安定雇用で働く非正規雇用労働者やフリーランス労働者、男女の賃金格差に苦しむ女性労働者の組織化、ジェンダー平等の推進で『非正規雇用労働者の砦は全労連、女性労働者なら全労連』とのブームをつくるビジョンを構築し、具体化をすすめる」考えだ。
規制の波及と相場形成力を持つ産別労働組合を形成
なお、組織強化に関連して、「企業別労働組合からの脱却と、労働者による規制が横に波及する労働組合構造の形成を展望し、検討を始める」ことも明記した。「産業・地域全体の労働者の賃金・労働条件の決定に影響力をもち、最低賃金や公務賃金、公契約、労働者の立場に立った労働法制の政策などで相場形成力をもつ『産業別労働組合』をめざす」構え。その際、「職場での交渉により、労働条件改善の獲得を制度化させることで同産業職場や波及させる相場づくりを大切にする」ことと併せて、「企業別労働組合では組織できないフリーランスなど広範な未組織労働者の組織化をすすめる産業別労働組合の取り組みも前進させる」とした。
加重平均は前年同期比3,918円増の1万2,386円(3.81%)
大会では、全労連などでつくる国民春闘共闘の賃上げ最終集計の報告もあった。それによると、7月2日までに何らかの回答を引き出した1,064組合のうち、金額もしくは率が明らかになっている有額回答を得た組合は714組合(67.1%)で、「定昇確保」などの言葉による回答を得た組合が350組合(32.9%)だった。
有額回答を引き出した組合の単純平均(一組合あたりの平均)は前年同期比706円・0.30ポイント増の9,986円・3.61%。組合員一人あたりの加重平均では同3,918円・0.96ポイント増の1万2,386円・3.81%となった。加重平均額が1万2,000円を超えたのは1993年以来33年ぶり。また、引き上げ率は32年前の1994年(3.82%)に並ぶ水準だという。
加重平均の賃上げ額を産業別にみると、最高は「農林・水産業」の1万4,954円。続いて、「運輸・通信業」(1万4,650円)、「製造業」(1万3,035円)、「医療」(1万2,711円)などの順だった。ケア労働者については、6月の報酬改定を意識した交渉が上積みにつながった形。「医療」が前年(6,470円)より6,241円高く全体平均を上回ったほか、「介護・社会福祉・保育」も前年比240円増の1万1,396円だった。
前年実績と比較可能な588組合の単純平均額は9,854円で前年実績を1,175円上回る。率で比べられる314組合の賃上げ率では、単純平均で3.62%と、こちらも前年を0.11ポイント上回った。なお、前年実績を超える回答を引き出した組合は、額で312組合、率では153組合だった。
非正規労働者の時間額は前年比7円増の53.1円
非正規労働者の賃上げ状況については、15単産232組合から474件の実績報告が寄せられた。時給制では282件の報告があり、そのうち引き上げ額が判明している229件の単純平均は53.1円、率では49件の平均で5.30%。前年の最終実績を額で7円、率は0.67ポイント上回った。月給制は103件の報告があり、引き上げ額は91件の単純平均で6,617円、率では36件の平均で3.15%となった。時給制同様、前年の最終実績を額(893円増)・率(0.36ポイント増)ともに上回っている。
なお、企業内最低賃金協定の改定状況は、8単産74組合から時間額67件、日額18件、月額24件の報告があがっている。時間額の改定では、新協定額の報告があった63件の単純平均が1,187円、日額では同15件の平均9,811円、月額は同21件の平均が18万9,900円となっている。
秋山議長は26春闘を振り返って「全労連は、最低賃金を全国一律に、そして生計費調査を踏まえた大幅引き上げを訴え、中央の目安を大幅に上回る引き上げを地方労連の奮闘で勝ち取ってきた。この流れが、春闘での賃上げにもつながり、3年連続で大幅な引き上げを実現した。労働組合があればこそ、要求が前進した」などと評価。そのうえで、27春闘について「すべての組合員からアンケートで要求を集約し、その実現に向け、準備を進めよう」と呼び掛けた。
黒澤幸一事務局長が新議長に
役員改選では、秋山議長(国公労連)が退任し、新議長に黒澤幸一事務局長(日本医労連)が選ばれた。新事務局長には、九後健治氏(国公労連)を選出した。
大会後の会見で黒澤新議長は、組織の強化・拡大について「職場に近い地方・地域組織が学びの場、トレーニングの場になっていくような仕組みの構築を提起しており、そういったことを通じて、一人ひとりの組合員が主体的に労働組合活動に参加する状況をつくっていきたい」などと述べ、方針で掲げる「対話と学びあい」の運動を推進していく決意を表明した。


