全世代のバランスのとれた賃金体系の確立を求める/自治労中央委員会

2026年6月3日 調査部

地方自治体の職員などを組織する自治労(石上千博委員長、68万9,000人)は5月25、26の両日、ウェブで中央委員会を開催し、「当面の闘争方針」を決定した。方針は、好調な民間企業の春闘妥結状況と物価高騰と実質賃金のマイナスを受け、組合員の賃上げを求める声が増していることから、2026人勧期に向けた取り組みについて、昨年に引き続き「若年層~中堅層~高齢層のバランスの取れた賃金体系の確立」を求める考えを示した。石上委員長はあいさつで、「最大の課題は賃金の引き上げ」だと述べ、中東情勢による今後の賃上げへの影響を危惧しながらも「民間春闘における流れを止めないためにも、公務員労働者として賃上げを強く求めていかなければならない」と訴えた。

若年層~中堅層~高齢層のバランスの取れた賃金体系の確立を

中央委員会では、賃金・労働条件改善をめぐる人勧期を中心とした取り組みをはじめ、職場の権利と勤務条件を確立する取り組み、地方自治の確立と質の高い公共サービスの推進などを柱とする「当面の闘争方針」を決定した。

闘争方針は、賃金・労働条件改善をめぐる人勧期を中心とした取り組みについて、上部団体である連合の2026春闘における回答集計(4月17日公表)を引用し、「平均賃金方式で回答を引き出した組合の加重平均は1万6,879円・5.08%と5%台の高水準を維持し、300人未満の中小労組は1万3,394円・4.84%と健闘が続いている」と民間春闘の好調な状況を説明。一方で、国際情勢の悪化により経済の見通しは不透明さを増していることから、「月例給および一時金に関する民調(民間給与実態調査)結果への影響を注視する必要がある」とした。

そのうえで、賃金をはじめとした公務員の労働条件について、「交渉・合意によって決定されるべきものであるとの基本的考え方に立ち、給与改定にあたっては、精確な調査による公平・公正な官民比較を求める」と強調。また、物価高騰と実質賃金のマイナスが続き、組合員の賃上げを求める声が増しているとして、2026年度の賃金については昨年に引き続き、「若年層~中堅層~高齢層のバランスの取れた賃金体系の確立」を求めていくと記述した。

「最大の課題は賃金の引き上げ」(石上委員長)

石上委員長はあいさつで、「最大の課題は賃金の引き上げだ」と冒頭で強調。2026年連合春闘における好調な民間春闘の裏で、中東情勢の緊迫化による物価の高騰などが今後の賃上げに与える影響を懸念しながらも、「実質賃金のプラスを定着させるためには、持続的な賃上げが不可欠であり、民間春闘における流れを止めないためにも、公務員労働者として賃上げを強く求めていかなければならない」と指摘したうえで、今後本格化する人事院との交渉に向けて、「民間の賃上げ結果を公務員賃金にも反映させ、物価高に負けない賃金水準の確保、全ての世代の職員のモチベーションの維持向上の観点から、若年層から高齢層までバランスの取れた賃金体系を確立することを最大の目標として公務員連絡会に結集し、取り組みを強化していく」と述べた。

物価高騰や実質賃金の減少などをふまえた賃上げを要求

闘争方針は2026人事院勧告(人勧)に向けた人事院への要求事項として、賃金については、① 給与勧告に際しては、民間賃金の実態を精確に把握するとともに、長期化する物価高騰や実質賃金の減少を踏まえ、真に生活改善につながる賃金の引き上げを実現すること。また、若年層から中堅層、高齢層のバランスの取れた賃金体系を確立すること ② 一時金については、支給月数を引き上げるとともに、期末・勤勉手当の適正な配分を行うこと。また、官民較差の配分については、公務員連絡会と十分交渉・協議し、合意に基づいて作業を行うこと――の2点を提示した。

また、中長期的な賃金課題では、2025年度人勧に提示された職務・職責をより重視した給与体系などの「新たな人事制度」について、2026年夏に措置の骨格、2027年夏に具体的な内容を示すとされていたが、現在においてその方向性が示されていないことから、「具体的な方向性を速やかに示す」ことを求めるとともに、「公務員連絡会との真摯な交渉・協議に基づく合意を基本とする」と掲げた。

さらに、定年年齢が2023年度から2031年度にかけて、2年に1歳ずつ段階的に引き上げられることを見据えた「60歳前後の給与カーブのあり方」については、「定年を延長した職員のみならず、定年前の職員や再任用職員を含めた中高齢層職員全体の給与水準の改善を行うことを指摘。その際、若年層や中堅層を含めた職員全体に影響を及ぼすことが想定されることから、公務員連絡会との真摯な交渉・協議に基づく合意を基本とする」とした。

公務職場の人員確保には賃金改善が労使の共通課題

石上委員長は、2025年度人勧に自治労が強く求めてきた民間給与の比較対象企業規模が50人から100人以上に見直されたことなどに触れたうえで、「私たちの取り組みの成果もあって、長年の課題が徐々に改善してきている」とし、あらためて要求交渉を行う重要性を強調。また、「物価上昇の中で組合の賃金労働条件改善への期待はこれまで以上に高まっており、初任給格付けや中途採用者の前歴換算の改善など要求し、交渉を重ねれば、勝ち取れることが多くあることは、この間の県本部からの報告でも明らかだ」とし、「公務者職場における人員確保のためには、賃金改善が労使共通の課題」と述べた。そのうえで、2025確定闘争でも要求書提出が2割、交渉も3割の単組が行っていなかったことを指摘して、「単組・県本部・本部が一丸となって、産別全体で地方における自主的・主体的な賃金決定に向けた運動の大きなうねりを作り上げる」ことで賃金労働条件改善を勝ち取っていく必要性を訴えた。

闘争方針は、人勧期闘争にむけた諸行動等の取り組みとして、「県本部・単組は人勧期要求に関わる職場学習会を実施するなどして情報共有と取り組みの意思統一をした上で、職場(集会)決議または団体署名を実施する」としている。

春闘期の職場状況に加えて4月以降の欠員の再点検も

職場の権利と勤務条件を確立する取り組みでは、闘争方針は、すべての単組の共通課題である「人員確保」を最重点課題にあげている。「人員要求は、職員の労働条件に関わる重要な課題であることを再確認し、2026春闘期において各単組で実施した職場点検や、職場単位の欠員や減員の状況、安全衛生委員会で報告された年間の時間外労働、年休・代休の取得状況に加えて、4月以降に生じた長期休職者の状況を再点検し、2026人員確保闘争に取り組む」と明記。6月5~18日を基本的交渉ゾーンに設定するとした。

なお、組織の強化・拡大に関しては、当面の方針に、組合費の引き上げを見据えた「運動と闘争の強化にむけた産別・財政の構造改革(組織等議案)」を踏まえた検討の推進を明記。新規採用者や高年齢層職員、会計年度任用職員等の組織化を図るほか、「単組は組合員との日常のコミュニケーションを強化するとともに、組合の日常活動を伝えるなどして信頼関係を深め」、共済加入を促すなどして脱退の防止に努めることも掲げた。なお、今年からプロジェクトを立ち上げ、各組織の課題整理を進めている全水道との関係についても、「共済事業の統合協議と並行し、将来的な組織統合について協議を進める」方向性を明らかにしている。

カスハラ対策では条例制定と住民への周知などを提示

ハラスメント防止にも取り組む。闘争方針は、労働施策総合推進法の改正で2026年10月1日から企業等のカスタマーハラスメント(カスハラ)対策措置が義務化されたことをうけ、① カスタマーハラスメントに関する住民の理解を深めるため、カスタマーハラスメントを防止するための条例を制定し、住民に広く周知すること(条例が難しい場合は、基本方針を策定し、住民に広く周知すること) ② 措置義務の内容を盛り込んだ基本方針・マニュアルを策定し、職員、とくに管理監督者等に周知のための研修を行うこと ③ 職員からのカスタマーハラスメントに関する相談に応じ、適切に対応するために必要な人的体制の整備をはかること――の3点を求めていくとしている。

裁量労働制は労働者保護の視点で取り組む

公正労働実現のための取り組みでは、高市早苗首相が表明した時間外労働の上限規制の柔軟化や裁量労働の拡大など労働時間規制の緩和について言及した。方針では、「地方公務員の裁量労働制の導入に肯定的な発言をしている知事も一部いることから、導入にむけた動きへの警戒が必要」だと警戒感を表明。そのうえで、「労働者の健康確保の観点から、時間外・休日労働の上限時間の引き上げは許されるものでないことから、日本成長戦略会議や労働政策審議会労働条件分科会で議論状況を注視し、労働者保護の視点に立ったものとなるよう、連合に結集し取り組む。また賃金のデジタル払いについては導入させない立場で取り組む」と記載した。

国家公務員の兼業制度の見直しを受け対応指針を示す

地方公務員の兼業のあり方に関する見直しが行われ、2025年6月に総務省が地方公務員の兼業の許可に関する留意事項などを通知したことを受け、闘争方針は、交渉における兼業基準の見直しに対する取り組みについても盛り込んでいる。

兼業に対する取り組みは「許可基準を見直す自治体単組」、「国家公務員と同様の許可基準がある自治体単組」、「許可基準のない自治体単組」などバラツキがあることから、自治労はそれぞれの状況に応じた「兼業に関する当局対応等のポイント」を作成し、傘下の単組に通知している。

闘争方針は、「兼業に関する当局対応等のポイント」を参考に、見直しの必要性や方向性、許可基準や手続きなどについて労使協議することとあわせて、人員不足が常態化していることをふまえた職場環境の改善も協議することを提示。また、自治体当局から提案があった場合には、提案内容や単組における交渉状況を集約することや提案内容が周辺自治体にも影響する可能性がある場合にはブロックなどで情報共有することを明示した。

地方自治の確立と質の高い公共サービスの推進における公契約条例制定・入札改革の取り組みについては、公共サービスにおける価格転嫁について言及した。闘争方針は「政府の地方財政計画において物価高・官公需の価格転嫁への対応として委託料などが増額されたことを踏まえ、県本部・自治体単組は、委託・指定管理者職場で働く労働者の適切な賃金・労働条件を確保するため、適切な人件費積算や公正労働条件条項を含めた入札改革等を自治体に求める」としている。

公共サービス分野にも影響が出始めている中東情勢

中東情勢が公共サービス分野に与える影響について闘争方針は、「バス・ごみ収集車等に使用する軽油やごみ焼却施設に必要な重油などの燃料確保のほか、医療関連物資の調達不安など、公共サービス分野においても影響が出始めている」ことを指摘。そのため、公営・地域公共交通の存続・確立の取り組みで、「中東情勢の緊迫化に伴う原油価格高騰により、日本国内の燃料価格が上昇傾向にあることから、事業運営に支障をもたらすことのないよう、関係省庁に対策を求める」としている。

医療・保健労働者の労働条件・環境改善にむけた取り組みでは、「医療現場では経営悪化を理由に人勧見送りや一部未実施、給与カット提案を受けている単組があった」ことを説明。「2025年度補正予算等により一定の財源措置は講じられているものの、依然として厳しい状況が続いている。本部及び県本部、単組は、2026年人事院勧告や2026年度診療報酬改定の動向を注視しつつ、医療現場の賃上げに向けた取り組みを引き続き推進する」と明記した。

政治情勢の変化を受け「新たな政治対応方針」の補強を検討

政策実現にむけた政治活動の推進では、これまでの政治情勢や第51回衆議院選挙闘争の結果をふまえ2014年8月の大分大会で決定した「新たな政治対応方針」を補強すべく、検討を進めると明記。自治労では第51回衆議院選挙で中道改革連合を支持してきたが、組織内・政策協力議員9名が議席を獲得できなかった。

石上委員長は、「2014年の大分大会で決定した『新たな政治対応方針』に基づき、地方自治、財政の確立や公共サービスの維持・充実など自治労が掲げる政策の実現、そこで働く全ての労働者の処遇改善へと繋げるため、現場で奮闘する組合の切実な想いや意見を政治の場に訴えていくためには、政治的影響力が不可欠という観点に立ち、取り組みを進めてきた」と振り返ったうえで、当時から政治情勢は大きく変化をしているが、自治労が目指すべき方向性は変わっていないことを強調し、「難しい政治状況ではあるが、改めてこの間の政治情勢をふまえながら、私たちが大きな目標に掲げる共生と連帯に基づく持続可能な社会の実現を目指し、政権交代を展望し、政権を担いうる政治勢力を形成するとの目標を強く意識し、自治労としての政治方針の補強議論を進めたい」との考えを示した。