26春闘では「一定の社会的役割・責任を果たした」と総括/情報労連定期大会
2026年7月29日 調査部
NTTやKDDIなどの労働組合でつくる情報労連(北野眞一委員長、19万2,000人)は7月15日、都内でWeb併用の定期大会を開き、昨年の大会で決めた中期運動方針を補強する「2026年度運動方針」を確認した。補強方針は26春闘について、妥結水準(5月21日時点)が、「賃上げ分が把握可能な組織において平均1万266円(前年比+1,047円)、平均3.35%(同+0.20%)」と25春闘を上回る改善を引き出していることなどから、「一定の社会的役割・責任を果たした」などと総括した。組織拡大では、「20万労連の早期達成」と「25万労連の追求」に向けた中期的なロードマップとして、「組織拡大アクションプラン(案)」を策定し、来春の中央委員会での決定を目指すとしている。
情報労連が昨年決めた「2025~26年度中期運動方針」は、運動の重点として、① 25万労連の実現に向けた取り組みの追求 ② 加盟組合活動の充実に向けた取り組みの強化 ③ 産別政策の深化と実現に向けた取り組みの強化 ④ 「暮らしやすい社会」の実現に向けた政治活動の推進 ⑤ 社会的価値ある産別運動の展開――の5つの柱を掲げている。
各組織の取り組みを具体化する「組織拡大アクションプラン(案)」を策定
「25万労連の実現」に向けた取り組みでは、「組織拡大は『組織の生命線』」として中期目標に掲げた「20万労連」の早期達成を目指して取り組んできた。だが、4月末現在の組織拡大実績は8,894人で、目標に対する進捗率は53.46%に留まっている。
そこで補強方針は、「引き続き、『20万労連の早期達成』に向けて、職場およびグループ会社全体で集団的労使関係の確立をめざし、各組織の主体的な取り組みを実践する」ことを改めて明記した。本部加盟組織は組織拡大の中心的な役割と責任を担う組織として、未組織グループ・関連会社や60歳超再雇用者を含む有期契約等労働者の組織化に向けた取り組みを徹底・強化。ブロック支部・県協は、加盟組合の「過半数確保」と「完全組織化」を支援する。そして、中央本部はノウハウの共有や全国オルグの派遣などで、各組織との連携を強めるなどの取り組みを展開する。
さらに、補強方針は、「20万労連の早期達成」と「25万労連の追求」に向けた中期的なロードマップとして、「ターゲット企業を含む数値目標や具体的な戦略等、各組織の主体的な取り組みを具体化する『組織拡大アクションプラン(案)』を策定」する考えも打ち出した。「連合方針や各組織との必要な議論を踏まえ、明春の中央委員会での決定をめざす」としている。
「未組織の仲間を組織化してサプライチェーン全体の健全な発展につなげる」(北野委員長)
組織拡大の取り組みについて、北野委員長はあいさつで「政策を実現し、平和を守り、国際連帯を強化するために、労働組合の基盤そのものである組織拡大を一層強化する」スタンスを強調。「とりわけ、未組織のグループ会社・関連会社で働く仲間を組織化し、集団的労使関係を確立し、働く者の声を届け、企業グループ、サプライチェーン全体の健全な発展につなげよう」と訴えかけた。
加盟組合への伴走型支援の継続と早期自立に向けたサポートを強化
加盟組合活動の充実に向けた取り組みでは、中央本部はブロック支部・県協と連携し、「各組織の会議体への参加や春闘激励訪問による労使交渉の促進など多層的なサポートを実施」。ブロック支部・県協も年2回の加盟組合への訪問活動などで「状況把握を図るとともに、ブロック支部単位での会議や勉強会等で春闘情勢の共有等」を行ってきた。一方で、訪問ができていない加盟組合への「接点強化に向けたさらなる取り組みが必要」なことなどから、補強方針は各加盟組合の個々の状況やニーズに即した「伴走型支援」の継続や、新規加盟組合等が早期に自立運営できるようサポートを強化する。
ホームページをリニューアルして社会への情報発信力を強化
人材育成の取り組みでも、加盟組合の活動の活性化に向けた「加盟組合役員研修」や「ブロック支部・県協役員研修」を継続して実施するほか、次代の労働組合活動を担う若年層役員の活躍推進や、「加盟組合・組合員および社会に対する情報発信力の強化策」として、ホームページをリニューアルすることも提示。「全体としては停滞傾向にある」ジェンダー平等推進計画に関しても、「女性執行役員の選出を契機とした組織運営の改善など、一定の前進が見られる組織もある」ことから、補強方針は5月に策定した「『第2次ジェンダー平等推進計画』達成に向けたガイドライン」を活用し、各組織の取り組みを促進する考えを示している。
付加価値の適正分配や適切な価格転嫁の実現に通年で取り組む
産業政策の深化と実現の取り組みについては、ICTS政策を中心に他産別等との政策交流を進めてきた「情報労連 政策提言集(2025~2026年度)」の浸透・実現に向けて、① 連合や他産別組織等との政策交流 ② 組織内議員を通じた政党や関連省庁への対応 ③ ブロック支部との連携による「情報労連・NTT労組自治体議員団」への対応――などの取り組みを引き続き強化。そのうえで、「情報労連 政策提言集(2027~2028年度)」の策定に向けた検討・論議も推進する。
さらに補強方針は、サプライチェーン全体で生み出した付加価値の適正分配や、労務費を含めた適切な価格転嫁の実現に向けて、① 加盟組合における労使協議の促進 ② 受注側加盟組合・企業の実態把握 ③ 通信キャリア企業・通信建設企業等との労使協議――などに通年で取り組むことも掲げている。
「情報労連最低賃金」のあり方の議論を深化
総合労働政策の取り組みでは、「安全かつ健康に働くことができる労働時間の実現に向け、『情報労連・時短目標』を踏まえた労働時間の適正化に取り組む」方針を掲げた。「とりわけ、『つながらない権利(勤務時間外の連絡ルール)』確立に向けては、ガイドラインを活用した意識啓発」などの取り組みを推進。裁量労働制の適用拡大等の動きを「注視する」とともに、10月から適用される「同一労働同一賃金ガイドライン」などを踏まえ、有期契約等労働者の待遇改善に必要な対応も行う。「情報労連最低賃金」の今後のあり方についても、引き続き、法定地域別最低賃金の動向等を踏まえつつ、議論を深める。
ベア分は平均1万266円(3.35%)
補強方針では、26春闘の総括も記載。定昇相当分の確保を前提に「3%以上」の月例賃金改善の実現に強くこだわるなどの要求を掲げた26春闘では、妥結水準が5月21日時点で「賃上げ(ベースアップ)分が把握可能な組織において平均1万266円(前年比+1,047円)、平均3.35%(同+0.20%)となり、2025春季生活闘争を上回る」改善を引き出している。
また、有期契約等労働者の賃金改善を引き出した組織数は25春闘と同水準。一時金で有額回答を引き出した組織数は25春闘を下回った。「情報労連最低賃金協定」および「企業内最低賃金協定」の取り組みでは、「近年の法定地域別最低賃金の引き上げ状況等を理由に協定締結できない企業が一定数」みられる。
働き方の改善については、「労働時間適正化および労働環境改善」に向けた取り組みで、「36協定の年間延長時間の上限の見直し(660時間への変更)」や「年間休日の増加(120日への改定)」、「勤務間インターバル制度の導入」などの回答を引き出した組合があった。デジタル化の進展に伴う働き方の多様化等を踏まえて24春闘から統一的に取り組んでいる「つながらない権利」の確立についても、「『つながらない権利』導入ガイドライン」に基づくアンケート結果を踏まえた施策検討・協議の場の設置等の成果があったほか、「法改正の動向を踏まえた継続議論・現状把握・ルール化に向けた継続協議」とする旨の回答を複数の組合が引き出しているという。
社会全体の「底上げ」に向けた取り組みを継続
補強方針は、こうした結果について「総じて、25春闘に引き続き、多くの組織において、昨年水準を上回る月例賃金改善等を引き出した」などと評価。「とりわけ、全国単組において、格差是正を含めた『賃上げの継続・定着』『全体的な底上げ』につながり得る回答を引き出したことは、一定の社会的役割・責任を果たしたもの」との認識を示した。その一方で、「中小組合が中心となる一部直加盟組合やブロック支部加盟組合の妥結結果は、相対的に低位に留まっている」などと指摘して、「引き続き、サプライチェーン全体で生み出した付加価値の適正分配に向けて、価格転嫁・取引の適正化を推進し、社会全体の『底上げ』に向けた取り組みを徹底していく必要がある」と総括している。
グループ各社の賃金改善が前進/KDDI労組
賃金改善に関する質疑では、KDDI労組がグループ会社の賃金改善の回答状況を紹介。「各社で制度設計は異なるが、一律改善額に注目すれば、KDDIエンジニアリングは1万1,500円、KDDI Biz Edgeは1万2,900円、KDDI Sonic-Falconは1万8,200円と、KDDIの8,000円を上回る回答額を引き出すことができた」などと報告。さらに、KDDI以外の各グループ会社とのサプライチェーン全体の成長に向けて、「価格転嫁や適正な分配の在り方について意見交換を行い、労使で問題意識を共有し、認識合わせを進めることができた」と発言し、賃金改善の波及とサプライチェーン全体の底上げの取り組みの継続を求めた。
サプライチェーン全体を底上げする通信建設業界の特定最賃確立を/通建連合
26春闘で「企業規模間格差の是正」を統一要求に掲げた通建連合も、「多くの組織で月例賃金改善8,000円超の回答を引き出し、一定の成果を勝ち取ることができた。この結果は現場で奮闘する組合員への正当な評価であり、労使交渉の賜物だ」などと話した。その一方で、「通信建設業界は多層的な請負構造に支えられており、春闘で勝ち取った結果が現場の第一線まで十分に還元されていない可能性がある」とも述べ、働く現場で生み出した付加価値が賃金として適切に分配される仕組みの構築を訴えた。そのうえで、「取引適正化や価格転嫁の取り組みを一時的なものに終わらせず、サプライチェーン全体を底上げする最後の砦となるよう、最終目標として通信建設業界の特定最低賃金の確立を目指す」考えも示した。
なお、大会では、第28回参議院議員通常選挙に向けた対応を確認。組織内議員である石橋みちひろ参議院議員の後継として、2028年夏の参議院通常選挙にNTT労組出身の鈴木良知氏を組織内候補(比例代表)として擁立することを決めた。


