「特別手当の業績連動方式の導入」に関わる論議を開始/NTT労組大会

2026年7月29日 調査部

NTT東西やドコモ、データなどNTTグループ企業の労組で構成する、NTT労働組合(十川雅之委員長、約14万1,000人)は7月14日、都内で定期大会を開き、昨年の大会で確認した向こう2年間の中期運動方針を補強する「2026年度運動方針」を決定した。補強方針は、「特別手当の業績連動方式の導入」への対応に言及。一定の論議期間の担保や下限の設定などの「組合主張を盛り込むとともに、基準率の設定を含め、『さらなるモチベーション向上、チャレンジ意欲の促進につなげる』との会社姿勢を確認した」ことから、会社提案を受けて労使間議論を始めたことを明らかにしている。方針の審議でも、特別手当に会社業績を反映する仕組みに関して、丁寧な議論を求める意見が相次いだ。

大会では昨年、「2025~26年度中期運動方針」の運動の重点に据えた、① NTTグループ事業および雇用の安心・安定と労働条件の維持・向上に向けた取り組み ② 組織強化・組織改革の取り組み ③ 福祉活動の充実・強化 ④ 政治活動の推進――について、これまでの経緯を踏まえた補強方針を確認した。

「中期経営戦略」の実現に向けた会社対応を実施

補強方針は、NTTグループ事業に対する取り組みについて、「中期経営戦略」の実現に向け、「事業の基盤となる安定的かつ高品質な通信サービスの提供をはじめ、① バリュー分野におけるAIを軸とした利益成長加速 ② コネクティビティ分野におけるAIネイティブなインフラへの転換 ③ 成長の継続に向けた戦略的な先行投資--等に対し、中長期を見据えた事業運営および人財の確保・配置・育成の充実を含め、会社対応を行う」ほか、「安全労働は事業運営のすべてに優先する」との基本認識の下で労働安全衛生を徹底・強化することを指摘。情報通信・情報サービス政策についても、総務省の審議会・研究会等の論議動向を注視し、必要な対応を行うとしている。

「特別手当の業績連動方式の導入」に関する労使間論議を強化

雇用の安心・安定と労働条件の維持・向上に向けた取り組みでは、「特別手当の業績連動方式の導入」への対応に言及した。補強方針は、会社側の同方式導入の主張に対し、「『特別手当に会社業績を反映する仕組み』が組合員の処遇に関わる極めて重要な案件であることに鑑み、① 組織的論議が必要 ② 特別手当には生計費の側面もあることからセーフティネットが必要不可欠――との認識」に立って会社対応を強化してきた結果、① 一定の論議期間を担保した ② 「下限を設定する」との考え方を引き出した――等の「組合主張を盛り込むとともに、基準率の設定を含め、『さらなるモチベーション向上、チャレンジ意欲の促進につなげる』との会社姿勢を確認した」などの経緯を記載。その後、主要会社(NTT、NTT東日本、NTT西日本、NTTドコモ、NTTデータグループ)から会社提案を受け、労使間議論を始めたことも明記している。今後、中央本部は「会社業績の向上に向けた具体的な戦略を強く求めるとともに、① KPI ② 基準率 ③ ペイアウトカーブ――等について、労使間論議を強化する」構え。

制度導入の前提として「会社業績を向上させる戦略を示すべき」(十川委員長)

十川委員長はあいさつで、特別手当の業績連動方式の導入に触れ、「会社は2024年秋から『特別手当に会社業績を反映する仕組み』の必要性を主張してきた。当初の会社検討内容に対しては、組合員の安心の観点から、論議期間の担保とセーフティネットの設定等、一部修正を求めてきたところ、一定の条件が整ったことから、先般、正式に会社提案を受け、労使間論議を開始した」と説明。会社側には制度導入の前提として、「会社業績を向上させるための具体的な戦略を示すべきであり、それが経営責任だ」と強く訴えていることも付言した。今後、「『戦略』と『制度』の具体的内容をセットで説明し、組織的論議が可能となるよう会社対応を強化していく」決意を表明している。

「人事・人材育成・処遇等の見直し」の適正運用や「60歳超え雇用・処遇」の対応も

なお、労働条件の維持・向上に関しては、組合員の働きがいやモチベーションの維持・向上、自律的なキャリア形成について、2023年4月から導入された「人事・人材育成・処遇等の見直し」の「適正な制度運用が極めて重要」との認識から「組合員・社員の人事制度全般に関する理解度の向上を図りつつ、課題等を把握した上で、会社対応を行う」ほか、「60歳超え雇用・処遇の在り方に関するNTT労組の政策」に基づく対応も引き続き進める姿勢を打ち出している。

相次ぐ特別手当の業績連動方式導入に対する不安払拭やモチベーション維持を望む声

方針の審議では、特別手当に会社業績を反映する「業績連動方式」の導入について、慎重な労使間論議を求める意見が相次いだ。

西日本本部は、職場から不安の声が寄せられている状況を報告したうえで、「NTTグループとして導入を必要とする考え方を明確にしなければ組合員の納得感にはつながらない」などとして、懸念する課題の解消や今後の進め方の明確化などを要請。ドコモグループ本部も、「提案は組合員の生活に直結する極めて重要な課題であり、組合員からの関心は高い」と述べて、職場から事業の成長戦略に向けた対応や、具体的内容の早期の解明などについて多くの質問が出されている現状を説明。「組合員の不安払拭を図るとともに、モチベーションを担保するためにも、上限・下限設定の具体化や毎年労使で認識を合わせる場の構築の内容を早期に明らかにして欲しい」などと話した。

「組合員との対話を深める組織強化の機会」との意見も

データ本部は「業績連動方式の導入によって特別手当が自動的に決まり、組合の交渉力が弱まることになってはならない」としたうえで、「本件は単なる制度変更ではなく、組合員のモチベーション向上と組合が経営に関与する仕組み作り、さらには組合員との対話を深める組織強化の機会とすべきだ」などと主張した。

25春闘総括を踏まえ「グレード賃金」への配分増を追求

一方、大会では、2026春闘の最終総括も確認した。25春闘を振り返ると、NTT労組は「月例賃金(グレード賃金および成果手当)3%(主要会社正社員一人平均1万2,000円相当)の改善」を要求。最終的にグループ各社が「月例賃金一人平均1万2,000円改定(改定率3.08%)」を回答し、NTT労組は「主要会社の正社員の月例賃金改善については、『満額回答』を引き出すことができた」などとして妥結・決着を図った。春闘総括では、「物価上昇への対応とともに、組合員のモチベーション向上等につながるものであり、組合員の期待に応え、労使の社会的役割・責任を一定果たしたもの」との認識を示す一方、「グレード賃金」が配分増に至らなかった点について「受け止めざるを得なかった」としたうえで、「配分についての政策検討と組織的な認識合わせ」の必要性を課題にあげていた。

26春闘では、「物価上昇に賃上げが追い付かず、『生活が良くなった』という実感が社会全体に広がらない中、『賃上げノルム』の確立に向けた重要な局面であり、労働組合としての社会的役割・責任の発揮が求められる」として、月例賃金改善の要求基準を物価上昇分2.75%に生活向上分1%を加えた3.75%(主要会社正社員・1万5,000円相当)に設定。そのうえで、25春闘の総括を踏まえ、主要会社正社員等の賃金改善では「グレード賃金」等への配分増を追求する姿勢を強調した。

一人平均2,000円相当のグレード賃金の改善を引き出す

「グレード賃金」の配分をめぐっては、「安定的に支払われる唯一の基本賃金として、組合員の生活向上と『底上げ』につながる」との組合の要求に対し、会社は「まずは特別手当の増加分を含めた『総額』が賃金改定との認識を労使で合わせるべき」との主張を崩さず、交渉は平行線を辿ったという。その後、組合が「原要求にはこだわらないが、月例賃金改善については『昨年水準以上』および『グレード賃金』への配分増にこだわる」との意思統一を図って会社に決断を迫り、最終局面では「特別手当への反映分も含めた『総額』で25春闘を上回る水準(主要会社正社員の『総額』1万3,000円相当)および『グレード賃金』への配分増(特別手当への反映分を含め一人平均『総額』3,000円相当<一人平均2,000円相当>)」の回答を引き出したことなどから、妥結・決着が図られた。

結果について十川委員長は、「結論から言えば満額決着とはならなかった」と述べたうえで、「物価上昇局面における組合員の生活向上を意識するなかで、① 昨年水準を明確に上回る月例賃金改善 ② 『グレード賃金』への配分増による『底上げ』――は必要不可欠であるとの認識のもと、この点にこだわって徹宵体制で労使交渉を強化してきた結果、『総額』で昨年を上回る『1万3,000円』の月例賃金改善、そして、この間700円の改善が続いていた『グレード賃金』への配分増として『2,000円』の改善額を引き出した」などと解説。「会社側の慎重姿勢を跳ね返し、この妥結・決着内容を導き出したことで、組合員の期待に一定応えることができた」と総括した。

2028年夏の参議院議員通常選挙に鈴木良知氏を擁立

なお、政治活動の取り組みに関して、補強方針には、「NTT労組の政治対応の考え方」について、「『立憲民主党』および『中道改革連合』の政策や動向等を注視しつつ、見直しを検討」することを明記。2028年夏に施行される第28回参議院議員通常選挙については、「これまでのNTT労組役員としての経験や情報通信・情報サービス政策に対する知見を踏まえ」、鈴木良知氏(新人・中央本部特別執行委員)を組織内候補(比例代表)として擁立するとした。