「『賃上げがあたりまえの社会』に向けて前進」と2026春季生活闘争を中間総括/連合の中央委員会

2026年6月3日 調査部

連合(芳野友子会長)は5月28日、千葉県浦安市で中央委員会を開催し、「2026春季生活闘争中間まとめ」を確認した。直近の回答集計で、定期昇給相当込みの賃上げ率が5.05%と5%台を維持するとともに、5%以上の定昇相当込みの賃上げを獲得した組合の割合が48%となり、この5年間で年々拡大していることなどから、中間まとめは「『賃上げノルム』が形成されつつある」との見方を提示。また、日本社会は「賃金も物価も上がらない『慢性デフレのサイクル』から脱却し、『人への投資』を起点とする好循環が回っていく『賃上げがあたりまえの社会』に向けて前進したと受け止める」と評価した。

定昇相当込みの賃上げ額は1万6,733円

中間まとめは、5月12日に発表した第5回回答集計(5月7日時点)までの状況をふまえてとりまとめた。連合は7月16日に開く第7回中央闘争委員会で最終まとめを確認する。

第5回回答集計をみると、平均賃金方式での定昇相当込みの賃上げ額の加重平均は昨年同期を16円下回る1万6,733円で、率は同0.27ポイント減の5.05%となり、3年連続で5%台にのせた。

ベアなどの「賃上げ分」が明確にわかる組合で集計した「賃上げ分」の加重平均をみると、額は昨年同期を308円下回る1万1,629円、率は同0.24ポイント減の3.51%。これを300人未満の組合についてみると、額は昨年同期比268円増の1万37円、率は0.04ポイント減の3.57%となっており、額では昨年同期を上回り、率では全体平均を上回り、規模間格差はやや縮小した。

賃上げ額の分布がこの3年は1万円に集中

平均賃金方式の定昇相当込みの賃上げ額の分布を過去3年間でみると、規模計でみても、300人未満でみても、1万円に集中している傾向がみられた。また、回答額の分散の縮小傾向も、規模計と300人未満の両方でみられるとしている。

さらに定昇相当込みの賃上げで5%以上を獲得した組合の割合をみると、第5回集計では約48%と半数近くに迫り、その割合は「2022年以降、着実に増加している」。

有期・短時間・契約等労働者の時給の引き上げ額は76.32円

一方、有期・短時間・契約等労働者の賃上げ額(加重平均)をみると、時給では昨年同期を7.84円上回る76.32円(6.26%)となった。平均時給は加重平均で1,294.66円となっている。

賃上げのすそ野は着実に広がっている

中間まとめは、こうした回答結果に対する全体的な受け止めについて、「全体では、3年連続で定昇込み5%台の賃上げが実現し、定昇除く賃上げ分は過年度物価上昇率(2.6%)を1%弱上回っている。中東情勢による不透明な状況への危機感をもちつつも、労使が、賃金、経済、物価を安定した巡航軌道に乗せ『賃上げがあたりまえの社会』を実現する正念場であるとの共通認識のもと、組合員の生活の安心・安定と企業の持続的成長、日本全体の生産性向上につながる『人への投資』の重要性について、粘り強く真摯に交渉した結果である」と総括した。

また、「3年連続で5%以上の賃上げ目安を掲げ、本年度は結果にこだわることで、5%以上の獲得組合数の割合は、2022年1%→2023年10%→2024年36%→2025年43%→2026年48%と増加し、賃上げのすそ野は着実に広がっている」などと述べたうえで、「『賃上げノルム』が形成されつつある」と言及。

さらに、「この5年間の積み重ねによって、日本社会は、賃金も物価も上がらない『慢性デフレのサイクル』から脱却し、『人への投資』を起点とする好循環が回っていく『賃上げがあたりまえの社会』に向けて前進したと受け止める」とした。

中東情勢については動向を冷静に見極めて交渉した労使が多かった

あいさつした芳野会長はこうした全体の賃上げ回答結果について、「春季生活闘争の基本方針に掲げた『5%以上の賃上げ』という目標を現時点では達成している。『人への投資』を起点とする好循環が回っていく『賃上げがあたりまえの社会』に向けて、着実に前進していると受け止めている」とコメント。なお、中東情勢の影響については、「交渉期間中に中東情勢が激変し、日本経済や国民生活への影響が懸念される状況だったが、危機感を持ちながらも今後の動向を冷静に見極め、交渉を進めた労使が多かった」と話した。

企業規模間の賃上げ格差拡大に歯止めがかかる兆し

格差是正の取り組みについては、中間まとめは「中堅(999~300人規模)・中小組合(299人以下規模)の健闘により、企業規模間の賃上げ格差拡大に歯止めがかかる兆しがある」と指摘。中小の定昇相当を除く「賃上げ分」が2024年と2025年では全体に比べ0.6ポイント低かったが、2026年は「0.2ポイント差で踏みとどまっている」とともに、中小の「賃上げ分」が3.57%で中堅の「賃上げ分」が3.68%と全体の3.51%を上回っていることから、「昨年を上回る積極的な賃上げを要求として掲げ、粘り強い交渉を展開した結果と受け止める」と評価した。

有期・短時間・契約等労働者の時給引き上げについては、「フルタイム組合員の平均賃金方式の賃上げ率5.05%を上回り、連合が時給の集計を開始した2000年代中盤以降の最終集計結果と比べ、最大の引き上げ額となった。また、基本給など賃金決定ルールの整備や一時金支給など同一労働同一賃金の実現に関する取り組みや、企業内最低賃金引き上げなど有期・短時間・契約等労働者の処遇改善の取り組みも前進している」などと評価した。

将来への希望と安心感を持てる段階には至らず

一方、課題について中間まとめは、「未来づくり春闘」の取り組みを5年間積み重ねてきたものの、「多くの人が生活向上を実感し、将来への希望と安心感を持てる段階には至っていない」と指摘。「未来づくり春闘」を継続しながら、「日本全体の実質賃金の持続的な上昇、賃上げのすそ野の拡大と格差是正に一層のこだわりを持って、『賃上げノルム』の確立・浸透に取り組む必要がある」とした。

このほか、中間まとめは、「賃金、物価が上昇する時代の転換点を迎えていることを踏まえ、労働組合として自らの賃金実態の把握と分析が一層重要になっている」と言及し、消費者物価も直近4年間で約12%上昇していることから、「労働組合は、賃上げが組合員の生活向上に結びついているか、社会的水準との差は縮小しているか、中期の時間軸でも検証する必要がある」などと提起した。

裁量労働制の見直しにあらためて反対の意思を表明

芳野会長は、あいさつのなかで、春季生活闘争以外では労働法制、政治、ジェンダー平等・多様性推進などについても触れた。

労働法制については、芳野会長は、経団連が裁量労働制の拡充を求める提言を発表したことに触れたうえで、「使用者側は、ともすると『自由で柔軟な働き方』という甘美な表現を用いて、労働者を誘惑しようとしているが、これは『働き方』ではなく『働かせ方』だ。使用者にとって、自由で柔軟に労働者を働かせたい、最低基準を定めた労働基準法の呪縛から解放され、会社にとって都合の良いように働かせたい、という願望を表現したものと理解するのが自然だ」などと批判した。

政治については、最近、連合が組合員を対象に行った「第10回政治アンケート」の結果から、「選挙における労働組合からの働きかけが年々、減少していることも明らかとなり、実際の投票行動を左右する力が小さくなってきているように見える」と述べるとともに、「デジタルツールによる選挙が本格的に展開されているものの、その対策が打てずに、特に若い組合員に対する訴求力が乏しいと言わざるを得ない」と指摘。

「労働組合としての強みは、何と言っても組合員どうしのネットワーク力であることは間違いないので、改めてその力を最大化するための取り組みに注力することに加えて、後手に回っているデジタル戦略にリソースを割き、理解・共感・参加のすそ野を広げる取り組みを進めていきたい」と話した。

「男性が大勢を占める景色が変わらない」と芳野会長

ジェンダー平等・多様性推進については、連合内の取り組みの進捗についても言及した。芳野会長は「1991年に『第一次女性参加推進計画』を策定した後、手を変え品を変え様々な取り組み計画を立ててきたが、男性が大勢を占める景色は大きく変わっていない」とし、「これほど長い年月を費やしてきたにも関わらず、未だに結果を出せていないということは、数ある連合の他の施策と比べて、ジェンダー平等の取り組みについては、相対的に価値が低いと位置づけられてきたとしか思えない」と指摘。

「このままでは、半世紀取り組んでも結果が出ない、ということになる。連合の綱領にある『力と政策』の『力』とは、特定の性の人たちだけが中心となるものではない。ジェンダー平等によって集まる声こそが真の力なのではないか。各組織の本気の取り組みを期待している」と呼びかけた。